海外通信 外食ビジネスの新発想(89)パリのヴィーガン和食店
●フランス流家庭精進料理
パリにヴィーガンの和食屋「もりカフェ」がある。ここへ来れば、肉や魚、乳製品を一切使わない日本の家庭料理が食べられる。
オーナーはジュリア・ブカシャールさん。東京とフランスを行き来して育った。ベジタリアンから後にヴィーガンになったジュリアさんは、外食の選択肢が狭まったことから、独学で料理を学び、ケータリング・ビジネスを始め、やがて固定店の「もりカフェ」をオープン。ヴィーガンの和食を提供している。
同店のメニューには、唐揚げ弁当、照り焼き丼、担々麺、味噌ラーメンなど、おなじみの料理が並ぶ。
現在は、大豆でできたヴィーガン肉などの植物ベースの食材が出回っているため、ヴィーガンの選択肢もずいぶん幅広くなった。照り焼き丼の上にのったそぼろも、植物由来のヴィーガン・ミート(ビヨンド・ミート)だ。
取材時の季節の一品は、ちらし寿司。ヴィーガン・サーモン、ヴィーガン・イクラ、千枚漬け、アボカド、赤玉ネギのピクルスなどをポン酢で締めている。植物由来の食材のみを使った、なんとも華やかで彩りのよいちらし寿司だ。食べるのがもったいなくなるほど美しい。
人気の担々麺は、味噌、タヒニ(中東料理に使われるごまの濃厚なペースト)、昆布、ショウガ、ニンニク、オートミルクで作ったスープが自慢。トッピングには、植物由来のヴィーガン・ミートを使っている。担々麺には、グルテンフリーのオプションもある。この場合、3ユーロ増しで、コンニャク麺とタヒニの代わりに豆乳を使った担々麺を食べることができる。
同店は、ヘルシーなヴィーガン和食を食べることができる貴重な食事処だ。カフェと名がつくぐらいだから、黒ごまフラン、抹茶アイスクリーム、きな粉だんごなどのスイーツも充実している。
ジュリアさんは「ジャポン・ヴィーガン」という本の著者でもある。コロッケ、肉ジャガ、ハンバーグ、オムライスなどの日本の家庭料理の定番から、同店で人気のデザートやサイドメニューまで、肉・魚・卵・乳製品を一切使わずに作れる70のレシピが載っている。卵サンドの中身は、マヨネーズも卵も使わずに、絹ごし豆腐、レモンの搾り汁、昆布だし、米酢、キャノーラ油などを使って作る卵サラダ。ヴィーガンであることは、クリエーティブであることが必須だ。
(外海君子)
●店舗情報
店名=もりカフェ(Mori Cafe)
所在地=2 rue des Taillandiers, 75011 Paris France