関西版・ニーズ先取り繁盛店探訪:本家さぬきや 普段着の和食極める

2003.05.05 268号 22面

本家さぬきや(大阪府泉大津市、電話0725・44・1170)は創業二三年、手造りうどん「本家さぬきや」の展開を基盤に徐々に事業拡大、今後は「寿司職人のいる寿司居酒屋」「低価格帯うどん店」「スーパー銭湯のフードコートへの展開」の三業態に注力し、和食領域の中で独自の新規業態開発を積極的に進め、二〇〇四年度末時点で四〇店舗体制、売上高五〇億円規模を目指している。

一方食材では黒米を使用した「薬膳シャリ」や北海道産無漂白小麦粉を使用した「玄(くろ)うどん」など“健康・ヘルシー”にこだわる。またできる限り低価格で提供するという企業理念の下で、バリューのある新しい料理に常に挑戦している。客に「本家さぬきやにもう一度行きたい」(平野譲社長)といってもらえる店舗展開を行う。現在直営店二六店舗(ほかFC店三・姉妹店四店舗)。年内に一〇店舗、来年度六~七店舗(予定)の出店を目指す。

「銀の雫」は居抜き物件に出店した。出店コストを低く抑えることは損益分岐点が低くなることに加え、すべての面でお客様に喜んでいただけることにつながる。また一つの業態が将来どうなるのか分からない中で、リニューアルや新規業態開発など次の手を打つという意味でも、イニシャルコストを抑えることは重要な要素で、徹底的に取り組む。

「今後の店舗展開の軸にしていきたい」(平野社長)ということで4月1日、泉北二号線沿いにオープンした新業態店が寿司居酒屋「銀の雫 泉北店」。“寿司職人の店”と看板を掲げているこの店は店内入り口正面にネタのショーケースを設けたカウンターがあり、常時職人が客の要望に応じてすしを握ってくれる。

ただし、鮮度抜群のネタを使って出てくるすしの価格は一カン六〇円から。タイ一〇〇円、イクラ一五〇円、ウニ二〇〇円、中トロ三〇〇円、車エビおどり四〇〇円とリーズナブルである。安くて、早くて、好きなものが選べるとして人気の回転ずしと変わらない“お手ごろ感”と“安心感”を維持しながら、「職人がカウンター越しに握ってくれる本格的なすしが食べたい」というニーズを満たしている。

また、さまざまなニーズにこたえるために、昼の和定食メニューや夜の一品メニューも充実させている。こちらもリーズナブルに価格設定しており、客単価は昼八〇〇~九〇〇円、夜二〇〇〇円前後と安い。この店の強みは、昼は六八〇~八八〇円の定食が中心ながら、落ち着いて食事(単価一五〇〇~二〇〇〇円)を行う客も多い。

また夜(客単価二〇〇〇円)は「肉うどんと巻寿司セット」七六〇円、「カニ身ちらし寿司と天ぷらうどんセット」八五〇円、「お刺身御膳」一四五〇円などのリーズナブルな「特選御膳」に加え、単品でにぎりずしや揚げたて天ぷら、鍋物や新鮮活魚創作料理をチョイスできる幅広い選択肢があり、時間をかけずに食事を済ませたい客から、酒を飲みながらゆっくり味わいたい客までを満たしているところである。

「きれいな店とおいしさ・安さというアンバランス感がお客様の支持を得る」(平野社長)というように、客の潜在的なニーズを具体化している店舗である。季節限定メニューは一三品、二八〇円から。お昼の特選定食は六八〇円から。日替わり定食七五〇円など。

今までにない店造りに加え、積極的に取り組んでいるのがこだわり食材の「薬膳シャリ」と「玄(くろ)うどん」。薬膳シャリは中国・民の時代の薬学書にも記され、“不老長寿の米”として珍重されている黒米を使用したシャリで、体質改善、健康保持、美容にも理想的な食品である。紫黒色系色素「アントシアン系」を含んだコメで、独特の食感と薄紫色をしている。一度食べた客は必ずリピートするという。

玄うどんは、同社従来品に比べ食物繊維が一・四倍、ミネラル分が約二倍と栄養価が高い。味と香りが豊かで、やわらかいのにコシがある昔懐かしいうどんに仕上げている。

5月に大阪・梅田に出店予定の新業態「低価格帯のうどん店」(屋号は「うどん市場」を予定)は昨今流行している一〇〇円うどんではない。同社の玄うどんをメーンにしたヘルシーで体に優しく、国産小麦を主原料にしたうどん屋である。 またサブメニューのちらしずしにも「薬膳シャリ」に使用している黒米を使用する。メーンのうどんの価格は二〇〇円未満を予定。

「スーパー銭湯」内に既に三店舗展開している「本家さぬきや」は、「今までやってきた業態がピタッとはまった」(同)ということで、従来三〇〇円程度であったスーパー銭湯のフードコートの単価を約一一〇〇円にまで押し上げている。スーパー銭湯がブームなだけに、今後の有力な出店候補地となりそうだ。

◆「銀の雫 泉北店」(堺市豊田一一八六‐一、電話072・295・8127)/メニュー数=四〇〇品/席数=一二三席(カウンター=一一、テーブル=五六、座敷=五六)/夜の売上高構成比=約七割/平均客数=平日二五〇人・土日三五〇人/駐車場=三二台

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