外食史に残したいロングセラー探訪(55)ピザハット「ふっくらパンピザ」

2011.09.05 390号 08面
ペパロニサラミ、ベーコン、ピーマン、オニオンのシンプルなトッピングの定番メニュー「デラックス」(写真の生地はふっくらパンピザ)

ペパロニサラミ、ベーコン、ピーマン、オニオンのシンプルなトッピングの定番メニュー「デラックス」(写真の生地はふっくらパンピザ)

世界各国でさまざまなメニューが開発されているが、マヨネーズソースを使うトッピングは日本の特徴という

世界各国でさまざまなメニューが開発されているが、マヨネーズソースを使うトッピングは日本の特徴という

 1958年にアメリカ・カンザス州で誕生したピザハット。日本第1号店のオープンは1973年9月だが、その後、1991年5月から日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)が事業を受け継ぎ、デリバリーピザとして全国へ展開を開始した。トッピングの目新しさ、豊富さで差別化をはかる店舗が多い中、ピザハットではオリジナルの「クラスト(生地)」開発にも力を入れているようだ。

 ◆基本は鉄鍋で焼き上げる“ふっくらパンピザ” “みみまでおいしい”に着目した商品開発

 「ソーセージロール」や「チーズクラスト」など、斬新なスタイルの生地を常に提案し続けているピザハットだが、これらの基本となるクラストが、創業当初からの『ふっくらパンピザ』である。

 このふっくらパンピザは、店舗で小麦粉から練り上げ、時間をかけて発酵させた生地を、専用の深みのある鉄鍋(パン)で焼き上げたもの。新鮮な生地を使用することで、特徴的な軟らかい口当たりとボリューム感が得られるという。また、鉄鍋で焼き上がることで、“みみ”の部分にサクサクの食感が生まれる。生地は各メニューを構成する素材の一つではあるが、実はこのパンピザは創業当初から変わることのないロングセラーといえるだろう。

 1996年に登場したチーズクラストは、みみにチーズが入ったもの。その後次々に開発される、ピザを「ふち(みみ)から食べる」という新しいスタイル提案の先駆けとなった商品である。

 その10年後の2006年には、「チージーロール」が発売される。これはモッツァレラ、チェダー、パルメザンの3種のチーズをみみに巻き込み、そのみみをカットしてわざわざ放射状にきれいに並べて焼き上げたもので、「みみ」の部分だけをひと口ごとにつまんで食べられる斬新さが支持された。

 この「チージーロール」が好評であったため、翌年には日本オリジナルメニューの「ソーセージロール」が誕生する。チーズの代わりに、今度はひと口サイズのソーセージが巻き込まれた生地は、みみの1つ1つを小さなホットドッグのようにつまめる楽しさが、特に子ども客の心をつかんだ。そのため、最盛期には「チージーロール」「ソーセージロール」が注文の50%近くを占めることもあったほどの超ヒット商品となり、売上げの前年比が2~3割アップしたという。そして、チーズとソーセージを両方味わいたいという声に応えて、「ダブルロール」も間もなく登場した。

 このように、ある国で開発され、ヒットした商品が世界的に広まり、さらに別の地域で新メニューが生まれるというのは、グローバルチェーンならではの強みという。

 最近では、期間限定で発売され、タピオカ粉を使い、モチモチとした食感を強めた「モッチリーノ」も好評であったという。

 基本を守りながらも、顧客のニーズに応え、さらに新しい提案を行っているピザハット。今後の「みみまでおいしい」商品にも注目していきたい。

 ●企業データ

 日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)/本社所在地=東京都渋谷区恵比寿南1-15-1 JT恵比寿南ビル/事業内容=「ピザハット」359店舗、「ケンタッキーフライドチキン」1153店舗、他(2011年5月末現在)

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