宅配ピザ特集:トップインタビュー=ヒガ・インダストリー・比嘉社長
‐‐宅配ピザ業界をとりまく概況について。
比嘉 外食から内食へのシフトが進む中で、宅配業界は比較的、不況の影響が少なかったのではと思う。不況ゆえに外食の機会が減り、その分、宅配のニーズが高まったといえる。しかし、昨年あたりから経済情勢も一層厳しさを増し、失業率も最悪を更新しつづける中で、宅配業界も、じわりじわりと不況の影響を強く受けるようになりはじめたことは否定できない。特に、昨年前半は厳しい状況に置かれるようになった。
不況の影響については、タイムラグがあったと思われる。外食業界は、不況の影響をいち早く受けた。宅配業界には遅れて影響が及んでいる。消費環境を取り巻く情勢は依然として冷え切っており、厳しい。
具体的な数字を見ると、昨年の6~7月が最も厳しかった。しかし、最悪な状況はこの時期で底を打ったと見ている。8~10月は、数字上では改善の兆しが現れてきている。まだまだ本調子へ回復したわけではないが、6~7月と比較すると、かなり状況は良い方向へ向いている。6~7月は既存店ベースで一〇%以上は落ち込んだ。現在は、既存店ベースで五%弱程度の落ち込みに収まっている。
‐‐現在の浮き沈みは景気の影響が大きいのか。
比嘉 数字の推移を見る限りでは、景気の影響が大きいと考えざるをえない。ただ、景気のバロメーターでみると、今後は、徐々にではあるが上向いていくと考えている。はっきりと言えることは、昨年よりは良い状況にあるということだ。もちろん、まだまだ、十分とは言えないが。
‐‐今後の展開について。
比嘉 ディスカウントチケットの配布が大きな戦略の一つとして挙げられる。ただし、一律のディスカウントではない。「セレクティッド・ディスカウント」と、私は位置付けている。テークアウトの場合のみ割引するなど、ある条件のもとでのみディスカウントを実施。あくまでカンフル剤投与的な戦略として、ディスカウントを行っている。
ディスカウントが長引けば当然利益にも影響が及ぶ。ディスカウントを主要戦略とは位置付けてない。何分この不況下、需要を引き出すきっかけをつくり出していくためには、何か手を打たなければならない。その打開策がディスカウントチケットの配布なのだ。半額にするなどの極端な戦略とは、当社は一線を画している。ディスカウントは半年ぐらいで終了し、他の打開策を講じる方針である。
‐‐ディスカウントの効果は。
比嘉 当初は、それなりな効果を挙げた。が、徐々にその効果は薄れている。数字上でもそれは現れている。ディスカウントを長びかせると、その価格が通常価格と思われるようになり、効果が薄れる。だからディスカウントは一定期間のみ行うべきだと考えている。
‐‐新規出店計画について。
比嘉 新規出店は、しばらくは考えていない。景気の先行きを読んで、タイミングを見計らっているところだ。
また、メンテナンスプログラムにそって、店舗のハード面の維持は怠りなく実行している。
‐‐ヒーティングプレートの導入について。
比嘉 増やしていく方針。かなりハードな扱いにも耐えうるよう、改良を重ねているが、ドラスティックな改良は必要ないだろう。
‐‐今後の取り組みについて。
比嘉 宅配ピザはHMRの一つととらえられる。したがって、ピザ以外の食材を提供していく可能性も生じる。また、高齢者社会の到来によって、そのような社会の新しいニーズを探ることも必要。
業界を俯瞰(ふかん)して言えることは、経済状況の改善に従い、業界の動向にも新しい動きが出てくるということだ。米国「ドミノ・ピザ」も好景気に乗って業績を大幅に回復し、以前にも増して好調に展開している。日本も景気回復までは、スタンバイの姿勢で足元を固めておくのが最良の策ではないかと考えている。
◆アーネスト・M・ヒガ=昭和27年ハワイ・ホノルル生まれの日系三世。ペンシルベニア大学で理学士号取得、コロンビア大学経営大学院で経営管理学修士号取得後、同社の前身である(株)ワイ・ヒガコーポレーション入社。医療機器、木材などの輸入事業に携わる。昭和60年米国「ドミノ・ピザ」チェーンとライセンス契約。日本初のホームデリバリーピザ店をオープン。宅配ピザブームの火付け役となる。