フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(39)すかいらーく ようやく復活、再上場を果たす

2015.01.05 430号 14面

 昨年10月9日、すかいらーくは約8年ぶりに東証1部に再上場し、時価総額は約2200億円と外食首位の日本マクドナルドホールディングスの約3400億円に次ぐ規模となり、投資家の期待感が感じられる再スタートとなりました。1990年代後半~2000年代前半の業績不振から、野村證券系の投資ファンドに買収され上場廃止となり、その後、2011年には米系の投資ファンドに転売されるという経験を経て、ようやく復活してきました。

 実際、足元の業績面も、既存店売上高は5四半期連続で100%を超え、特に客単価が昨年1月から10月までの平均で103.2%となるなど、業績回復に勢いのあることが数字からも見て取れます。確かに、近所の「ガスト」に入っても、不振だった頃と比べるとサービスレベルも上がり商品力も向上していることが分かります。

 その一方、成長戦略の柱である出店計画については、今後3年間で210店と、全国に約3000店舗以上のチェーン規模にしてはやや慎重な計画となっています。

 ■出店よりリニューアル優先

 それもそのはず。すかいらーくが「前回」上場していた頃は、毎年200~300の攻勢をかけて他社を圧倒していましたが、同時に「毎日どこかの店が閉鎖されていた」と谷社長が語っているように、出店と同じ規模で店を閉めていたわけですから、それだけ足元の業績が追いついていなかった、つまり業態や店舗の実力が落ちていたということです。

 この反省を踏まえて、新規出店よりも既存店のリニューアルに注力していく方針です。言い換えると、今後は既存1店舗当たりの売上高を伸ばすことで成長するということ。これは、外食業界ではもはや従来のように既存店の不振を新規出店で補い、業績を拡大させるビジネスモデルが通用しなくなったことも影響していると思います。ゼンショー(すき家)やサイゼリヤの成長が止まったことからも理解できます。

 ■すべてをリニューアル

 リニューアルは、店舗の内外装にとどまらず、コンセプトから商品(メニュー)、サービス、スタッフの意識まで含め、まさに全てをニューアルする計画と意気込みで取り組んでいます。

 例えば、店舗業務については、「現場力の強化」をテーマに、従来はすべて本部からの指示に従っていたものを、店舗の課題に関しては店長とアルバイトによる自発的な対策を考えさせるように変えたほか、現場ですぐにお客さまの声を共有し、顧客満足度も店舗でチェックできるようにしました。勢いのある外食チェーンであれば、とっくに取り組んでいることではあるのですが、ようやく当たり前のことを当たり前に取り組む体制ができたということなのでしょう。

 さらに野心的な取り組みとして、従来の日本人のファミレス観を覆すべく「ネクスト(次の)ガスト」と称し、次世代のファミレスを構築すべく新たなプロジェクトが動いており、プロジェクト推進のため外部から幹部人材を次々に登用しています。これまでは生え抜き社員がほとんどであった純血主義の体質からは想像ができません。そこまでして取り組む根底には、「これからの差別化は人の力で実現するしか他にない」との強い危機感があります。

 ■差別化は人の力で

 谷社長は「ブランドを高めるには従業員の意識が大事」と話していますが、これは飲食店の再生には店舗のリニューアルだけではなく、オペレーション(仕組み)やスタッフのやる気、気持ちといったソフト面まで変わらないとお客さまを満足させられない事実からもうなずけます。

 ファミレスは少なくとも約1時間はお客さまがお店に滞在しているため、お客さまに満足いただくためのチャンスが多いはずです。このチャンスを生かせるか否かは、現場スタッフも会社の大きな変化についていき、一人ひとりが変わっていけるかにかかっています。それは取りも直さず、すかいらーくそのものの再生にも直結しているのではないでしょうか。

 ◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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