メニュートレンド:常識破りの白に歓喜 見た目だけじゃない上品な味に感動
カウンター5席、テーブル18席のアットホームな雰囲気の店内。写真では確認しづらいが、店内のいたるところにアニメキャラクターのフィギュアが。ちなみに「デリツィオーゾ0141」の店名は“おいしい”をイタリア語と数字の語呂合わせを組み合わせた遊び心あるネーミング。下町の洋食店らしい親しみやすさもファンに支持される理由だ
洋食メニューのド定番でありながら、近年の映えブームにも適応してさまざまに進化を続ける「オムライス」。とはいえ“卵=黄色”の常識が崩されるのは想像のはるか上をいく衝撃力だ。今回は“黄色”ではなく「白いオムライス」を提案して大ヒットを飛ばしている東京・上野の洋食バル「デリツィオーゾ0141」を取材した。
●コストをかけて価値で集客
降り積もった初雪のようなしっとりとした白さが印象的なオムライスとチーズソース。黒塗りの皿とのコントラストが斬新で、シンプルを極めた美しさに見入ってしまう。真ん中にナイフを入れると中に忍ばせてある黄色い卵黄がトロリと現れる演出も秀逸で、客は必ずSNS投稿をする。
これを見て「卵白で作ったオムレツ」と勘違いする客もいるが、そうではない。実は“黄身が白い卵”を使って作っているのだ。「徳島でコメを与えて育てた親鶏が産む『たむらのタマゴ [地米]』を使っています」とオーナーシェフの太田雅也さん。黄身の色は親鶏に与える飼料によって色付くそうで、同卵はトウモロコシなど黄色の素となるエサを除くなど研究を重ねて誕生したそうだ。もちろん化学的な加工は一切なく、栄養価は黄色い黄身より優秀。一般的な鶏卵に比べると5倍超の高コストとなるが、それだけの価値を作り出しているといえよう。
一口食べると見た目にたがわぬ上品な味わい。白いオムレツは軽やかで優しく、カマンベールチーズ・ベースの白いチーズソースと共に食べるとリッチ感が一層高まる。詰められた海鮮ピラフもスパイスに頼らぬ質実重視の味で滋味深い。他方、若者客にはいささか薄味かと思われるところをニンニク醤油のパンチがある和風ダレの味変で補完している。
同品を開発したのは“SNS映え”なる言葉もなかった10年以上前というから驚きだ。「白い卵を知り、これで白いオムライスを作ったらお客さまに喜ばれるだろう」と太田シェフはきっかけを語る。当時は夜のみ営業するワインバーだったが深夜に行列ができるほどの大ヒットとなったという。2019年に独立し、ランチタイムでも食べられるようになったことでファミリー層や年輩客にもファンが拡大。近年はインバウンド客が増えて、来店客の3割を占める勢いだ。
●店舗情報
「デリツィオーゾ0141」
所在地=東京都台東区上野3-7-5 中戸川ビル1階/開業=2019年3月/坪数・席数=15坪・23席/営業時間=11時30分~15時、17時~22時。日曜休/平均客単価=昼2500円、夜3500円
●愛用食材・資材
「ハインツ トマトケチャップ」 輸入元=ハインツ日本(東京都台東区)
調味料として使い勝手がよい
本文では触れなかったが“黄色い”「オムライス」(1600円・税込み)も用意。チキンライスを詰めて濃厚なデミグラスソースをかけており、見た目も味も好対照だ。このチキンライスに愛用しているトマトケチャップが同品。主張しすぎないバランスの取れた味が、調味料として使いやすいという。
規格=1070g
【写真説明】
白いオムライス 2,100円(税込み)
常識破りの見た目だけじゃない上品な味に感動
※ランチタイムはスープ、サラダ、ドリンクのセットで2,500円
オムレツには卵3個分の卵液を使用。海鮮ピラフもバイオーダーで作りはじめる。エビ、イカ、ホタテはプリっとした食感で、自家製グレービーソースで炒めた飯も粒立ちのよい食感だ。チーズソースはカマンベールチーズを白ワインなどでのばしたもので、かすかな酸味が後味をサッパリさせる