世界の人気食材 「サフラン」 高値・少量でも威力、海の幸やコメ料理にもマッチ

1996.10.07 112号 20面

サフランの原産地はギリシャから小アジアにかけて。紀元前から栽培されていた歴史の古いスパイスである。特に古代ギリシャではローヤルカラーとして色素が珍重され、偽物を売った者は火あぶりの極刑に処せられた。

ギリシャ・ローマ時代から超高価で貴族たちのぜいたくな趣向として劇場や公会堂の床にサフランを撒いて芳香を楽しんだり、サフラン風呂にも利用されていた。

また西欧では、漢方と同じ使用法で女性の鎮静剤や通経剤とされ、中国では養血、めまいを始め、気悶不散によいとされていた。イギリスではサフラン茶、サフランケーキなどに愛用された記録もみられる。

現在サフランの主産地はスペイン、トルコ、インドのカシミール地方など。栽培は排水の良いことが条件。9月中~下旬にかけて球を植え込むと11月には美しい紫色の花が咲く。

一般的に夏の高温期に休眠し、秋冷とともに発育し開花。そして越冬し5月に入ると地上部は枯れ、新しい球根が母球の上に数個つく。気候の温暖なスペインのアンダルシア地方が大産地となっている。

一つの花に三本の長い赤い雌しべがつく。これを手でつみとって乾燥させたのがスパイスのサフランである。

スパイスのサフランを一〇〇g得ようとしたら一万五〇〇〇本以上の花が必要となる。集めた雌しべは陰干しするか、摂氏四〇度で三時間ぐらい乾燥機にかけて製品化する。収穫量が少なく、あらゆるスパイスの中で最高の価格となるのも当然といえよう。

サフランの特色として、水溶性が強く、輝くような黄金色となる。さらに独特の香りとほろ苦さもみられる。ほんのひとつまみ入れるだけで鮮やかな色となる。

この成分はクロチン(色素)、サフラナール(芳香性)、ピクロクロチン(苦味配糖体)、その他。クロチンはカロチノイド色素の一種であるが、二〇万倍の水に対しても黄色を呈するほど、効力の強い色素である。

品質は濃紅色で芳香の高い物が良品で、花柱の下部の黄色部分の多い物、花粉の入った物は低級品となる。高価なため増量剤の入った不良品も出回っている。

原産地のスペインや地中海沿岸国では、サフランは欠かすことができない食材である。

スペインの有名な炊き込みご飯のパエリアはコメ五〇〇gに対してサフランは小さじ一が基本。鶏肉、イカ、エビ、ハマグリ、玉ネギ、ニンニク、ブイヨン、オリーブなどを加えて炊く。

ミラノでは、コメにサフランだけのサフランライス、これにパルメザンチーズをかける。フランスの代表はブイヤベース。タイ、メバル、オコゼ、ホウボウ、アンコウなどの魚介類をサフランで味つけしてスープとする。

インドのサフランライスはケサル・チャワルと呼ぶが、コメ四〇〇gに対しサフランは小さじ一・五。これにギー、シナモン、玉ネギなど。サフランの使用量が多く、見事な黄金色の料理となる。この上に鶏カレーをかける。

そのほかサフランはチーズ、バター、練り菓子、砂糖菓子などの色付けにも用いられる。しかし、使いすぎると薬臭がするので要注意。特にコメ料理や海の幸料理とマッチする。

漢方薬ではサフランを〓夫藍とも番紅花とも書くが養血、頭痛、補血、めまい、麻疹によいとして尊重しているが極めて高価である。日本でも漢方薬のイメージが高かったが最近は地中海食材として注目度が高まってきた。

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