新メニュー開発術 志向トレンド&テクニカル基本100項

2009.04.06 355号 11面
カジュアルミール「沖縄チャンポン飯」

カジュアルミール「沖縄チャンポン飯」

シニアグルメ「薬膳鯛茶漬け」

シニアグルメ「薬膳鯛茶漬け」

 ◆53 カジュアルミール 簡便な食事スタイルが一般化

 カジュアル(casual)にはいくつかの意味があるが、ここでは「略式の、普段着の衣服」との意味から、簡便で略式の食事スタイルと考えてほしい。なにごともスピーディーになった現代では、食事の在り方もまた従来とは異なるものが求められている。

 その傾向のひとつが、伝統的で規範的な日本人の食事様式が後退し、よりスピーディーで合理的な食スタイルが一般化していること。なかでも目立つのが、食事の作法や行儀のよさという概念の変化だ。ご飯の食べ方にしても、きちんと主菜、副菜を並べ、それにご飯、汁物、香の物と構成したものを行儀よく食べるという、日本人としての当たり前の文化が失われてきた。

 代わって一般化してきたのが、カジュアルミール。ここにはより手軽に食べられるパン食や麺類への嗜好の変化も含まれるが、いわゆるご飯を主体としたものでいえば、丼物やカレーライスなどのライスメニューが典型だ。丼物などは、行儀の悪い食べ物の代表格とされていたが、現代ではむしろ合理的な食べ方として認知されてきた。

 一方で、いわゆる丼物やカレーなどは、現代人の食嗜好として顕著な「味付きご飯」好きの傾向にもマッチするものだ。最近の子どもの食事スタイルを見ると、ご飯だけで食べ、おかずはおかずだけで食べる傾向が強く、これではご飯に味がなく食べづらい。いきおい味付きご飯の嗜好が強まったともいえるが、このことからもカジュアルなご飯メニューの人気は高まりそうだ。

 ○「沖縄チャンポン飯」 ポイントは皿盛り

 豚肉とゴーヤー、モヤシなどのたっぷりの野菜を炒め、白飯にのせた新しい丼メニュー。野菜類のヘルシー感と、スプーンで食べるカジュアル感が、現代人にウケる。調味には鰹節や魚醤を使うことで、沖縄風の味のイメージを訴求している。豆腐や卵を炒め合わせてもおいしい。時間に追われるランチタイムの商品としても手軽に提供できるし、コストも抑えられる。丼物としてもよいが、皿盛りにして提供するのが沖縄独自のスタイル。

 ◆54 シニアグルメ 急務のシニア向け商品開発

 高齢化社会の進展とともに、外食産業でもシニア層を対象とした商品開発が急務とされている。一般的にシニア向けメニューの要素として指摘されているのは、(1)カロリー総量、(2)低塩、(3)低脂、(4)低糖、(5)低コレステロールといった機能面と、(6)和食回帰、(7)魚食志向、(8)野菜志向、(9)上質志向、(10)バラエティー感などの要素だ。加えて、高齢者特有の事情としての軟らかな食感や、嚥下の容易さ、消化吸収のよさも必要とされている。

 ただ、外食時の商品としては、あまりこれらの要素にこだわりすぎるのは考えもので、かえって商品が特殊なものになるうえ、実際にはほとんど売れる可能性がなくなるはずだ。外食時には、外食ならではの楽しみも重要なはずで、むしろ、たまの食事なのだからあれこれ気にせずに食べたいものを自由に食べるという性向も強いのだ。

 シニア層は、それだけ豊かな食経験を持っているうえ、購買力もある。従って普通以上に質への志向が強いし、味にもうるさい。よい素材と丁寧な調理、加えて、見た目で食欲を刺激するようなビジュアルも重要なポイントだ。むろん、生理的な変化として、脂タップリの大トロや霜降り牛肉などは、いくら高級といえども良質とはならない。タイやヒラメなどの白身魚や、赤身のヒレの方が好まれるのは当然だ。

 結果としてシニア向けメニューは原価も価格も高くなるが、この層を狙い撃ちするには、それがひとつのセオリーとなるし、それでなければ商品のうまみもない。

 ○「薬膳鯛茶漬け」 石鍋で熱々を保持

 ナツメ、松の実、クコの実を入れた薬膳風の茶がゆに、タイの薄造りを入れて、ややレアの状態で食べるヘルシーメニュー。副菜として、卯の花やヒジキ、ご豆腐、オクラと昆布の数の子あえ、辛い明太子などを彩りよく盛り合わせて提供。タイの火通しを考えて、熱々状態を保持できる石鍋を使用し、提供してからでもフツフツと煮えているところがポイント。味の補強として、醤油あんや、薬味醤油、サンショウ塩や抹茶塩などを添えてもよい。

 (FSプランニング 押野見喜八郎)

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