この素材でこの1品 中国料理・デザートメニュー「山粉圓」(さんふんえん)
中国料理のデザートは西洋料理のデザートのような概念が、そのまま当てはまるわけではない。デザート‐点心としてしまえば、そのバリエーションは無限といっていいほどある。ホテル内での中国料理分野をみるとフランス料理と同様に厨房内の分業体制が明確になっている。さらに料理と点心(デザート)の関係をみると全体の料理の構成の脇を固めるといった役割を点心が果たすということで料理と点心のバランスをとることを重視している。
とくにホテル内のレストランでは、オーソドックスなものが好まれる傾向にある。そのため現実に求められている商品をどれだけ差別化した形で打ち出していくかが重要になってくるわけだ。
たとえば、一口に杏仁豆腐といっても、その製法は料理人によって異なる。オーソドックスな商品であっても、そこには各料理人独自の「匙かげん」が施されているのである。
素材のバラエティの豊かさも中国料理の特徴の一つだが、これからはフランス料理の素材、レシピを摂り入れるなど他分野とクロスオーバーしたデザートを積極的に考える必要があるようだ。
今回は、知る人ぞ知る、水を含むと膨張して透明感のある軟体物に化けるデザートに向きそうな素材「山粉圓」を紹介する。アイデアをくすぐる挑戦したくなる材料だ。
山粉圓という名称は台湾の材料問屋で呼んでいるそのままのもの。植物の実か種子と想像されるが、中国料理関係の文献や辞書には出ていない珍しいもの。タイ産、台湾産がある。長さ一・五㍉前後の極小物と二・五㍉前後のやや大粒の二種類がある。
どちらも表面は黒い皮に覆われ、中は白く、やや細長で扁平。水の中に入れると、すぐぬめりが出て膨らみ始め、数分間で一〇倍前後の大きさになる。タピオカのような感じだが、芯が黒いのでカエルの卵のように見える。
味は特になく無臭。長く水につけておくとだらけるのでザルに上げておく。かなりの時間、形状が保たれる。
お湯で一~二分煮立てると早く膨張する。スープの浮き実にするなど使いやすい素材に見えるがデザート用におもしろい。シロップ、はちみつで甘味をつけ、桂花、椰子、白木茸、ゆり根などを入れ、老酒でコクを出す、といった方法はどうだろう。
東京卸値は一㎏二五〇〇円前後。
協力‐㈱中華・高橋
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