外食産業活性化への提言 東京小僧寿し・山本英樹社長
かつてない大不況ですが、しかし、結論からいいますと、この不況下で出店については以前に比べ物件の取得が容易になったこと、また、人材の確保も容易になったという点から、むしろトータル的にみれば、大いにチャンスがあると考えているのです。
私どもは平成元年から3年にかけて、いわゆるバブル経済のころに一店舗当たりの売上高アップを目指して、不振店のスクラップおよび店舗の移動などをおこないまして、いわば早くからリストラを推進してきたわけでして、不況だからといって慌てて対策を立てていることは何もないわけです。
店舗のリストラにおきましては、トータルでみれば出店数は減少したのですが、しかし、この間に一店舗当たりの平均売上高は約三〇%も増加し、収益力も大幅に向上するという好結果であったわけです。それ以降の出店においても、立地本位で確実に売上げが確保できる店づくりということで、当社なりの拡大路線をとってきているわけであるのです。
出店ペースは年間一五~二〇店前後ですが、九四年度も一五店くらいは出店していきたいと考えております。
店舗の立地戦略は今までと変わりなく、顧客の中心である主婦層が集客できる立地、つまり住宅地区での出店ということで、基本的には郊外ロードサイドでの出店戦略です。現在の出店数は東京、神奈川、千葉、埼玉などで約三〇〇店ですが、しかし、出店は確実でも、やはり長引く不況による消費の冷え込みには、私どもにも全く影響がないということではなく、深刻に受け止めていることでもあるのです。
私どものすし商品は持ち帰りの、いわば“中食市場”ですから、そう不況の影響を受けにくい面があるのですが、ここにきて消費者の購買意欲が大きく減速してきているという状況もあり、シビアに不況を実感しています。
冷夏は米の作柄にも多大な影響を与え、全国の作況指数が七五という異常事態を引き起こしました。このため米の値上がりで原材料コストが六~一〇%前後上昇したわけですが、これはそのまま価格にスライドするというわけにはいきませんので、これらコストを吸収するには企業努力でカバーしていくしか手はないわけです。ですが、大変にラッキーなことには他の食材、たとえばマグロ、イクラ、エビなどの魚介類が値下げ傾向にあり、その面でコスト上昇の半分くらいは吸収できるものと期待としているわけです。
いずれにしても消費の低迷は否めず、業界では主流的な考えとして「低価格志向」を強めていますが、しかし、私どもは現状価格を維持しながら質の向上を図り、消費者の真の飲食ニーズに対応していきたいと考えております。
このほか、今後の重点課題として、既存店の営業時間の延長による粗利の拡大、マネージメントの強化、新業態の回転ずしと持ち帰り弁当の出店も活発化していく方針で、これはすでに前者が二店、後者が一店営業しており、九四年度からの新事業としてチェーン化していける自信を深めているところです。