中華料理特集 メニュートレンド:農家と中華を兼業 「農家厨房」

2010.11.01 380号 01面
アラカルトはほとんどが、1000円以下。「野菜のセイロ蒸し」(500円)、「マーボー水ナス」(800円)、「シラサエビのココナッツガーリックパウダーがけ」(980円)

アラカルトはほとんどが、1000円以下。「野菜のセイロ蒸し」(500円)、「マーボー水ナス」(800円)、「シラサエビのココナッツガーリックパウダーがけ」(980円)

 大阪市内の肥後橋から淀屋橋界隈といえば、大企業が立ち並ぶビジネス街。サラリーマンやOL対象の店が多い、レストラン激戦区の一つである。そのなかで、予約が取りにくい中華料理店として人気急上昇中なのが、「農家厨房」である。客の9割が女性という同店の、女心にアピールするツボを探ってみた。

 ◆女性客9割 2週間前には予約いっぱい

 「野菜にも魚介にも旬がある」という、都会にいると忘れがちになる季節のサイクル。それを、安くてうまい中華料理で思い出させてくれるのが同店。ランチタイムのにぎわいはもとより、夜も2週間前には予約でいっぱいになるという繁盛店である。

 お客の多くは女性で、そのハートを引きつけている要因の一つがバリュー感。例えば、ランチの「お粥セット」(850円)ならば、おかゆ(お代わり自由)とスープ、野菜のせいろ蒸し、飲茶3品、マンゴープリンまで付いている。

 なかでも好評なのが、どのランチメニューにもセットされている野菜のせいろ蒸し。下味などは付けずに、素材そのものの味をスチームしているので、自然の味がダイレクトに楽しめる。ヘルシー感と野菜の滋味が評判を呼び、「ディナーも食べてみたい」という女性たちで、夜も盛況である。

 ディナーメニューの「野菜のセイロ蒸し」では、昼バージョンよりグレードアップした9種の野菜が登場。せいろにたっぷり入って500円という、驚きの価格である。この価格が実現できるキーワードは、店名でもある“農家”。25年のキャリアを持つオーナーシェフの大仲一也さんは、堺市の農家出身。休日には田んぼや畑を耕す、生産者でもあるのだ。

 店で出す野菜は、自分の畑や近隣の農家から仕入れた素材が中心で、安く手に入れることが可能。自分の周りで手に入らない種類だけ、市場に頼るというスタイルだ。「コンセプトは、地域密着での新鮮度。近所の生産農家が協力してくれて、紹介などでルートも広がっている。地元の農家パワーを活用しています」

 地元の食材へのこだわりは野菜だけではなく、海産物でも。写真のエビ料理には、シラサエビが使用されているが、これは泉州沖で捕れたもの。エビは基本的に泉州物しか使用せず、入荷がなければメニューからはずれるという。同店のメニューは、いわば“自然体”。無理なく仕入れられる時期こそ、一番味がよくて安くても出せるというわけである。

 同店のスタッフは、大仲シェフをはじめ、4人が野菜ソムリエの有資格者。次の目標は、八百屋兼レストランの開業とかで、「スタッフが、食材の調理方法や保存方法もアドバイスできるのは、強いアピール力になる。その力を、今後の展開にも生かしていきたい」と話す。

 ●店舗情報

 「農家厨房」 所在地=大阪府大阪市西区江戸堀1-1-9、電話06・4803・7803/開業=2009年2月/営業時間=午前11時半~午後2時(LO)、5時~9時半(LO)。日・祝定休/坪数・席数=約20坪・30席/1日客数=約100人/客単価=昼850~1000円、夜約3000円/平均月商=約300万円

 ●愛用資材・食材:「東栄 超級魚露」

 同店では、野菜セイロ蒸しとともに、酸味の効いたつけだれを出している。たれは、醤油ベースに、フレンチドレッシングを合わせてアレンジされるが、コクを出すためにプラスしているのが、中国産の魚醤である、「超級魚露」。タイ産のナンプラーよりも魚臭さがなく、1~2滴加えるだけでもインパクトが出せるという。同店では、蒸し魚料理のたれにも使用している。

 輸入元=(株)東栄商行/兵庫県神戸市中央区中山手通3-3-6

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