フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(29)丸千代山岡家 懐かしの昭和ラーメン

2014.02.03 419号 05面

 ◆昭和の香り漂うラーメンチェーン

 同社は、創業者の山岡社長が茨城県牛久市にて1号店をオープン(1988年)させたのが始まりで、その後、北関東から東北、北海道に進出。現在は札幌に本社を置き137店舗を展開する、れっきとした東証JASDAQの上場企業である。

 あいにく都内には1店舗しかないためご存じない方も多いと思うが、お店のイメージとしては「どさんこ」や「ラーメンとん太」、あるいはかつての「くるまやラーメン」など郊外型ロードサイドの店舗と似ており、何といっても懐かしい昭和の香りが漂うあの雰囲気、あの空気感が最大の特徴である。

 メニューは創業の原点である「醤油」を中心としながらも、「味噌」「塩」「特製味噌」「辛味噌」と良い意味で客を飽きさせないバランスが取れており、これにサイドメニューや季節メニュー、地域限定メニューなど、全店直営のメリットを生かした多すぎず少なすぎないバリエーションを揃えている。

 ◆時価総額は業界最小

 しかしながら、上場企業とはいえ時価総額は6億円台で、上場外食企業の中では最小、株価もここ1年は800円台のまま取引も少なく、投資家からは忘れられた存在になっている。これは、首都圏に店舗がないことに加え、ここ数年来、無配が続いている上に、上場外食企業の武器でもある株主優待についても特段、用意されていないこと、投資家向けIR対応に関しても消極的な姿勢などが要因ではないか。

 逆にみると、これらに対応していくことで取引と株価の回復は可能であり、特に、株主優待の導入は即効性のある対応策である。外食企業の株主は、食事券などの株主優待を期待して株を買う傾向が強く、常連客や毎回割引券を使う客などは、株主優待の導入によって株主にもなってもらうチャンスではないか。

 ◆社員独立型フランチャイズに活路あり

 業績面では、ここ3期(2011年1月期~2013年1月期)は、出店効果もあり増収(売上高79億円→89億円)だが、収益面は営業利益がほぼ半減(256百万円→132百万円)している。しかも、同じ外食の上場企業と比べても低収益体質が目立っている。やはり、全店直営という経営体制が重くなってきているのではないか。

 店舗数はすでに100店舗を超えているが、出店エリアは北海道から福岡県まで広がっており、これを直営で管理していくためのコストが年々増加していることが見て取れる。では、どうすべきなのか?

 すでに触れたが、同社は創業以来、直営出店を貫いてきており今すぐにこの体制を変えることは、さまざまな要因から困難であろうことは容易に想像できる。そうであれば、まずは幹部社員に店舗の経営を任せる「社員独立型フランチャイズ」から始めてみてはいかがか。

 勤続年数が長く現場にも精通し、気心も知れた幹部社員であれば独立するといっても、加盟店として会社の方針に沿った経営を行うはずであり、意欲と能力の高い社員ならば新たに複数店舗の展開も難しくはないであろう。

 これこそ、会社も独立志向の社員も、利用できる店舗が増える客も、三者ともにメリットのある方法ではないだろうか。

 ●フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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