シーズン迎えた名古屋地区の「おせち」 和風が7~8割占める
11月の声とともにおせちのシーズンがやってきた。ホテル・飲食店、百貨店では準備を終え、今月上旬から予約の受付けを開始している。名古屋の街に不況風が吹いているが、各店ともおせちに寄せる期待は厚い。
おせちには和、洋、中華風があるが、やはり和風が断然強い。名古屋市内の百貨店でみると一時期洋風が伸びたこともあったが、三、四年前から減少し、いまでは純和風と和洋折衷を合わせて七~八割を占めている。しかし、その和風の内容も時代とともに変わってきた。
毎年、百貨店と自社で二〇〇〇個を販売する料理処円庄(㈱円庄、中区錦三‐一六)は、年配夫婦で楽しむ一段初笑い二万四〇〇〇円、家族で楽しむ四、五人用の二段福がさね二万五〇〇〇円、来客を考えた五、六人用の三段夢合わせ三万三〇〇〇円の三タイプを用意した。家族構成と家族を取り巻く場面を想定したのが特徴だ。
名古屋観光ホテル(中区錦一‐一九)では、三年前から和、洋、中華風をそれぞれ一段づつ組み合わせた三段重三万三〇〇〇円を作ってから業績を伸ばした。おせちを担当する佐藤一夫部長は「お年寄りから子供まで楽しめるところが良いのでしょう。人気があります」と説明している。
核家族のニーズに合わせて今年ミニおせち二万円を百貨店販売の主力にしたのはホテルナゴヤキャッスル(西区桶の口町三‐一九)である。料理分量は二、三人用だ。同ホテルでは和風二段三万二〇〇〇円、洋風二段二万七〇〇〇円、中国風二段同を用意しているが、和風とこのミニおせちが中心になっていく見込み。
おせちの単価は据え置きが多い。名古屋市で有名ホテル・飲食店からおせちを集めて二億円強というダントツの売上げを誇る松坂屋本店(中区栄三‐一六)では、一〇万円のおせちを用意しているとはいうものの中心価格は二万三〇〇〇~二万四〇〇〇円で昨年並み。
しかし、過去四、五年の間二ケタで伸び続けてきた実績を踏まえて同百貨店はおせちの販売額に対して強気。食品部では思い切って二ケタの伸びを狙いたいとしている。円庄でも、販売数量二〇〇〇個は“めいっぱい”として、単価を一五~二〇%上げた。「共稼ぎ夫婦が増えている中、お正月くらいはちょっと贅沢をしてくれるはず」(吉田マネージャー)という読みがあるからだ。大手の販売店に頼らず、店のファンを対象にしておせちを販売する横浜楼なども、作れる上限約一〇〇個をメドにして、販売に力を入れている。
とはいうものの、フタを開けてみなければわからないというのが、今年のおせち事情。強気、期待の裏に微かな不安があることも隠せない。おせちの予約受付けは、各飲食店、百貨店とも11月上旬から始まった。