メニュートレンド:牛タンハンバーグランチ まるでタン塩のような味と食感
ハンバーグは、どこの店でも文句なしの人気メニューだ。焼肉店が出すハンバーグとなれば、和牛100%のハンバーグを発想するのが通常だが「それではインパクトがない。焼肉店ならではの差別化を狙いたかった」と語るのは岩崎健志郎総料理長。そこで考案されたのが「牛タンハンバーグ」、通称“タンバーグ”。今やランチオーダーの8割以上を占めるという人気メニューを分析した。
●焼肉店だからこそ実現できたメニュー ランチタイムの回転率アップにもひと役
「牛タンハンバーグ」をひと口食べてみると、「えっ、これがハンバーグ!?」という驚きが確かにあり、岩崎総料理長の狙いは見事に的中。
昨年6月のオープン当初から、牛タンハンバーグはランチタイムの看板メニューを目指して、開発が進められていた。「たとえ和牛100%だとしても、焼肉屋が普通のハンバーグを出しても、洋食のプロが何時間もかけて煮込んで作ったドミグラスソースがかかったハンバーグには対抗できない。メニューとしての価値に明らかに差があります」
そこで「肉のスペシャリストの焼肉店にしか出せないハンバーグを」とアイデアが練られた。岩崎総料理長が注目したのが、どの焼肉店でもよく売れる「タン塩」。タン塩の味とコリコリした食感をいかにしてハンバーグにするか、試行錯誤を繰り返した結果、誕生したのがこのメニューだ。洋食店ではまずお目にかかれない、まさに焼肉店ならではの発想と技から生み出されたと言っていいだろう。
同店では焼肉ランチを1000円で提供しているが、和牛を使用しているので原価率的に厳しいものがある。また、焼肉はロースターを使用するので、席が回転するごとに掃除が必要となり人件費がかかる。ガス代コストも侮れない。さらに、焼きながら食べるので、お客の滞在時間が長くなり回転も悪くなる。ハンバーグならそのデメリットを一気に解消でき、現在、ランチタイムのホールはスタッフ1人で切り盛りし、回転率も平均1.5回にのびた。
同店では、牛タンのひき肉だけで週15kgを仕入れている。牛20頭分に相当し、普通の店ではこれだけの量の和牛のひき肉を集めるのは、かなり難しい。精肉店と信頼関係を築き、入手ルートを確保している同店ならではの強みでもある。タンの食感を生かせる肉のひき方を数種類オーダーしているが、ひき具合とまぜ方の割合は“門外不出”とのこと。そのこだわりが、タン本来のうま味が堪能できる、焼肉店ならではのハンバーグが誕生した要因だろう。
●店舗情報
「麻布十番 焼肉 ブルズ」 所在地=東京都港区麻布十番2-5-1 MANIVIA麻布十番3F、電話03・6434・5418/開業=2012年6月/営業時間=午前11時半~午後2時半 5時半~午前1時(LO午前0時)日曜休/坪数・席数=25坪・34席 8テーブル/客単価=昼1000円 夜8000~9000円/1日の平均来店客数=昼25~30人、夜25~30人
●愛用資材・食材:「特選和牛静岡そだち」
JA静岡経済連 畜産部(静岡県静岡市駿河区)
軟らかくきめ細かい肉質と上品なうま味で胃もたれしない和牛。静岡県内の指定農場において黒毛和種雌牛にこだわり、その特徴を引き出すオリジナル飼料と統一した管理のもとにじっくりと育てられる。「2年前に出合って、ひとめぼれしました。サッパリとした脂と肉のうま味がしっかりと感じられる赤身が魅力です」と岩崎総料理長は太鼓判を押す。