注目の外食ベンチャー 海鮮料理「愉味亭」群を抜く多頻度ユーザー

1998.04.20 150号 8面

「愉味亭(ゆうみてい)」は、海鮮丼を専門にイートイン、テークアウト、宅配の三業態を同時営業する新進の外食ベンチャー。平成4年に創業し、現在都内に四店舗を展開している。ノウハウの大筋がつかめたとして今後本格的に多店舗化する。年内中に二〇店舗を築き、三年後には一〇〇店舗体制にする考えだ。

立地に合わせて業態を提案

愉味亭は、元メーカー系飲食企業の幹部だった森脇均さんが、バブル後の退社で独立開業したもの。以後、関連企業や人材を取り込みながら愉味亭フーズ(株)を設立し、現在はチェーン事業へ乗り出すまでに至っている。

森脇氏が海鮮丼に着目したのは、日本人の主食であるコメと魚介類に強く魅力を感じたため。「品質と値ごろ感さえ訴求すれば、日常ニーズに応える確実なビジネスとして定着するはず」とにらんでのことだ。

平成4年に一号店を渋谷区の富ヶ谷にオープン。店舗営業は順調に進み、平成6年、経営不振だった鮮魚卸を吸収したことから多店舗化が具体化した。

仕入れ物流というハードと店舗ノウハウのソフトが一体化すれば、多店舗化は自然の流れ。五反田店、赤坂店と矢継ぎ早に新規出店してノウハウを固め、このほど宅配主力の新宿店をオープン。現在、イートイン、テークアウト、宅配の三つの業態を同時展開し、立地特性に合わせた業態を加盟希望者に提案する、出店プランニングの構築を進めている。とりわけ新宿店では、FC出店の主力と見込む宅配に重点を置き、車両四台で展開している。

炊きたてご飯と独自のたれ

「従来の店舗でポスティングすると、反響が強すぎてイートインとテークアウトに支障を来すので、販促は控えてきた。新宿店ではポスティング強化の結果を見る」

「いままで宅配に関わる販促は、店先で通行人にチラシを配るのと、店先にチラシを置いとくだけだった。二万枚まくのに一年半もかかった。配達区域も車両二台で半径一㎞ぐらいまで。それでも宅配だけで売上げの三〇~四〇%を占めている状況(月商三〇〇~四〇〇万円)」というから、本格的なポスティングで、どれほどの反響が来るかは見物である(一般的宅配ピザ店の一ヵ月のポスティングは一〇万~二〇万枚)。

また、愉味亭で特筆すべきはヘビーユーザーのオーダー頻度だ。コメと魚を主力とする日本人志向であるにせよ、毎日から週二回のオーダーをヘビーユーザーと見なしている感覚は、他の宅配チェーンにとっては信じがたいことであろう。

「ヘビーユーザーの多いポイントは二つあります。一つは酢飯は使わず炊きたてのご飯を届けること。酢飯は飽きるから日常性はありません。もう一つは、ご飯の上にサッとかける、独自に開発したたれ。醤油をベースに七種類の調味料をブレンドしたたれが魚介類との最高の相性を作り出しているのです」

飽きのこない炊きたてのご飯と独自開発のたれが、愉味亭のセールスポイントでありノウハウというわけだ。

こうした日常ニーズの確かな手応えは、先発三店舗の売上げがイートイン、テークアウト、宅配でほぼ互角に三等分されることからも納得できる。

四店舗目の新宿店の結果を見たうえで多店舗化(FC化)を加速する考えだが、加盟希望者に対する業態提案は立地や希望に合わせて三パターンある。

(1)宅配専門=住宅地でもビルインでも人のいる商圏ならば可。厨房スペースと配達車両だけで営業開始。店舗坪一〇~一五坪、開業資金一〇〇〇万円~。

(2)宅配+テークアウト=テークアウトが見込める好立地。店舗坪一〇~二〇坪、開業資金一〇〇〇~三〇〇〇万円。

(3)宅配+テークアウト+イートイン=愉味亭の真のコンセプトとおいしさを訴求する店舗業態。店舗坪一五~三〇坪、開業資金三〇〇〇万円~。

「このほど展示会出展したところ問い合わせが相次いでいますが、加盟希望の傾向は大筋で脱サラと法人に二分しています。前者は宅配専門で、後者はトータルな展開を考えておられるようです」

加盟募集に好感触を得ていることから着々と多店舗化の準備を進めているが、当面の出店目標は二〇店舗体制を築くこと。

「二〇店舗になればスケールメリットで二五%のオーナー利益率が三〇%にはね上がります。しかも、いまよりもワンランク上のマグロを仕入れることができる」

他社の追随する可能性については、「営業スタイルの表向きはまねできても、仕入れ物流のハード面は無理でしょう。当社と同等の高品質を提供するとすれば追随は難しいのではないか」と自信満々の答え。

イートインやテークアウトの海鮮丼チェーンはあまり珍しくないが、宅配部門をも含めた海鮮丼のチェーン化は愉味亭が初めての試み。多店舗化の行方が注目されるところだ。

冬場の売れ筋ベスト3

●冬場=<一位>ねぎとろ丼(九八〇円)、人気ダントツの一品、構成比約四〇%<二位>二色丼(一二五〇円)、マグロとホタテ、構成比約二〇%<三位>海の親子丼(一〇〇〇円)、サケそぼろとイクラ、構成比約五%<同>ゆうみ丼(一一〇〇円)、マグロのゴマだれショウガ風味丼、構成比約五%<同>生イカ丼(一一〇〇円)、生イカのゴマだれショウガ風味丼、構成比約五%

◆(もりわき・ひとし)/昭和31年、東京生まれの四二歳。東海大学工学部卒業後、(株)レストラン森永に入社。銀座森永の店長などを経て、本社販促担当マネジャーとして勤務。平成2年退社後、(株)レ・アールを設立し独立し、イベント企画を手がける。平成2年、「愉味亭」をオープンし、現在のチェーン化始動までに至る。

◆愉味フーズ(株)/代表取締役=森脇均/創業=平成4年1月/本部所在地=東京都港区東麻布一-二六-二-一二〇一、電話03・5561・3338/ストアブランド=愉味亭/店舗数=三店舗(直営二、FC一)/モデル店と店舗所在地=五反田店(平成8年開業)、東京都品川区東五反田一-一一-一七、電話03・5420・2904/初期投資=二〇〇〇万円/立地・坪数席数・業態=ビルイン・二〇坪(厨房五坪、客席一五坪二〇席、宅配車両二台)・イートイン、テークアウト、宅配/営業時間=午前11時(休日正午)~午後2時、5時~9時30分(休日午後8時)/客単価=イートイン(昼)七〇〇円、同(夜)三〇〇〇~三五〇〇円、テークアウト六五〇円、宅配一二〇〇円/年商=約一億円/月商=九〇〇~一〇〇〇万円(イートイン三〇%、テークアウト三〇%、宅配四〇%)/客層=イートイン、テークアウトはサラリーマン、OL。宅配は法人客、一般所帯(男女比は四対六)/原価率=三三%

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