外食史に残したいロングセラー探訪(11)マリオンクレープ 原宿店

2007.10.01 334号 10面

修学旅行はもちろんのこと、現在では海外からのツアーコースにもなっている原宿・竹下通り。ここから発信されたクレープは、発売当時、ファッション誌などでも取り上げられ、赤いチェック柄の紙に巻かれたクレープを食べながら、竹下通りを歩くという流行を生み出し、日本での「食べ歩き文化」を作った。

(株)マリオン/営業本部営業部開発課、中条幹夫氏によると、マリオンクレープのスタートは1976年、東京都渋谷区の公園通りにあった駐車場の一角に出店した、ワゴン型の実験店舗からであるという。

テークアウトを目的としたクレープ販売のヒントは、同社代表取締役社長の岸伊和男氏が学生時代に留学先のフランスの街角で見かけた、新聞紙に包んで売られていたクレープだという。当時、日本でも皿にのせてクレープを提供する店はあったが、こうした紙巻きスタイルはなかったため、一躍話題となった。

その1年後の1977年、本格的な第1号店の竹下通り店がオープンする。

オープン当時のメニューは、フルーツジャムやリキュールなどを使ったとてもシンプルなものばかり。しかし、これに物足りなさを感じた若者客から、「生クリームやアイスクリームを使ったクレープが食べたい」といった要望が多かったため、それらを使ったメニュー開発が始まった。

同社のクレープ生地の特徴は、高温で一気に焼き上げるために水分が少なく、クリスピーな食感が楽しめる。だが、焼きたての温かい生地で包むと、生クリームやアイスクリームがすぐに溶けてしまうという問題点もあった。特に、当時は店舗で生クリームをホイップしていたために、手間がかかる上に溶けやすかったという。そこで、比較的長時間安定した冷凍のホイップクリームが選ばれた。

そして生クリームに合った食材として、イチゴやピーチ、アップルなどの組み合わせが採用された。中でもバナナとチョコ、そして生クリームの組み合わせは食感や風味面からもとても相性がよく、発売後すぐに一番人気となり、クレープ=「バナナチョコ生クリーム」といったイメージが定着した。

原宿店では、常時約70種類のメニューがあるのだが、同メニューの売上げシェアは約10%。一時は売上げシェア20%以上、1日に約600個売れたこともあったという。

同メニューをはじめ、生クリームやアイスクリームを使ったクレープは、ジャパニーズスタイルとして、現在では日本国内にとどまらず、アジア各国でも浸透している。

●店舗データ

「マリオンクレープ原宿店」/経営=(株)マリオン/店舗所在地=東京都渋谷区神宮前1─5─16ジュネスビル1~2F/開業=1977年8月/営業時間=午前10時~翌午前4時(土・日・祝日は午後8時まで)/坪数=4坪/客単価=380~400円/平均月商=700万円/スタッフ=4人/全国で約90店舗(うち直営40店舗)を展開。

◆ロング・ロングセラークレープ10

マリオンクレープには、「バナナチョコ生クリーム」以外にも20年選手のオリジナルメニューが数多くある。

【ホットクレープ】

チョコレート

チョコバナナ

バターシュガー

シナモンアップル リンゴとシナモンの組み合わせ

ブルーベリーチーズ クリームチーズの酸味とブルーベリーの甘さがマッチ

バナナチョコカスタード バナナチョコ生クリームと首位を争う人気商品。自家製カスタードが評判

【コールドクレープ】

イチゴ生クリーム

イチゴチョコ生クリーム

【スペシャルクレープ】

バナナチョコスペシャル

イチゴチョコスペシャル

いずれも生クリーム&バニラアイスの入ったボリュームのあるクレープ

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