パスタ外食trend:流行予兆 ラーメン的“スープスパ”の魅力
昨年頃から人気が急上昇しているのが「スープスパゲティ」だ。それも、従来のスープスパゲティを超えて、おぼれるほどのたっぷりスープにパスタを沈ませた“汁だく”タイプが注目されている。本場のイタリアではスープスパはあまり見かけないようだが、熱々のスープですするように食べるスープスパの魅力はまた格別だ。パスタの新潮流として拡大しそうなスープスパの可能性を探った。
●ラーメンとパスタの中間 庶民的な迫力スープスパ
千葉県・松戸で行列をつくる「スパゲッティ食堂ズッパ」のスープスパゲティはラーメン的な迫力があり、ヤミツキ度が高い。2024年6月にオープンした同店はラーメン店の居抜きで出店。同店を運営するBig Bellyの大林芳彰代表取締役によると、「この物件の話が進んだ際、付近に主婦や女性客向けの業態が少ないこともあり、そうした層が気軽に利用できる、ラーメン店に近いがラーメンではない業態をイメージした」と言う。業態開発を進める中で、もう一人の共同出資者が三十数年前にイタリアンのシェフをしていた当時のレシピメモを提供。このレシピが同店の看板メニュー「トマトズッパ」の原型であり、「“汁だく”タイプのスープパスタというのが、自分が描いていたイメージに合致した。10~15坪程度のラーメン店の居抜きで展開でき、店舗拡大が望める。小箱タイプの店舗なら、熱々スープでの提供もしやすい」と、大林代表取締役は見込んだ。
完熟トマトのスープに数種のハーブを利かせたスープをなみなみと入れたスープパスタ「トマトズッパ」を原点に、同店では現在約15種類のスープパスタを展開。スープは契約農家から端材も含めて仕入れた野菜を店で煮込み、これをベースにトマト、クリーム、オイル、スパイスカレーなどの自家製ソースと合わせている。同店の各種スープパスタについて「器になみなみとスープを満たした、ラーメンとパスタの中間ぐらいにある庶民的な熱々の“飲めるスープパスタ”です」と、大林代表取締役。あふれんばかりの熱々スープに豪快に浸された同店のスパゲティは確かに、一度ハマッたら週に何度かは通い詰めたくなる中毒性があり、そうした点もまたラーメン的だ。また、残りのスープに無料の追い飯を合わせる提案もしており、スープ、スープパスタ、リゾットの3つが楽しめるのもうれしい。
◎店舗概要
「スパゲッティ食堂 ズッパ」
経営=Big Belly
店舗所在地=千葉県松戸市本町25-5
1日平均集客数=90~100人
●長く愛される 男性客6割の「満腹パスタ」
前出の「スパゲッティ食堂ズッパ」がラーメン店の居抜き店舗なのに対し、東京・住吉の「スプスパ」は日本そば店の居抜きで10年以上前に出店。元矢学オーナーシェフによると、「内装を見たときに、お箸で食べる麺類をイメージした。まだどこもやっていない業態を立ち上げたかった」と、スープスパゲティ専門店を開業した。
同店のスープスパは現在ブームになりつつある“汁だく”タイプではなく、昔ながらの“適量スープ”スタイルだが、イタリアンにこだわらない独自の味を貫いている。自家製のガーリック油を使用し、元矢シェフが丁寧に仕込んだフォンをベースに、カルボナーラやペスカトーレといった定番パスタをスープにアレンジ。醤油と赤ワインで調味した和風スープや冷麺風なども展開しており、スープスパの枠にとどまらず独創的だ。
スパゲティは200g(ゆで上がり分量)と多めで、小ライスのサービスもある。男性でも満腹になるそのボリューム感から来店客の男女比は6対4。「最近は外国人観光客の方も多く、皆さん、ラーメンに近い感覚で楽しんでいるのかもしれませんね」(元矢オーナーシェフ)と、こちらもやはりラーメン的な魅力が大きい。
◎店舗概要
「スプスパ」
所在地=東京都江東区石島14-7 今泉ビル1階
●チェーン店も着目!
〇「スパゲッティーのパンチョ」
“鍋系”アレンジの汁だくスパ
30~50代男性を中心に人気が高いがっつりナポリタン専門店「スパゲッティーのパンチョ」でも、スープまで飲み干したくなる“汁だくスパ”に着目。もつ鍋系スープスパ風の「ホルモン塩スパ」を5月31日までの期間限定で販売している。同品はニンニクたっぷりの塩もつ鍋の締めでちゃんぽん麺を合わせるイメージで仕立てた、“鍋系スープスパゲティ”だ。スープスパの拡大に“鍋系”のキーワードが加わると、さらにアレンジも拡大しそうだ。
〇「東京たらこスパゲティ」
「東京たらこスパゲティ」に見る 和風スープスパ提案 東京たらこスパゲティ
2020年1月に1号店の渋谷店をオープンし、女性を中心に人気が高い進化系たらこスパゲティ専門店「東京たらこスパゲティ」の看板メニューは、タピオカ粉を使用したもちもち食感の生パスタにだしをかけて食べる新しいたらこスパゲティだ。また、土鍋でアツアツに煮込んだ豆乳クリームと平麺パスタを合わせた「白味噌と豆乳の明太クリーム」も、スープスパの新しい可能性を感じさせる。