で・き・る現場監督:「旨いとんかつまるやま」門田店・佐藤豊一郎店長
平均月商は一一〇〇万円。店長就任から右肩上がりで業績を伸ばしている。とんかつブームが追い風とはいえ、ここ一年間、前年同月比一一〇%を維持しているのは立派である。
「働く環境づくりがうまくいっているからだと思います。気持ちよく働ければ接客もはつらつとし、自然と思いやりのあるサービスが生まれてくる。それが常連客づくりにつながっているのでは」
働く環境のよさは、従業員の固定率を見れば明らか。入れ替わりの多かった以前に比べ、いまは学生を除くパートさん一四人のほとんどが勤続二年以上だという。
「従業員の固定化は店舗の強みですね。仲間意識が生まれ一丸となって取り組みやすい。ローテーションも融通が効きますし」
単なる仲間意識はだらけの原因となる。佐藤店長はそれをどうやって向上心に仕向けているのか。
「注意は直接本人にいわず遠回しに朝礼などでいう。長所は直接ほめる。これを根気よく繰り返すしかありません。後は自らが率先して手本を見せること」
「もとより目的意識と参加意識さえあれば、だらけることはありません。たとえば、字のうまい人には日替わりメニューを毎日書いてもらう。絵のうまい人にはイラストを描いてもらう。ささいな長所でも、見つけたら、それを継続的に生かせる仕事をつくってあげる。そのスタッフならではの持ち場を確保してあげることが大切なのです」
「要は参加意識なのです。営業に参加しているという意識がスタッフ一人ひとりにあれば、おのずと店も活気づくのです」
佐藤店長がスタッフの参加機運を喚起する方法はほかにもある。
「季節メニュー、日替わりメニューについては、アイデアをスタッフから募集しています。もちろん売上げに応じた歩合給がつく特典つきで。社長からは叱られますけど、現場ではお金よりも参加機運が大切。今後どうなるか分かりませんが、こうしたイベントは積極的に行いたいですね」
佐藤現場監督のポリシーは--。
(1)自分より人のためにどれだけ尽くせるかが大切。
(2)給料をもらうだけ、働くだけは御法度。
(3)常に疑問を持ち、気になったことは迷わず素直に周囲に相談する。
(4)お客の笑顔をつくれる店舗を目指す。
「スタッフに恵まれたからいまの自分と店がある。みんなと一つになって働きお客の笑顔を見るのが、いまは一番楽しい」という佐藤店長の働き者ぶりは、これだけではとても表せない。
現在の勤務は通勤時間三〇分(冬一時間)で朝は9時過ぎから夜は11時過ぎまで。休日は週一~二日。このほか出勤前は農作業に励み、また夏休みの代わりに春秋休みをとって同じくする近況である。まさに働き者。貴重な合間に釣りへ行くのが密かな楽しみとか。
「いまの現場で勉強し、将来は店舗指導員として活躍できたらいいですね」というのが現在の抱負。
今後の行方が楽しみな現場監督である。
◆佐藤豊一郎店長=昭和28年、福島県会津若松市出身の四三歳。上京し大手飲食チェーンの店長を八年間経験。帰郷後、家業の農家を継ぎながらリゾートホテルの従業員として働く。平成5年、オープン間もない同店の店長に転職、現在に至る。「長所を伸ばしてあげることが大切」が従業員教育に対する基本姿勢。「他人にどれだけ尽くせるか」を合い言葉に従業員の志気を高め、オープン当商八〇〇万円だった月商を現在は一一〇〇万円にまで伸ばしている。
◆「旨いとんかつまるやま」門田店(福島県会津若松市北青木二-五七、電話0242・29・9111)
「旨いとんかつまるやま」は、とんかつとジャンボエビフライを売物とするロードサイドの揚げ物専門店。会津若松市で“エビのマルヤマ”と名を馳せる(有)マルヤマ商事が、本店の「名物ジャンボえびまるやま」に続く二号店目として平成5年にオープンした。現在、福島県内に四店舗を展開している。ちなみに名物のジャンボエビフライは長さ二五~三〇㎝もあり“日本一のエビフライ”を標榜している。