電化厨房最前線:ハローデイ「ハローデイ井尻店」

2009.04.06 355号 21面
1釜で「かしわおむすび」約85個分のかしわ飯が炊き上がる。3台の炊飯器がフル稼働する

1釜で「かしわおむすび」約85個分のかしわ飯が炊き上がる。3台の炊飯器がフル稼働する

約16.5坪の厨房。ここでは毎日約60アイテムの商品が作られ、次々と売り場に並べられる

約16.5坪の厨房。ここでは毎日約60アイテムの商品が作られ、次々と売り場に並べられる

 “アミューズメント・フード・ホール”を目指すスーパーマーケット「ハローデイ」は、福岡県を中心に九州地方で32店舗を展開中である。店舗ごとにコンセプトを決め、テーマパークのようなワクワクする空間づくりを行い、楽しい雰囲気の中で買い物ができる場所としても地域住民から支持されている。

 3年前からは惣菜部門においてオール電化厨房を採用した店舗づくりを進めており、現在6店舗での導入実績を持つ。

 ハローデイでのオール電化導入は、「職場環境の改革とローコスト店舗づくり」の一環として推進された。

 まず、快適な職場環境づくりとしては、燃焼器具の輻射熱による熱さの回避、二酸化炭素の発生や着火不良による事故防止をはじめ、清掃業務の簡便化、調理時間や温度のデータ化によるマニュアル化の可能性といったメリットを重視。さらには、こうした快適な職場環境を提供することで、優秀なパートナー社員(パート)の離職を防ぐ目的もあったという。

 一方、ランニングコストは年間約120万円削減した。オール電化割引契約による光熱費の低減はもちろんのこと、鍋などの調理器具やレンジ台周辺の汚れが少ないため、清掃に費やす水道費の節約にもつながった。

 さらには厨房内に設置していたペーパータオルを廃止し、ジェットタオルに切り替えて、割安となった電気代の有効活用も行っている。ジェットタオルにしたことで、ペーパータオル代、使用済みペーパータオルの回収労務、さらには回収のためのビニール袋代などの節約効果もあった。

 「しかし、いくら職場環境の改革やコストの削減ができたとしても、商品の味が落ちてしまうことが一番怖かった」と、施設管理部次長・尾崎聖志郎氏。さらには電気機器の導入に対して、ガス機器を使い慣れたパートナー社員からの「ガスで調理した方がうまいに決まっている」という抵抗もあった。そこで導入前に、ガスと電気で炊飯した米飯の食味調査を実施することに。

 調査では20~50代の男女30人を対象に、白飯とかしわ飯を、それぞれ炊きたてと冷えた状態での食べ比べを行った結果、いずれの場合も「電気の方がおいしい」または「変わらない」が6割以上を占めた。さらに主力商品の「かしわ飯」に関しては、温冷いずれも8割以上が電気炊きをおいしいと回答した。

 「この結果が出たことで、自信を持って電化厨房機器の導入を進めることができた」(尾崎氏)

 そして電化厨房導入の第1号店として、2006年に「ハローデイ井尻店」がオープン。同店では現在、IHコンロ4口、スチームコンベクションオーブン1台、IHジャー炊飯器3台、フライヤーなどを使用。寿司、いなり寿司、おにぎり、サラダ、弁当、揚げ物など、毎日約60アイテムが売り場に並ぶ。

 商品部デリカ課・手島豊氏によると、電気厨房機器の導入によって、調理や清掃などに手間がかからなくなった分、これまでできなかった作業を取り入れたり、別の工程に手間をかけたりすることもできるようになり、商品の付加価値が高まったという。

 「例えば、これまでは1作業で1アイテムしか作れなかったが、スチームコンベクションオーブンを使いこなすことで、1作業で多品種を調理することも可能です。メニューのバリエーションを増やしたり、今以上に付加価値のある商品提案もできるはず。コスト重視だけではなく、手作り感や専門性のある商品の開発、そして品質アップを目指していきたい」(手島氏)と、意欲をみせる。

 ◆店舗メモ

 「ハローデイ井尻店」/店舗所在地=福岡県春日市須玖北1-32-1/開業=2006年4月/営業時間=午前9時~午後11時

  (株)ハローデイ/本社所在地=福岡県北九州市小倉南区徳力3-10-1/事業内容=福岡県を中心にスーパーマーケット「ハローデイ」32店舗(2009年2月現在)展開/企業年商=530億円(2008年3月実績)

 http://www.halloday.co.jp/

 ◆現場のコメント:ハローデイ井尻店・デリカ部門チーフ 宮崎拓也さん

 火加減が数値化され安定した品質での提供が可能に

 惣菜部門のパートナーさん(パート)は主婦が多く、はじめは「家では使ったことがないから」と電気機器に戸惑う方も多いのですが、実際に使い始めるとボタン一つでの単純な操作なので、みなさんすぐに慣れています。

 火加減一つをとってみても、ガスの場合には、例えば「弱火」や「強火」の基準が人それぞれ微妙に違い、そのズレが商品の出来にも影響することもありました。しかし、電気機器ならば火加減は数値化されているので、誰が操作しても変わりません。そのため、誰が作っても同じ味、安定した品質を提供できるようになったと思います。

 ほかにも、清掃がラクになりましたし、着火ミスなどの危険もありませんので安全に作業できるようになったことも大きなメリットだと思います。

 ◆使用機器紹介:パナソニック(株)「業務用IHジャー炊飯器調理器 SR-PGA54A」

 「かまど炊き」の技を再現した微妙な火加減がうまさに違い

 釜全体が発熱するIH炊飯器は、熱効率が高いのでロスが少なく、炊き上がりが安定。釜の中に2つの強い対流を発生させてIHの強火をコメに伝えることで、より均一に炊き上げる。

 かまど炊きを再現し、吸水から蒸らしの各工程で微妙な火加減をコントロール。メリハリの効いた加熱で、コメ本来のうまみを引き出す。

 釜の内側表面には、粉末状にした備長炭を加工。遠赤外線効果を高めることでコメの吸水性が向上し、さらにふっくらとおいしく炊き上がる。

 消費電力=3相200V/4570W

 ○IH炊飯器でおいしく炊いた「かしわおむすび」

 主力商品である「かしわおむすび」は、井尻店のみならず全店舗において人気が高い。中には1日に約10釜(1釜=約85個分)を炊き上げる店舗もあるという。

 九州北部の郷土料理ともいえる「かしわ飯」だが、ハローデイでは具は鶏肉、ニンジン、ゴボウ、コンニャクを使う。特に、鶏のぼんじり部分を入れて炊き上げることで、他店との差別化を行っている。鶏の脂によって米1粒1粒がコーティングされ、風味豊かな味わいだ。

 ほかにも「若鶏竜田揚げ」や「オム焼きそば」などが定番の売れ筋商品だ。

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