メニュートレンド:固定観念からの脱却料理! 別ベクトルで光る魅力
「すっぽん焼売(1個)」さばいたすっぽんの肉と豚ひき肉を合わせた珍しいシュウマイ。すっぽんのだしが染みていて、一般のすっぽんとは違う味わい/「鮪のあて巻き」マグロ赤身の刺身、シソの葉、自家製のガリ、万能ネギをのせ、芯に酢飯。日販は10食/「冷製ニラレバ」九州直送の鶏レバーを低温調理し、ニラのおひたし、卵黄を組み合わせたあっさりとした一品。日販は10食
長く愛されている定番料理には大きな魅力があるものだが、その完成形にとらわれず、発想を転換してまた違った魅力をつくり出すことも可能。「飯酒トモエ」で人気を呼ぶメニューは固定観念を超え、元となる料理をさらに進化させたことで“酒好き”に強烈に響く秀逸な料理に仕上がっている。
オトナが集う居酒屋「飯酒トモエ」のメニューは秀逸だ。同店の地曳翔太料理長は京都、銀座それぞれのミシュラン星獲得店出身。「どこでも同じ定番料理を出すのでは意味がない。先達のまねごとだけでなく、自分ならではの発想を居酒屋メニューに落とし込むことにこだわっている」と、酒飲みが「ほぅ」とうなる料理を提供している。
看板料理の「冷製ニラレバ」は、おなじみの“ニラレバ”を想像すると、意表を突くはずだ。京懐石風にだしを利かせたニラのおひたしに低温調理の鶏レバー、卵黄を組み合わせ、まったく異なる粋な一品に仕上げているのが面白い。中華料理のニラレバがあれほど愛されている通り「ニラ+レバー」の組み合わせは鉄板コンビ。ニラのシャキシャキ感と風味に、軟らかい鶏レバーのコクはあっさりとした調味でも当然、好相性だ。
「鮪のあて巻き」も新しい発想が加わった人気メニューだ。一見すると鉄火巻きだが、よく見ると役者の使い方が真逆。酢飯を芯にしてマグロで巻いている。細巻きはツマミにも優秀というのは多くの酒飲みが実感している事実だが「お酒飲みの感覚では、アテには海苔巻きのシャリが少し重い、と考えた。刺身や中落ちなどを海苔で巻いている居酒屋もよく見かけるが、シャリが少しあった方が口の中で味が調和する」と、地曳料理長。酒のツマミに注文し、さらには締めとして再注文するお客も多いという。
完成形でこれ以上は改良の余地がない、と思われる人気の定番料理も、発想を転換させるとまた違った輝きを放つ。元の料理が親しまれているからこその、楽しい驚きも演出できるというわけだ。
●店舗情報
「飯酒トモエ」
所在地=横浜市港北区日吉本町1-2-17 地下1階/開業=2024年1月/坪数・席数=16坪・23席/営業時間=17時~24時。不定休/平均客単価=7000~8000円/1日平均集客数=23人
●愛用食材・資材
「ヤマサ 本醸造」 ヤマサ醤油(千葉県銚子市)
しっかりとしただしに
伝統的な本醸造で造り上げた最も標準的な濃口醤油。同店では「レバニラ」「鮪のあて巻き」の割り醤油に使用している。「シンプルで素直な味で風味もよく、調味がしやすい。しっかりとしただしを合わせるときには、バランスよく味がキマる」と地曳料理長は言う。
規格=1.8L(常温)