トップインタビュー 全日本司厨士協会会長代行理事・出口 四郎氏
‐‐全日本司厨士協会は、東京の総本部を中心に全国の各地に地方本部、県本部などがあって各地で積極的な活動を展開してコックさんの地位とか料理技術のレベルアップ、若いコックさんの育成に大きな成果をあげているようですが、まず、協会の組織の現状についてお話し下さい。
出口 総本部を中心に一三の地方本部。一道一都四五県に、それぞれ県本部があって、その下に八四の支部があり会員数は約二万五〇〇〇人です。
‐‐会員の多くはフランス料理の方ですか。
出口 大半の人はフランス料理ですが最近はイタリア料理、スペイン料理、地中海料理の会員が増えており、いわゆる西洋料理全般にわたっております。
‐‐会員が二万五〇〇〇人といえば、大組織ですね。
出口 ええ、しかし、まだまだ、会員を増やさなければなりません。それには協会の組織の強化と事業内容も、もっとキメの細かい活動を展開する必要があると思います。
協会の強化策は、いろいろありますが、まず、将来のために、いかにして若い司厨士を育てるか、若い司厨士の育成に重点をおくことです。その一環として今年の5月にカナダのトロントで開催される世界料理コンクールには二三歳以下の若いコックさんを参加させる予定です。若いコックさんを世界に送り世界の場で、世界の料理の流れ、どんな料理がつくられているのか勉強させ、料理人としての自信をつけさせたい。昨年、ドイツで開催された世界料理オリンピックに三〇カ国が参加しましたが、いずれの国も若い人が中心になっていました。最近は世界各国とも若い司厨士の育成に力を入れているようです。
‐‐最近のフランス料理をみると、かつての華やかさがなくなってきているようですが。
出口 たしかに、昨今のフランス料理は、かげりがみえています。その原因は料理の国際化の中にあってニーズの多様化などいろいろとありますが世界会議に出席して気づいたことは、日本に限らず世界的に健康志向が強まり料理のポーションが各国とも極端に小さくなっていることです。なぜ、ポーションが小さくなっているかというとポーションが大きければ、蛋白、脂肪、カロリーなどがそれだけ高いわけです。ポーションを小さくすれば蛋白も脂肪もカロリーも少なく健康的であるといえるわけです。とくにバターや卵、生クリームをふんだんに使った濃厚なソースは、かげがうすくなっています。これは日本だけではなく世界的な傾向のようです。料理人がおいしいものをつくるのは当然ですが、ただ、味だけに走ったおいしい料理ばかり追求してはいけないと思います。これからの料理はおいしさの中に体にいいもの、健康にいい料理をつくることが大切なことだと思います。
‐‐すでに厚生省から料理関係の各団体に健康にいい料理づくりをするよう指示があったようですが。
出口 ええ、指示がきております。これからの料理は過去の既成概念にとらわれることなく、健康志向に合った料理を子供のように天真爛漫で自由に、しかも、だいたんな発想で創造すべきだと思います。とくに、これからの時代の若いコックさんは、何んでもチャレンジしようという積極的な行動が必要だと思いますね。それには協会の役員として新しいシステムづくりをしようと思っております。
‐‐最近のフランス料理界は、かなり深刻の度合を強めているようですが。
出口 さきほどいったように健康志向という大きな流れの中にあって、マスコミが肉は悪玉で魚が善玉であるかのように報道していることもフランス料理にとってはマイナスです。それと、ナイフ、フォークの持ち方とかスープの飲み方などマナーがめんどうで若い人に敬遠されているようです。
‐‐フランス料理といえば、いまだに、高いというイメージが強いようですが。
出口 バブルが崩壊した一昨年の秋からホテルにしても町のレストランにしても平均して価格を下げました。たとえば二万円のディナーが一万五千円、一万五千円のものが一万円というように……。まだ一部でフランス料理という名のもとに高い値段のところもあるようですが……。
‐‐厳密にいえば「フランス風料理」を「フランス料理」といって高い値段をとっていた。やはりフランス料理という以上、素材も食材もフランス産のものを使っていて高い値段をとるということであれば、お客も納得すると思いますね。
出口 これからは、素材や食材が国産のものであれば、やはり「フランス風」のこうした料理であるということをはっきりうたうべきです。どこの国の料理なのかわからないものをフランス料理だとかイタリア料理だといって高い値段をとることは、景気のいいときはともかくとして、これからはむずかしくなると思います。 (文責・吉原)