居酒屋チェーンの生き残り戦略 バブルがハジケてどうするか(中)

1992.04.20 2号 5面

チェーンシステムというと、FC(フランチャイズチェーンシステム)方式が広く導入されてきており、居酒屋ビジネスでもこの方式が積極的に取り入れられてきている。FCシステムは土地や建物(店舗)、人材など他人資本を活用するビジネス形態であるので、短期の間に店舗の輪を広げるには最善のシステムなのである。もちろん、他人資本を活用するシステムであるので、チェーンの加盟店(フランチャイジー)に対し、それなりの収益を保証しなければならない。つまり、儲かる「ノウハウ」や「システム」を提供するということである。しかし、同業他社間での競合が激化してきていることや原材料、物流コストの上昇、従業員確保の問題および人件コストの上昇などといった背景から、FCシステムによるチェーンビジネスも厳しい状況に立たされてきている。

消費社会の成熟化で自動車も家電製品も売れなくなってきたとマスメディアが書きたてている。モノが売れなくなってしまったのではなく、売れゆきの幅が小さくなり、鈍くなってしまったということであろう。

当たり前のことである。マスプロ、マスセールスが進んで市場に商品があふれ出てくれば、いくら物欲旺盛な消費社会でも、やがては胃袋も萎えてくる。無限大に消費が拡大していくはずもない。市場が飽和状態になるということである。

しかも、輸出の面でも状況が厳しくなってきている。輸出における常勝、独り勝ちの日本に世界の目が年々厳しくなってきているからである。米国との「構造協議」はその象徴的なものであるが、「いいものを安く売って、なぜ悪い」という独りよがりの考えは、もはや通用しなくなってきている。

東西の対立構図がなくなって、世界は一つになっている。世界の中の日本。いつまでも特殊国家ニッポンではなく、世界秩序の中、世界経済のフレームの中で協調し、連携しあっていかなくてはならない時代になってきている。

輸出がままならなくなってきている面、内需、すなわち国内消費を拡大していかなくてはならない。日米構造協議のシナリオによると、西暦二〇〇〇年までに四〇〇兆円強の財政投資をしなくてはならない。

社会が成熟し、消費が頭打ちになってきているというのに矛盾のある話であるが、公共投資による波及効果によって、国内の消費を喚起していこうという狙いである。話が大きくなってしまったが、すでに内外共に日本の産業、経済事情は厳しい状況に突入しているのである。

バブル経済の破綻で産業界は大ゆれであるが、バブルは文字どおりの“うたかた”で、所詮は消滅する性格のものであったわけで、特別におどろくことはない。

認識しなければならないことは、日本経済の底流で構造的な変化が生じてきているということである。経済活動ばかりではない。地球的規模での環境問題もある。つまり、拡大生産、拡大消費を促進していくことが困難な状況になってきている、ということである。チェーンビジネスも、そのフレームの中にある。前述したように、種々コストの上昇ほか、出店コストも上昇の途を辿ってきており、いくらFC展開といっても量的な拡大には限界がある。

量から質の時代、拡大主義から適正規模の維持へ、体力、体質の強化へとチェーンビジネスのあり方も、大きく政策転換が求められてきているのである。

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