外食史に残したいロングセラー探訪(91)いづう「鯖姿寿司」
◆熟成させサバの脂とうま味を引き出す 時間とともにうま味を醸す寿司
京都らしい寿司といえば、鯖寿司が有名だ。その代表格の店が、祇園にある「いづう」である。創業は、江戸時代である天明元年(1781年)。昔は、花街にある茶屋への出前がほとんどだった。茶屋は、「一見さんお断り」のため、気軽には食べられない味だったといえる。今では、持ち帰りだけでなく、店内でも食べられ、地元の人のみならず、観光客にも人気の京料理である。
●商品の発祥:鯖街道を通ってきた
京都では、家庭で「ハレの日」のごちそうとして鯖寿司を食べる風習があった。初めて商品化したのが、「いづう」の初代・いづみや卯兵衛氏。食材を吟味し、寿司職人の手で、プロの味わいに仕上げた。230年以上も昔のことである。
山に囲まれた京都。サバは、福井県若狭湾から、大ぶりで身質がしっかりとしたものが、鯖街道と呼ばれる道を通り、運ばれてきた。捕りたてのサバに、浜で塩をふり、鯖街道を通って、京都に着く頃には、いいあんばいになっていたという。
●商品の特徴:熟成させ脂を浮かせる
同店の鯖姿寿司は、日本近海で捕れたサバを使う。昆布は北海道産の真昆布、ご飯は滋賀県産のコメを使用。酢は、いづう専用の酸味が少なめでまろやかなもの。どれも一般では手に入りにくい食材という。
昔は、浜でサバに塩をしていたが、今は店内。鮮度のいいサバを職人の手で、塩と酢でしめる。「氷の冷蔵庫」で一晩熟成させ、寿司飯と昆布をあわせて完成。氷の冷蔵庫内は約18度C。やさしい冷気で冷え過ぎない。一般の冷蔵庫は、冷風でサバが乾燥し、温度が低くて熟成が進まないため使わない。熟成したサバは、脂が浮き出て、うま味が出、塩と酢と一層融合し、独特の風味を醸し出す。
●販売実績:店内2割 持ち帰り5割
鯖姿寿司以外にもメニューはあるが、ダントツの人気を誇るのが、鯖姿寿司。特に、サバの旬の秋には注文が増える。「小鯛の雀寿司」や、春は「京ちらし寿司」、夏は「鱧姿寿司」などの「四季名物」なども人気商品である。
店内でも食べられる鯖姿寿司だが、約半分が持ち帰り。出前が3割、店内2割という。「店内で握りたてのお寿司を食べるのもおいしいですが、お持ち帰りいただいて、少々お時間がたったものには違ったおいしさがあります。サバやご飯が少し硬くしまり、昆布のうま味が染み込んでいます。時間がつくるおいしさも格別です」と、若主人の佐々木勝悟さんは話す。
◆企業データ
店舗名=いづう/本部所在地=京都市東山区八坂新地清本町367/店舗数=本店の1店舗。商品は、京都の各百貨店で購入できる/事業内容=京寿司専門店。京都では、店で食べさせない寿司屋が最高級とされていたが、時代のニーズにあわせ、40年くらい前から店内で食べられるようになった。鯖姿寿司の賞味期限は2日間。