外食史に残したいロングセラー探訪(57)リンガーハット「長崎ちゃんぽん」

2011.11.07 392号 08面
野菜は炒めて煮ることにより、生野菜よりもたくさんとれる

野菜は炒めて煮ることにより、生野菜よりもたくさんとれる

異人館風の店舗外観は遠くからでも人目を引く(500号店福岡橋本店)

異人館風の店舗外観は遠くからでも人目を引く(500号店福岡橋本店)

 「ちゃんぽん」といえば長崎県の郷土料理として多くの人が知っている麺類だ。そして、連想するキーワードの中にリンガーハットを思い浮かべる人もいるだろう。そう、ちゃんぽんの名を全国区にしたのは、「長崎ちゃんぽんリンガーハット」の貢献が大きいといっても過言ではない。まさしくリンガーハットのちゃんぽんは誰もが認めるロングセラーメニューだ。

 ◆魅力はうま味の二重層 他店との違いは角形の生麺

 来年で50周年を迎える(株)リンガーハット。その創業店舗は、1962年、長崎市にオープンした豚カツ専門店「浜かつ」。創業者の米濱豪氏は、その他にもさまざまな事業に挑戦するなかで、アメリカで伸びているチェーンストアに着目、チェーン展開できる事業を模索していた。

 白羽の矢が立ったのは、長崎県民にとって身近な郷土料理ちゃんぽんだった。当時、長崎ではラーメンがなかなか根付かない環境があった。それはちゃんぽんの存在が大きかったと思われる。

 池田滋寛氏(同社研究開発グループ商品科学研究所/技術執行役員)は、ラーメンとの違いについて「ちゃんぽんのスープ自体は意外とシンプルですが、野菜などの具を炒めて煮込むことでおいしい生のだしが出ます。そのうま味の二重層がちゃんぽんの魅力ではないでしょうか」と説明する。

 リンガーハットの前身である「長崎ちゃんめん」がオープンしたのは、74年。店のうわさは口コミで広まり、行列ができるほどの繁盛店となった。心半ばに逝去した長兄の創業者の意志を継いで米濱和英氏(会長兼社長)、米濱鉦二氏(最高顧問)の兄弟の手によって全国展開へ進んでいった。

 当時高校生だった池田氏は「話題を聞きつけ、電車に乗ってわざわざ食べに行きました。洗面器のような大きな丼に、生麺、野菜が豊富で、食べたときは、新しくておいしいものを食べた感動を覚えています」と振り返る。

 他店との違いは、麺にある。長崎では、丸形の蒸し麺が主流のなか、角形の生麺が他店にはない食感とスープとの絡みのよさを生んだ。これは今でも受け継がれている特徴の一つだ。

 全国展開に成功したリンガーハットは、国内はもちろん、さらに世界へ目を向けている。そのなかで安定したおいしさを追求するとともに健康にも意識をおいている。82年から調理油を植物系に変え、塩分も時代に合わせて減らしてきた。そして、NOS(ニューオペレーションシステム=1個作りの煮込み調理)を導入し、1人前単位の調理の実現で顧客一人ひとりのニーズに合った商品を提供できるようになった。また、「日本の野菜を食べる」をキャチフレーズに野菜が通常の2倍入った「野菜たっぷりちゃんぽん」などは健康志向を意識したメニューの一つといえよう。

 「ちゃんぽんは非常に栄養のバランスのいい今の時代にあった料理といえるでしょう。私どもは長崎ちゃんぽんの基本を守りながら、時代とニーズを意識し、ちゃんぽんの新しい可能性も含めて商品を開発・改良しています。それは今も昔も変わりません」と池田氏は強く語る。

 ちゃんぽんの歴史は明治中期、今でも存在する中華料理店「四海樓」が発祥。当時の留学生に「たくさん食べてもらいたい、栄養をつけてもらいたい」との思いがちゃんぽんを生んだ。そのちゃんぽんに込められた思いをリンガーハットは今、世界へ向けて発信している。

 ●企業データ

 (株)リンガーハット/本店所在地=長崎県長崎市鍛治屋町6-50/東京本社=東京都大田区大森北1-18-18 NJビル/事業内容=「長崎ちゃんぽんリンガーハット」488店舗(2011年8月末現在)、海外タイ2店舗、アメリカ1店舗、「とんかつ浜勝」107店舗(2011年8月末現在)、卓袱浜勝1店舗

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