電化厨房特集:ファミリーレストラン電化厨房最前線=ロイヤル関西「ロイヤルホスト御器所店」
外食産業の大御所「ロイヤルホスト」は、女性スタッフを尊重する労働環境の改善策として、電化厨房の導入に乗り出した。一昨年11月に改装した御器所店(名古屋市昭和区)を皮切りに、既存5店舗で試験導入し、快適さ、労働効率、ランニングコストなど、ガス厨房と比べた電化厨房の優位性について検証を進めている。ロイヤルグループ内で電化厨房の導入に先鞭をつけたロイヤル関西(株)の取り組みを追った。
“女性に優しいレストラン”を掲げる「ロイヤルホスト」は、表向き、女性をターゲットにした商品開発に注力しているが、裏側でも“女性の働きやすいレストラン”をテーマに、厨房環境の改善に取り組んでいる。客層は女性が8割を占めるが、働き手(パート・アルバイト)の女性比率はそれ以上に高いからだ。
「今後、少子高齢化でスタッフの確保が困難になります。優秀な人材の採用と定着を図るためには、働きやすい環境づくりが第一。その解決策が電化厨房です」と語るのは、ロイヤル関西(株)中部グループの電化推進役、上田剛さん(グループ料理長)。「快適さの追求と同時に、衛生・安全管理の向上やコスト削減も視野に入れた試みです」と、相乗効果に期待を膨らませる。
電化厨房の1号店となった御器所店は、約1000万円を投じた改装から1年半を経過し、電化厨房のメリットをスムーズに発揮している。排熱の削減効果により、厨房温度は以前の約40度Cから30度C以下に低下し、客席と同じ室温を維持。快適に働ける分、作業効率は飛躍的に高まり、直火調理につきものだったやけど事故もなくなったという。
そして、「何より清掃が楽になりました」と上田さん。「ガス機器は焦げ付きを掃除するため、機器の分解が必要。時間はかかるし、重たい作業なので体力も必要です。電気機器は一拭きで済む場合が多いので、とても簡単ですね」と絶賛する。
閉店業務の清掃時間は、以前に比べて約30分ほど短縮しているが、それを裏付けるように、水の使用量も激減している。電気洗浄機の活用による節水効果が大きいとはいえ、1日の水道使用量は1tも激減したという。
コストメリットについては、ランニングコストの削減が月間15~20万円。その削減換算で、約1000万円の投資回収は約4年を見込んでいる。加えて、電気厨房機器の耐久性やリスク管理にも信頼を寄せている。
「電気機器は耐久性に劣るといわれますが、実は故障の原因は、排熱による高温多湿な環境と油煙の撒き散らしなのです。電化厨房なら排熱が少ないので、故障リスクも当然少ない」と上田さん。「ここ2~3年、電力会社さんと厨房メーカーさんの共同開発が活発化し、電化厨房機器の性能もグレードアップしていますから、なおさら安心ですね」と、太鼓判を押す。さらに、「万が一の天災でライフラインが止まっても、電気の復旧は点検を含めて比較的早いので、休業リスクも低い」と、信頼を重ねる。
ロイヤルグループにおける電化厨房の検証は、まだ始まったばかりだが、ロイヤル関西(株)が先鞭をつけた予想以上の好結果に関心が高まっている。グループ挙げての本格導入となれば、スケールメリットも大きい。「適材適所は普遍ですから電化一辺倒はあり得ないでしょう」とはいえ、「昨今のガス料金の値上げムードは熱源見直しの追い風」という実感が先走るのも事実だ。
電化厨房の普及機運は、ますます高まりそうだ。
◆企業メモ
ロイヤル関西(株)(本部=大阪市中央区備後町3-6-14、アーバネックス備後町ビル7F)事業内容=外食大手・ロイヤルグループのブロック企業として関西・中部地区を担当。中核の「ロイヤルホスト」100店舗をはじめ計109店舗を展開。
◆店舗メモ
「ロイヤルホスト御器所店」(名古屋市昭和区阿由知通5-8-1)坪数・席数=121坪・123席/営業時間=午前9時(土・日・祭7時)~翌午前3時/平均月商=1300万円/客単価=昼1000円、夜1500円
◆現場のコメント:ロイヤルホスト御器所店料理長・近藤正之さん
料理人にとって、厨房環境が厳しいのは常識ですが、それを女性スタッフに強要すると、体力的にきつく、集中力が半減してしまいます。働きやすい電化厨房ならば、個々の能力を存分に発揮できますね。また、直火調理だと、調理マニュアルがあっても、火加減を習得するのに長期間を要しますが、電化機器ならば加熱量を数値制御できるので、一通りの調理を短期間でマスターできます。何より、調理や衛生の本質に関心を持つ余裕が生まれ、モチベーションの高いスタッフが増えることが、一番喜ばしい効果ですね。
◆女性満足に向けて本格和食に挑戦! 「いろどり和御膳 八寸と主菜」(税込1680円)販売期間=6月16日まで
「女性に喜んでいただく料理企画」の第1弾。京都・祇園の板前割烹「浜作」監修。「常にベストを尽くし満足していただく」という料理人の神髄を、異業種タイアップで盛り込んだ、ロイヤル初の試み。料理内容は、(1)八寸7種(2)主菜2種から選択。「鯛の揚げ煮おろし」か「牛肉の香り醤油焼き」(3)さくらご飯、味噌汁、食後のお茶。魚料理は「浜作」の代表的な一品「揚げ煮おろし」をロイヤル風にアレンジ。
◆使用機器紹介:シャープ(株)「業務用マイクロ波炊飯機(GY-MS25A)」
コメの味にこだわる料理人が絶賛。マイクロ波でコメ1粒ごとを直接均一に加熱、従来の熱電動式炊飯器では不可能だったコメの食味と色つやの良さを実現する。炊飯後の保温による黄変も少ない。炊飯釜はポリプロピレン製で焦げ付きにくく、作業性と歩留まりが向上。さらに、出力を独自にプログラミングできるので、火加減の設定も思いのまま。酢飯、おかゆ、かやく飯なども完璧に炊き上げる。(消費電力=単相200V/2990W)