台湾で親しまれている「豆花（トウファ）」。日本でも以前から人気が高いが、近年は専門店が誕生したり、メニューに導入するカフェが急増している

美腸活カフェとして話題を呼んでいる東京・南青山「L for You」の人気メニュー「ゴボウとキノコの豆乳腸活スープ」（1,760円・税込み）。豆乳スープに、グリーンサラダ・玄米ご飯・デリ2品（日替わり）のプレートと、米粉を使用したバナナパウンドケーキ付き／外食レストラン新聞25年7月号より

「豆腐を“米や麺のような主食”として楽しむ」をテーマにした新スタイルの定食業態「豆富食堂」では職人の“できたて豆腐”を主軸にした定食メニューを展開している。写真は「豆富食堂 目黒店」の「豆腐御膳」（1,540円・税込み）。豆腐や野菜など9種類の具材がはいった豆腐汁に、厚揚げ、豆腐のぬか漬け、おぼろ豆腐など豆腐尽くしの御膳

豆腐店の概念を覆す、兵庫・神戸市「YACCO豆富店」はクラフト豆富を提案。写真は同店の「豆富8種盛り合わせ」（1,100円・税込み）。写真前列右から時計回りに、ハーブ・山芋・とうもろこし・すだち豆富、おからひじき、湯葉・柚子豆富、中央は青大豆豆富、同奥はあおさ豆富味噌汁。※内容は季節により変更あり／外食レストラン新聞24年11月号より

東京・吉祥寺「トトト&豆乳専門店」の人気メニュー「チーズクリーム豆乳+団子三兄弟」（770円・税込み）

ゴンチャでは11月から「豆花」を使った新作スイーツを期間限定で販売。（左）ブラックミルクティーに豆花と人気のトッピング、パールを合わせた「台湾豆花パールミルクティー」（650円）。（右）「豆花」（90円・各税込み）

　かつては主に牛乳アレルギーのある人に向けた代替として、豆乳は浸透していった。しかし現代では、代替を超えて一つのドリンクカテゴリーとして豆乳は位置づけられている。女性の間では牛乳を飲まなくなったが豆乳は飲むという人も目立つ。一方では「豆腐は好きだが豆乳はにおいが苦手」という声も少なくない。そうした弱点を軽減させた豆乳の商品も増えつつある。また最近は豆乳専門店が拡大している。以前から豆腐料理専門店は存在していたが、「大豆」「豆腐」ではなく、「豆乳」を中心に据えている点が新しい。

　●都内を中心に専門店が続々誕生

　東京の吉祥寺の「豆漿日和（どうじゃんびより）」では、オリジナルの自家製豆乳を使った豆花（トウファ）や豆乳を使用したスイーツ類が楽しめる。台湾で有名な「二吉軒豆乳」の創業者・鄭自成氏に監修を依頼し、二吉軒豆乳の味や技術を継承した商品を提供している。濃厚なのににおいが感じられない後味のさっぱりとした点がウリのひとつとなっているようだ。

　同じく吉祥寺の「トトト&豆乳専門店」では、大豆の種類別に作られた豆乳の飲み比べセットを提案。さまざまなフレーバーの豆乳ドリンクや、豆乳を使ったスイーツ類も充実していて、串団子を上にのせたドリンクはSNSでも話題だ。

　都内と名古屋に店舗をもつ「豆乳専科」では、台湾式朝食を中心に、スイーツ類、ランチに加えてアルコールとつまみのセットなどディナータイムにも対応しており、豆乳メニューを中心に幅広く台湾料理を展開している。

　東京・大崎広小路にある「東京豆漿生活」も台湾式朝食のシェントゥジャンが充実している。台湾式おにぎりや台湾式パンのセットが充実していて、連日整理券が配られる盛況ぶりだ。

　●台湾スイーツは毎年トレンドに

　どの店も台湾料理の人気が背景にあるようだ。古くは豆花の大ブームに始まり、台湾スイーツは毎年トレンドメニューが生まれ、若い女性を中心にSNSでも頻繁に話題になっている。同じアジアとしての親和性に加えて、脂肪分の少ないスイーツも多いため、ヘルシーなイメージもある。日本人に馴染みのある大豆や小豆など豆を合わせたメニューも多く、安心感があるのだろう。

　●外食メニューとして発信力ある豆乳

　豆乳を普段から飲む人が一定数増えたことは、専門店を作っても勝算があると思われた要因の一つと考えられる。牛乳の代替としての価値や植物由来のヘルシーなイメージのほか、高たんぱく質食品ブームの影響もあるだろう。

　動物性食品を避けるインバウンド需要もある。さらに、あまり知られていないが、豆乳は牛乳に比べて保存性が高く、酢との相性も良いなどの利点もあるのだ。専門店に留まらず、メーカーからも濃厚だがにおいの少ないプレミアムタイプの豆乳飲料が発売されており、豆乳は今や新たなフェーズに入ったといえるかもしれない。

　市民権を得たとはいえ、豆乳を使った料理やスイーツを家庭で手作りしている人はまだ少ない。牛乳で作れる料理はほぼ豆乳でも代替可能なのだが、あまり使用勝手が良くないと思われている。そういった点においても、外食としての専門店は価値をもっているともいえそうだ。

　日本の食文化のひとつだった地味な色の豆乳だが、さまざまなフレーバーを取り入れて映えるものに変わったことで、発信力がある商材になりつつあるようだ。

　（食の総合コンサルタント　トータルフード代表取締役　メニュー開発・大学兼任講師　小倉朋子）