宅配サービスの注目株(9)宅配カレーで月商650万円「ココイチエキスプレス錦糸町店」
月商650万円を誇る宅配カレーの超繁盛店が東京・錦糸町にあった。しかも、裏立地14坪店舗、宅配バイク4台、初期投資1200万円の小規模経営というから驚異だ。その店は、カレーチェーン「CoCo壱番屋」(以下=壱番屋)の宅配専門店「ココイチエキスプレス」(以下=エキスプレス)だ。
エキスプレスは1年前、壱番屋の錦糸町店でFCオーナーの岡本拓朗氏が独自に立ち上げたもの。もとより手掛ける錦糸町店の宅配営業が好調で手狭になったため、分離独立させた格好だ。
宅配メニューと価格は壱番屋と同じで、宅配料200円プラスで1品から宅配している。営業実績は、客単価1900円、月間オーダー数2500~3000軒、平均月商650万円。これらの注文を、14坪店舗、バイク4台の小規模戦力で賄い、営業利益20%を確保しているのだから、抜群の収益性は一目瞭然だ。繁盛のポイントは何か。
岡本氏は開口一番、「宅配カレーは調理時間が短いのが最大の強み」と言い切る。「宅配に求められるのは、やはりスピード。ピザや弁当などは調理時間に10分以上かかりますが、カレーは1~2分でOK(揚げ物がない場合)。当然それだけ早く宅配できます。当店の宅配時間は注文を受けてから早くて15分ですね」という。
とはいえ、カレーは低単価で宅配には不向きと見られてきたのだが。
「正直、最初の1年くらいは、それほど売れませんでした。しかし、配達時間、接客、壱番屋のクオリティーを守って地道に続ければ、必ずリピーターが定着します」と岡本氏。「単価が低く、派手さもありませんが、オーダー頻度の高いリピーターが着実に上積みされていきます。それがカレーの商品力であり、壱番屋の実力ですね」と胸を張る。
だが、低単価の単品オーダーばかりでもなく、客単価1900円が示す通り、複数オーダーも多い。リピーターによる口コミが、企業や団体からの休日注文、残業夜食の注文を招く突破口になっているという。
また、リピーター比率の高さを裏付けるのが、ポスティング(チラシ配布)の少なさだ。ピザの場合、月2~3万枚のポスティングも珍しくないが、この店の場合、月平均5000枚にすぎない。「商圏と常連客をガッチリつかんでいるので、やみくもなポスティングは必要ない」というのが本音のようだ。
ただし、これら繁盛を語る上で、背景にある岡本氏の経験と壱番屋のブランド力は欠かせない。
岡本氏は大学時代の4年間、壱番屋のアルバイトで過ごし、卒業後、FC店の社員となり、26歳で独立資格を獲得、錦糸町店の居抜き権利を得て独立した。
当時の錦糸町店は、カウンター15席、月商400万円強の小規模経営だったが、岡本氏は立地特性を見抜き、すぐさま宅配(バイク2台)を導入。3年間のゆるやかな右肩上がりを経て、月商900万円を構築した。宅配売上げが400万円を超えてから、煩雑さが増したため、エキスプレスを開業したわけだ。いわばこの店は、岡本氏のブランドに対する愛着と、それを保持してきた経験則の集大成といえる。
壱番屋チェーンは、既存店のテコ入れ策として、1100店舗のうち約半数の店舗で宅配を導入している。おおむね、バイク2~3台の追加装備で売上げ1~3割アップを得ている。現在、エキスプレス業態は、この店と埼玉県上尾市の1店舗で計2店舗だが、チェーン本部は多店舗化を視野に入れて、宅配部門を強化する方針だ。
岡本氏は、ほかに手掛ける3店でも宅配を導入、いずれの店もバイク1台あたり80万円以上の売上げを上積みしているという。
◆「ココイチエキスプレス」(東京都墨田区横川3-1-1、寺林ビル1階、電話03・5637・2112)宅配受付時間=午前11時~深夜0時