アポなし!新業態チェック(76)「スラッピーケークス」新宿店

2013.05.06 410号 10面

 ●タイ料理のコカレストラン 米国の人気パンケーキ店導入

 「コカレストラン」「マンゴツリー」など、海外で人気の飲食店ブランドを日本で展開するコカレストランが、米国オレゴン州ポートランドの人気パンケーキ店「スラッピーケークス」を東京・新宿でオープンさせた。2009年に米国で創業したばかりのブランドだが、多くのメディアに取り上げられ、フードネットワークTVの「アメリカで行きたい店トップ10」にも選ばれたという人気店だ。

 最大の特徴は店内のテーブルに大型のホットプレートが組み込まれ、ちょうど日本のお好み焼き店のように来店客が自らパンケーキを焼くことができるという点にある。

 パンケーキの生地や具材、トッピングも選ぶことができ、甘いデザート系だけでなく、肉や野菜が入った食事になるパンケーキも多数ラインアップされる。欧米では、ヘルシーで軽い朝食メニューが一日中注文できる飲食店が人気だが、同店もそうした店のひとつ。メニューには、パンケーキの他にポーチドエッグが2つ付いたエッグズベネディクトや、ベーコン、ソーセージ、ステーキなどの肉類を使ったプレート料理、サラダなど、米国風家庭料理が豊富に揃えられている。

 パンケーキメニューは現在、バターミルク、ホールグレイン(全粒粉)、ピーナツバターという3種類の生地を選び、チョコレートやドライフルーツ、チーズ、ソーセージといった具材と、ホイップクリームやメープルシロップのようなトッピングをチョイスして出来上がる(組み合わせにより800円~)。

 これまでタイ料理を中心に展開してきた同社が、新たな展開を見せ始めた。

 ★けんじの評価

 パンケーキのブームはとどまるところを知らない。世界各地からパンケーキの有名な飲食店ブランドが次々と日本に上陸し国内でもパンケーキをフューチャーした新業態を開発する企業が続出。大手のカフェチェーンもこのトレンドを見過ごしてはならないと、パンケーキ商品を導入し始めた。これを機に、東京にはパンケーキを売り物にしていた全国のローカル飲食店が続々と集結しつつある。まさにパンケーキ戦争勃発。パンケーキ業界は群雄割拠、下克上の戦国時代に突入したと言えるだろう。

 そんな中、テーブルに鉄板を置き、お客自ら焼くというスラッピーケークスのコンセプトは斬新だった。なぜなら、これは日本人の大好きな鉄板焼きの世界だからだ。これはぜひとも行かなければ、と思い開業後すぐに訪れてみたものの、駅ビル内の店舗は女性客でいっぱい。長蛇の列を眺めて諦めた。やっと臨店できたのは開業してから1ヵ月以上もたった夕方遅く。それでもまだ10人以上の空き待ち行列は続いている。

 訪れてみれば分かるが、実は客席のうち実際に鉄板が埋め込まれたテーブルはわずかしかない。やはり、米国西海岸にある本店の雰囲気をそのまま新宿の駅ビルに持ち込むのは少し無理があるのか。筆者は、こうしたアメリカの朝食メニューが大好きで、実はむしろ、ベーコンやソーセージ、卵などを使った、パンケーキ以外の料理の方が好きなくらいなのだが、それでは誰が日本でこの料理を食べに来るのかと考えると、少し疑問は残る。タイ料理を浸透させた同社が、今度は米国流の朝食メニューを日本に定着させられるかどうか楽しみだ。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ●鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

 ●開業=2013年1月31日/所在地=東京都新宿区新宿3-38-1、ルミネエスト新宿 7&8DINNER 7F

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら