メニュートレンド:昭和、平成、令和と60年続く看板メニュー
「看板メニュー」になるには、店一番の人気メニューであること、このメニュー目当ての来店客がいること、そして長く愛されているロングセラーであること…などが求められる。そのすべてを満たし、昭和40年の開店以来60年間、店の看板メニューとしての座を守ってきたのが「キッチン友」の「スペシャル友風焼き」だ。
●玉ネギの下に野菜が“かくれんぼ”
「キッチン友」の大友良祐店主は中学卒業後、16歳でパン屋に就職したが、わずか半年で店が閉店。その後、神田駿河台にある洋食店で修業を積み、腕を磨いた。
「『スペシャル友風焼き』は、その店のメニューをベースにして、自分の味に仕上げました」と大友店主。
「スペシャル友風焼き」は、今どきの“映え”を狙ったメニューに比べると、ご覧の通り見た目がやや地味。また基本的には豚肉と玉ネギを炒めたものと、至ってシンプルだが、メニューとしての実力は確かだ。そうでなければ60年間、看板メニューの座にあるはずがない。
実力の一つは「また食べたい」と思う味。「また食べたくなる“薬”が入ってるんですよ、ってお客さんには冗談を言ってるんです」と笑って話すのは、店主の奥さんの眞子(ちかこ)さん。
「また食べたくなる」理由は、店主の丁寧な仕事にある。同店では、作り置きをせずに、オーダーを受けてから下準備をして調理にかかる。「スペシャル友風焼き」に使用する大量の玉ネギも皮は剥いておくが、切るのは注文を受けてから。「切っておくと味が落ちるので」と繊細な味の違いにこだわる。
醤油、白ワイン、ブラックペッパーなど使用する調味料もシンプルだが、長年鍛錬した絶妙なバランスで、「また食べたくなる」味を作り出す。同メニューの評判はSNSで世界に拡散し、韓国、台湾、ベトナムから、最遠ではブラジルからの来店があり、「また食べたくなって」再来店する人も。本物の味は、世界にも通用することを証明している。
●店舗情報
「キッチン友」
所在地=横浜市神奈川区六角橋1-7-21/開業=1965年/坪数・席数=5坪・21席/営業時間=12時~14時30分、17時30分~20時。水・木曜休/平均客単価=1200~1300円/1日平均集客数=30~50人
●愛用食材・資材
「ヤマサしょうゆ」 ヤマサ醤油(千葉県銚子市)
欠かせない調味料の一つ
じっくり時間をかけ、丹精込めて造り上げた本醸造。芳ばしさ、明るくさえた色、コクのある味と三拍子揃った代表的な濃口醤油。「『スペシャル友風焼き』の味のベースにもなっていて、うちのメニューには欠かせない調味料ですね」と大友店主。
規格=1.8L