トップインタビュー:ペッカリイ・工藤一枝代表取締役

2010.02.01 368号 14面

 ペッカリイ(株)は86年、「レディス・キヨスク」の企画開発をきっかけに女性だけの企画会社としてスタート。いわゆる「男女雇用機会均等法」の施行が同じ86年であり、同社の先見性を伺わせる。さまざまな企画開発を手掛けるなかで、ゆるやかに飲食事業を広げてきたという異色の経歴だ。駅ナカのカフェやカレーショップからポルトガル料理業態、高層ビルの本格レストランまで幅広い業態展開を行っていることからも、同社の「しなやかさ」を伺わせる。すべての業態に共通する理念がしっかり浸透し、お客も実感できるレベルだからこそ、厳しい景気の冷え込みでも支持される店たりえるのだろう。新たにFC事業をスタートさせたファストカジュアル業態「パスタフローラ」の展望を伺うと、同社の価値基準の高さとお客の共感との一致を感じていただけるだろう。(文責・さとう木誉)

 ◆理念が一致しFC参入決断

 –2008年に「パスタフローラ」をM&Aしました。FC業態の買収を決断したきっかけは何ですか。

 工藤 「パスタフローラ」をM&Aさせていただいた時点の店舗は10店。15年前はFC事業に消極的でしたが、全部の店舗を訪れてみて考えが変わりました。何より食材にこだわっていておいしい。パスタはモッチリした生パスタですし、ナポリピザはご注文いただいてから生地をのばして専用オーブンで焼き上げる。「横濱ナポリタン」には有機トマトソースを使うなど、おいしさへのこだわりは私たちと共通するものがたくさんあったのです。これなら私たちの「食を通じて提供する豊かなこころ」という企業理念で店舗を増やすことができ、お客さまにも喜んでいただけると思ったのです。

 –FCに消極的だった理由は。

 工藤 FC運営は本部重視の利益構造や経済・効率性重視の食材使用などが優先され、企業理念と相いれないのではないかという先入観がありました。そもそもFCとはどうあるべきかということから話し合い、「お客さまに喜んでいただき、オーナーさまにも喜んでいただき、共に繁栄できること」「おいしい店であり続けること」を柱にしていくことをスタッフ全員で共有し臨みました。綾瀬駅前店がM&A後のFC1号店ですが、オーナーさまに「料理を自信もって提供でき、お客さまにも喜んでいただき、私たちはすごく幸せだ」と言っていただけたことが大きな励みになっています。私たちの選択は間違ってなかった、と。

 –M&A以前の「パスタフローラ」はフルサービスとファストカジュアルの2つのスタイルがあります。今後の展開は。

 工藤 既存店はそのまま続けていきますが、今後はファストカジュアル業態を展開していきます。「船橋ららぽーと店(千葉)」はファストカジュアルへの転換をしたところ売上げが30%も伸びました。パスタは高くても780円程度、ナポリピザは390円から。2人でパスタを1つずつ食べて1枚のピザをシェアしてグラスワインを1杯ずつ飲んでも、1人1300円程度です。一度「パスタフローラ」で食べたお客さまは「この値段でこのおいしさなら、また食べたい」と必ず納得してくださいます。低価格競争に惑わされることなく、値段と品質とのバランス感覚があるお客さまに長く愛される店に育てていきたい。

 ◆手作り感出す商品設計奏功

 –M&A以前と以後とで変わったことは何でしょう。

 工藤 メニューを一新させました。これまでさまざまな業態を運営していくなかで蓄積した私たちの「ノウハウ=味」にしています。また「料理」の要素が多いことも特徴です。他のファストフードやチェーンストアでは、セントラルキッチンから届いたものを機械的に温めるだけで盛り付けるのが大半ですが、「パスタフローラ」はドレッシングやソースにも手作りの部分を残しています。その「手作り感」が、お客さまの愛着、作り手の愛着につながるのです。

 –現場での手作業が増えることは店ごとに味の「ブレ」が生じることにもつながります。どのように調整するのでしょうか。

 工藤 味の「ブレ」をなくすために機械化を導入しすぎると、不思議なもので「おいしい」から遠ざかってしまう。研修や本部とのコミュニケーションを密にすることで、調整していくのがベターだと考えています。幸いなことにM&A以前のお店も含めて全店ブレることなく目指す味を表現できています。オーナーさまに恵まれていることの証です。また、基本メニューをしっかり踏まえたうえで、プラスアルファのメニューはあってもよいと考えています。岡山新保店では「豚肉とキャベツのパスタ」などのオリジナルメニューが人気です。本部と共同で地域の特産食材を生かしたレシピ開発も可能です。

 ◆ポルトガル料理二本柱に成長

 –「パスタフローラ」をはじめとして多様な業態を展開していく中で、お客さまのニーズがどのように変化していっていると感じていますか。

 工藤 どんなにおいしい料理でも適正価格をしっかり見極めるお客さまが確実に増えたと感じています。良い食材で、健康に良い食べ物で、そしてリーズナブルなものが支持されています。「ヴィラモウラ」(東京・銀座)などポルトガル料理の店を3店営業していますが、水曜日くらいから予約で埋まっているほどです。不況でも、適正なおいしさと価格のわかるお客さまは変わらず支持してくださるということです。

 –もっともシビアな客層ですね。

 工藤 すごくつらいし、もうからない。でも、そこをしっかりやりきれたら、長く支持される店になるはずだ、と。当社の業態でも居酒屋(「集楽」=東京・茅場町)は厳しいですが、安易に低価格にはせず味の分かるお客さま、適正価格の分かるお客さまに喜ばれる店でいよう、と。とにかく安ければいいという店では、ほかにもっと安い店ができたらお客さまはそっちに流れてしまうだけですから。

 –品質重視な姿勢が全業態に行き届いているのですね。

 工藤 ポルトガル料理業態は好調ですし、「パスタフローラ」もフランチャイジーにたくさんの方が応募くださっています。狙った客層に支持される会社になりつつあると実感しています。

 ◆プロフィール

 くどう・かずえ=1947年北海道上湧別町出身。故郷の町おこしのため80年に上京。「レディス・キヨスク」の提案をきっかけに86年ペッカリイ(株)設立。当初は飲食の枠にとらわれない企画会社であった。94年開業したナチュラルフレンチ「レストラン ルーク」(東京・築地)から外食事業を手掛けるようになる。

 ◆企業メモ

 ペッカリイ(株)(本社所在地=東京都港区南青山5-11-15、H&M MINAMIAOYAMA WEST)/設立=1986年3月/資本金=3億496万8900円/従業員数=社員88人/店舗=「パスタフローラ」「ヴィラモウラ」「レストラン ルーク」ほか直営12店、FC11店/公式サイト=http://www.peccary.co.jp/ ※2009年12月現在

 ◆事業内容

 駅ナカのカレーショップから、高層ビルのレストランまで12の直営店を運営。2008年に「パスタフローラ」をM&A、FC事業をスタート。2013年までに100店舗を目指す。ポルトガル料理業態「ヴィラモウラ」(銀座店/赤坂サカス店)、「ペローラ アトランチカ」が好調で、多店舗化を視野に展開する。契約農場から届く野菜や漁港から直送される魚介など、厳選した食材を使用する。

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