外食史に残したいロングセラー探訪(66)ポムの樹「定番ケチャップオムライス」
数多あるオムライス専門店のなかでも常に30種類以上のオムライスメニューを揃えている創作オムライス専門店「ポムの樹」。過去のメニューなども合わせると200種類以上になるという。そのオムライスに対するこだわりは、多くのお客に愛され、リピーターにつながっている。なかでも、今回、紹介する定番ケチャップオムライスは、すべてのオムライスのベースともいえるロングセラーメニューだ。
●家庭では作れないお母さんの料理 オリジナルライスと何層にもなる半熟卵のマッチング
創作オムライス専門店ポムの樹は、1994年から全国展開を開始。そのコンセプトである「家庭では作れないお母さんの料理」は、非日常的なランクの高い商品の中にも懐かしさのある味を表現することにある。
同メニューのこだわりは、中身のケチャップライスに使用するコメに成分・水分値などのデータに基づいた、数種類のブレンド米を採用。そして白米ではなく、炊き込んだこだわりのベースライスを使用する。調理の前段階では具となる玉ネギ、ベーコンを炒め、ベースライスを加え、ケチャップを絡めていく。
同社営業本部の藤濤弘士本部長は「普通はベーコンではなくチキンを使用するケースが多いのですが、ベーコンのうま味と薫製の香りをライスに移すのが目的です」。また、ケチャップについて「子どものお客さまも多いので、市販のケチャップですと酸味とスパイシーさが強すぎます。ですから甘さを出すため、完熟トマトだけを使用したPB商品を開発。もちろん着色料・保存料などを使用しないナチュラルなものです」と説明する。
卵は液卵を使わず国内産の新鮮な物をオーダーごとに1つ1つ手割りし使用している。食材は常に安心・安全を追求し、すべての店舗で安定した商品提供に努めている。
そして、一番のこだわりは他社にはまねができない卵の巻き方だ。ライスの上にただスクランブルエッグをのせるオムライスが多い昨今、同店では、きちっと卵で巻き込む枕型を提供している。お店で1つ1つ丹精に作られるオムライスは、半熟の層を何層にも重ねるという高度な技術を要する。そのため、同社ではオムライス検定を設けている。
「卵一つをとっても質量、まぜた回数、火加減、商品サイズなどさまざまな違いがあります。ですから一定のレベルの技術と経験が必要です。この検定に受からなければ、いくら出店が決まっていても、オープンすることはできません」と卵料理の難しさと人材育成の厳しさを語る。
また、今後の展開について「弊社の理念は、“食を通して、世の為、人々の為に尽くすこと”です。おいしいオムライスをたくさんの人に食べてもらい笑顔になってもらいたい。そのためにももっと店舗を増やしていきたい」と熱く語る。
●企業データ
(株)ポムフード/本社所在地=鹿児島県姶良市/事業内容=創作オムライス専門店ポムの樹、ポム・ド・テール、ポムズファームなど6ブランド、他業態3ブランドを含む121店舗を運営(2012年6月現在)。