高度成長する惣菜・デリ 調理の省力化ニーズに新サービス展開
《細かい顧客ニーズをさぐる》 地域住民の日々の食生活を担うスーパーは、これまで生鮮三品とグロサリーを核としたマーチャンダイジングを進めてきた。しかし、有職主婦の増加や調理の省力化志向が高まる中で、惣菜・デリ分野がもう一つの大きな核となりつつある。スーパー各社では“第四の生鮮品”として品揃え強化するとともに、できたてのおいしさを演出するために店内調理にも力を入れている。既存のスーパーが単に販売商品としての惣菜・デリに取り組んでいる一方で、主婦の調理省力化ニーズに対応した「キッチンサービスコーナー」を展開しているのが、サミット㈱である。
鮮魚を切り身にする、精肉を挽き肉にする、野菜をカットする、果物を搾汁する、といった調理・加工を無料でサービスするというものだ。またパン粉をつけ加工(一コ二〇~四〇円)、揚げ物・フライ加工(一コ一五〇円より)など有料によるサービスも行っている。
同社は約十年前、惣菜のインストア加工を止めた。当時は惣菜の位置づけ自体“間に合わせ”的なイメージが強く、主婦にとって購買することに後ろめたさがあった。そのため、スーパーの食品売場における位置付けも当然低くなっていた。店内調理によりできたて感を演出しても、商品の動きが鈍ければ、冷めておいしくない惣菜ばかりが陳列され売行きも悪くなる。こうした悪循環では売上げ拡大も期待できず、売場として成り立たないため、インストア加工体制を解消し、仕入商品のみの販売となった。
ところが、七〇年代八〇年代と急伸長した外食市場が九〇年前後から安定期に入り、代わって内食でもなく外食でもない“中食マーケット”がにわかに拡大し、惣菜・デリに新たなスポットが当りはじめた。また、同社の「スーパーのセルフサービスでは販売できない商品がある」という認識と、「アフターサービスもスーパーの補完機能として備えるべきではないか」という考えから、「キッチンサービスコーナー」の導入に着手したわけである。
主婦の調理省力化ニーズの波は、セルフ方式で販売する生鮮品にまで及んでおり、鮮魚の切り身やカット野菜等の規格品が人気を博している。しかし、顧客が本当に望んでいる規格が何なのか。そうした細かい顧客ニーズを探る意味でも、「キッチンサービスコーナー」は重要な意義がある。
《高品質のできたて惣菜併設》 同サービスコーナーは89年8月、西永福店に初登場して以来、和光店(90年10月)、中野島店(91年3月)、戸田公園駅前店(91年11月)、そして今年10月にオープンした瑞江店の合計で五店舗になる。各店とも一日平均七〇件のオーダーがある。有料サービスは日商五〇〇〇円程度。さらに、90年の和光店からは同サービスコーナーに併設して、店内調理のできたて惣菜の売場を付帯させた。十年前に発展解消したスーパー惣菜の再チャレンジである。
最新の瑞江店の場合、「キッチンサービスコーナー」の受付カウンターに並んで、六尺ショーケース一〇台分の売場を設置した。また、「ダイナー91」(一〇〇席)のイートインスペースも併設している。店内調理スペースは、揚げ物、寿司、焼き物、精肉・鮮魚加工の四つに区分された衛生管理の行き届いた調理・加工場である。人員は合計一八名、通常、朝八時から開店までに、その日の10時から昼頃までに販売する惣菜を仕込む。開店してからは「キッチンサービスコーナー」のオーダーに対応し、今度は夕方から閉店までに販売する惣菜を午後3時頃までに仕込む。そして3時以降はまた同サービスコーナーのオーダーに対応する、という具合にインストア加工の効率化を図っている。
惣菜の商品構成は大きく分けて寿司(売上高ウエート四〇%)、惣菜類(同六〇%)。惣菜類は揚げ物、焼き物、蒸し物、米飯・麺類、弁当類(仕入商品)など。常時約一〇〇アイテムを品揃えしている。
同店の惣菜の特徴は何と言っても「素材へのこだわりと高品質」。従来のスーパー惣菜が素材や油にあまり気を遣っておらず、生鮮品の残り物処理といった位置付けにあったが、同社の場合、生鮮コーナーで販売されているのと同じグレードのものを使用。また、揚げ物はコーン油、パーム油、なたね油をブレンドした高品質の油を使い、しかも頻繁に取り替えている。寿司、米飯類に使う米についても、コシヒカリ六〇%、ササニシキ四〇%のブレンド米を使用するなど、かなりのこだわりだ。
《セルフと対面方式を連動》 同社の91年度総売上高約九三六億円に対して、生鮮品が四五~五〇%、惣菜が六%(弁当類、洋風デリカ等を含めると一〇%前後)という数字からも、同社のマーチャンダイジングにおいて、惣菜・デリはかなり高い位置付けにある。
二一世紀に向けて安定成長が約束された中食市場をにらみ、同社は①半調理品が買える、②調理済食品が買える、③調理・加工をしてくれる、という三つの特徴を訴求し、消費者の幅広いニーズにもれなく対応する構えである。今後は新出店のみならず、可能なかぎり既存店にもこのシステムを導入したいとしている。