施設ルポ:横浜ポルタ・リトルイタリー=トラットリア「ダ・マルコ」
トラットリア「ダ・マルコ」は、世界パスタチャンピオンの創作料理が食べられる店として、横浜駅東口「ポルタ」地下1階に9月22日から登場した。「トラットリア」とは、「食堂」の意。だれでも気軽にリーズナブルな値段で、伝統的なイタリア料理をベースにした創作料理が楽しめるとあって、昼時にはOLを中心に長蛇の列ができる。年間3000種類にも及ぶ食材から、旬のものを取り上げ、毎日パスタメニューが替わるのが、楽しみの一つだ。
イタリアの温暖な気候を思わせる黄色を基調にした店内。ダークブラウンの木目がアクセントとなって、全体に落ち着いた雰囲気を醸し出している。マルコシェフが育った北イタリアの家をイメージした、アットホームな空間だ。
世界パスタチャンピオンの創作料理とあって、メニューの中心は手打ちパスタ。乾麺に比べ、食感はないものの、弾力があり、ソースがからまりやすいのが特徴だ。
ダ・マルコでは、一日に出る八〇〇食のパスタのうち、ショートパスタは店内で製造。イタリア直輸入のパスタマシンで、細かな細工まで入った一五〇~三〇〇食のさまざまなパスタが作られる。また、店内で補いきれないロングパスタは、ダ・マルコ独自のレシピで外注している。
マルコシェフが、トラットリア=食堂にこだわったのは、日本の身近な食材で、おいしいイタリア料理を、リーズナブルに食べてもらいたいという願いから。
素材に最も気を遣い、店に立つ時は、必ず自ら市場に出掛ける。野菜、魚介類一つ一つを見て回り、納得のいくものだけを購入する。
だからこそ、毎日パスタメニューを替える。年間三〇〇〇種類に及ぶ食材から、最も旬の食材を厳選し、提供しようというのだ。
ダ・マルコでは、オリジナルワイン選定のため、数人のチームで直接イタリアのワイナリーを訪ね、品種、製法、保存、配送にいたるまで入念にチェックした。その後、赤ワインと白ワイン各一種について、「デコルディ」社と提携を結ぶ。どんな料理にも合い、軽く飲みやすい味わい。値段は一八〇〇円。
●シェフの一言
「おいしい料理を出してくれと言われた時に、『食材がないから料理ができない』ではシェフではないよ」
マルコ・パオーロ・モリナーリシェフの口癖だ。
たとえ、高級食材がなくても、客をびっくりさせられるような料理を作れなくては、本物のシェフとは呼べないというのだ。トマトとニンニクしかなくても、いろいろなパスタを組み合わせたり、味付けを変えたり、創意工夫をしなくてはいけない。
世界各地を周り、それぞれの風土で培われた素材を使い、イタリア料理の可能性に賭けたシェフならではの一言だ。
●シェフの愛用食材 サーレグロッソ
「ミネラルが多くて、素材のうまみを引き立ててくれるよ」とシェフが手放せない食材は、岩塩。特に、粗い結晶がきれいな「サーレグロッソ」は味に丸みがある。一般にシチリア産の岩塩はマグネシウム、カルシウム、カリウムなど、ミネラルを豊富に含んで、健康にも良いといわれる。素材のうまみを引き出すので、味付けだけではなく、下ごしらえにも最適だ。
●世界パスタチャンピオン
オーナーシェフ・マルコ氏が優勝したという「世界パスタコンクール」は、一〇年に一度、ナポリで開催される。
パスタの本場だけに、似たようなコンクールは数多い。しかし、このコンクールは、四五〇万人もの出場者がチャンピオンの座を競う伝統ある大規模なもの。マルコシェフはそこでチャンピオンとして、二〇〇五年までの一〇年間、そのタイトルが保持される。
●オープン記念ランチ
素材のうまみを生かした手打ちパスタ(毎日メニューが替わる)は、「手長エビのクリームソース」(カリッと素揚げにした手長エビが、香ばしい香りを引き立てる。しっかり揚げてあるので、そのまま食べることもできる=写真㊤)と「手打ちのイカスミパスタ ズワイ蟹ソース」(イカスミのパスタにカニの赤が印象的なメニュー。魚介の深い味わいが、手打ち麺にしっかりなじむ=写真㊦)。
コースは「Aコース=前菜・パスタ・コーヒー」(一三〇〇円)、「Bコース=前菜・パスタ・デザート・コーヒー」(一六〇〇円)、「Cコース=前菜・パスタ二種・デザート・コーヒー」(二五〇〇円)の三種。いずれも好きなパスタが選べる。
◇店舗メモ
◆トラットリア「ダ・マルコ」/所在地=神奈川県横浜市西区高島二‐一六、ポルタ地下一階、045・444・2935/営業時間=午前11時~午後11時(無休)/席数=八三席/客単価=一八〇〇円/一日来店客数=七〇〇~八〇〇人
*
◆マルコ・パオーロ・モリナーリ氏/一九六六年イタリア北部ノヴァーラ県のイタリア伝統料理を継承するモリナーリ家五代目として誕生。イタリア、フランスなどの高級レストランで修業。九〇年イタリア・ストレーザでの「金のフライパン」コンクールで優勝。九五年ナポリの世界パスタコンクールで優勝。九七年東京・西麻布「リストランテ・ムゼオ」をオープン。現在同店料理長。九八年「イル・シェフ」誌の「20世紀のベストシェフ5」に。