アポなし!新業態チェック(203)「Aline cafe et sucreries」ぷらりと京王府中店

2024.07.01 545号 11面

 ●銀座ルノアール、新たなブランド発表 ビジネス街を離れ、カフェとして家庭的なイメージを打ち出す

 「喫茶室ルノアール」などを運営する銀座ルノアールは、東京・府中にある京王線駅ビルの1階にカフェの新ブランド「Aline cafe et sucreries(アリーカフェエ シュクルリ)」を出店した。

 ブランドの名称である「アリーヌ」とは、同社が長年モチーフとしてきたフランスの画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの妻の名に由来するという。ビジネス街を中心に展開してきたメインブランド「ルノアール」に対して“寄り添う”ような“家庭的”な雰囲気を打ち出した新業態という位置付けだ。

 同店のフードメニューは、主に南仏の家庭料理をアレンジしたもの。カフェの定番であるスイーツの看板メニューとして、仏・リムーザン地方の伝統菓子であるクラフティを用意した。「赤い果実のクラフティ」「アプリコットとピスタチオのクラフティ」「バナナのチョコクラフティ」など6種類(各850円)に加えて、季節のフルーツを使用した「季節のクラフティ」(1000円)もある。

 食事メニューのメインは、「バジル香るサバとトマトのグラタン」「きのことベーコンのクリームグラタン~温たまのせ~」など4種類(各950円)のグラタン。ほかにも、ビーフシチューやサンドイッチ、サラダ、ケーキなどがあり、フードメニューは皆、ドリンクなどを添えたセットメニューにすることもできる。ドリンク類にはフローズンヨーグルトなども導入された。

 新たなコンセプトを掲げ、新たな立地と客層に挑戦する同社の試みだ。(価格は税込み)

 ★けんじの評価 女性客にアピールし狙い通りの展開か

 1980年代半ばごろまでの日本では、喫茶店はどこにでもあるありふれた存在であり、全国のどんな小さな駅であっても、日本中の駅前には少なくとも1軒や2軒は必ず存在していた。喫茶店とは、決して大きくもうかる商売ではないと考えられていたが、多額の資金がなくても開業が可能な飲食店だった。

 その後、バブル景気の中で地価や家賃が高騰し、売上高の低さを粗利率で補っていた個人経営の喫茶店は、その多くが消え去ってしまった。バブル崩壊後には、経済成長の波に乗って規模を拡大していただけの喫茶店チェーンも、そのほとんどが淘汰される。そうした時代の荒波を乗り越え、現在も残っている喫茶店チェーンは数えるほどしかない。

 銀座ルノアールの創業は64年。90年代には、不動産バブルに便乗せず堅実な経営を続けた外食企業として、業界の評価も高かったと記憶している。

 今回、同社はこのブランドを出店するにあたって、2ヵ月ほど前に「新ブランド開始に関するお知らせ」という公式リリースを発表している。取締役会において、新たなブランドの開始を決議したという告知だが、それほど今回の方針決定を重要なものと考えていたのだろう。

 この1号店がブランドとして完成されたものだとはいえないかもしれない。しかし、実際に同店は郊外の私鉄駅ビルで女性客を集めることに成功し、新たな方向性を示した。同社が自覚的に挑戦したこの新ブランドが、これからどのように進化するのか興味深く見守りたいと思う。

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「Aline cafe et sucreries」ぷらりと京王府中店

 開業=2024年4月25日/所在地=東京都府中市府中町1-2-1 ぷらりと京王府中西1階

 ●編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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