焼き肉最新動向 注目の外食ベンチャー 郊外型焼き肉「カルビ屋大福」

1998.08.03 157号 17面

景気低迷をしり目に、焼き肉店の出店ペースが加速している中、既存焼き肉店四社が各店のノウハウを持ち寄り、共同出資でチェーン展開するというユニークな郊外型焼き肉店が現れ、脚光を浴びている。

注目度が高まってきているのは、(株)ヤクニックの展開する「カルビ屋大福」だ。

神奈川県を拠点に焼き肉店「とんちゃん亭」を展開する(株)信田商事、同じく埼玉県で「ごんたか」を展開する(有)権亭、千葉県で「むさし」を展開するむさし商事(有)、山口県で「じゅうじゅう亭」を展開する(有)ライズ。これら四社と(株)オージーエムコンサルティングとの共同出資により一昨年の3月に会社を設立し、昨年10月、四国の高松を皮切りにスタートしたもの。

現在まで四国内に三店舗をオープン。焼き肉を日本の文化としてとらえるコンセプトで、ファミリー向けの郊外型店舗開発を推進。八五坪・一二二席で客単価二五〇〇円、月商一八〇〇~二〇〇〇万円と好調に展開している。

「各地の焼き肉店が集まり、各店のノウハウを交換する『焼き肉部会』という会合がありまして、一緒に勉強しているうち、それならばいっそのこと共同出資でチェーン化してみようかという運びになったのです」(信田幸和代表取締役)

展開にあたるスローガンは大筋で、(1)お客さまは従来の焼き肉店に満足しているのか(満足度の高い店づくり)(2)焼き肉ファンを一人でも多く増やそう、の二つ。

その実践策が(1)肉の選別から処理、解凍、提供に至る工程の徹底管理(品質向上)、そして肉を引き立てるためのたれの開発(2)ファミリー層に訴求するための店舗の和風FR化とクレンリネスの徹底。

(1)については、和牛、輸入牛の産地指定はもとより、牛のえさまで指定するほどのこだわりよう。それを一次処理のバックヤードでサクにして冷凍し、各店配送。店舗では当日分だけをチルド解凍し、肉の繊維を壊さぬよう手切りスライスする。

「焼き肉は、おいしさの良しあしを判断し易い素材料理。肉の選別と提供するまでの工程管理が命です。肉のうまみを味わってもらうために、たれは薄口に仕上げています。濃い口のたれで肉本来の味を殺してしまう従来のやり方とは、明らかに反対です」

(2)については、店舗内全体を靴脱ぎの板張りにし、全客席を掘りごたつ形式の座敷席で構成している。

そして特筆すべきは、ディナー需要に絞った午後4時~午前0時までの営業時間である(日曜・祝日は午前11時30分~午後10時30分)。

「焼き肉はもともとディナーイメージの食べ物。ビルイン型の店ならば、賃料との収支上、ランチタイム営業による稼働率アップを強いられるでしょうが、郊外型の店は異なります。ランチタイム営業は労力を分散するだけで非効率です。シフト勤務を省いた余力は、先ほど述べた品質管理に充てるべきなのです」

「時短営業は従業員の集中力を発揮するほか、当日分の肉だけを解凍する鮮度管理の徹底に大きく寄与します」

こうした時短営業による月商一八〇〇~二〇〇〇万円の実績は、長時間営業を余儀なくされている郊外型店にとって、大きな参考材料であろう。

同店に資本出資する(株)オージーエムコンサルティングの榊芳生代表取締役は、「カルビ屋大福」の繁盛と昨今の焼き肉店ブームについて、こう代弁している。

「今、郊外型焼き肉店が全国的な勢いで増え続けています。これまで私たち、日本人はアメリカ人のような生活をしたいと夢見てがんばってきました。食生活でもナイフとフォークを使って食べる洋食のほうが豊かだと思い続けてきたのです。だから洋食の店が大繁盛したのです」

「しかし今は違います。日本が豊かになりました。するとナイフとフォークで食べるステーキよりも、おはしで醤油味で食べる焼き肉の方がいいと、今の日本の生活者が思いはじめても不思議ではありません。それも、清潔で楽しい雰囲気を持つ郊外型の焼き肉店に、家族客が押しかけはじめたのです。今、まさに郊外型焼き肉店ブームが始まろうとしています。そんな郊外型焼き肉店の代表が、このカルビ屋大福なのです」

素材志向、和風回帰、そして時短営業という新しいファミリー向けFR展開。同店の試みは、横並びで過ごしてきた従来のFR業態に風穴を開けるモデルケースとして、ますます注目されるところだ。

売れ筋と構成比

〈一位〉「大福カルビ」五八〇円(九%)

〈二位〉「お気軽大皿」一九八〇円(九%)

〈三位〉「大福盛り」三五八〇円(八%)

〈四位〉「上タン塩」五八〇円(八%)

〈五位〉「石焼きビビンバ」八〇〇円(六%)

◆(株)ヤクニック/本社所在地=東京都文京区本郷一‐一五‐六、MKビル四階、Tel03・3814・2894/FC本部=神奈川県川崎市川崎区砂子一‐五‐二二、サンハイツ稲葉ビル二〇四、Tel044・246・5460/ストアブランド=カルビ屋大福/代表取締役=信田幸和/店舗数=三店舗/設立=平成8年3月/創業=平成8年11月/資本金=四八〇〇万円/業務内容=郊外FR型焼き肉店「カルビ屋大福」の営業、FC加盟店募集、加盟店の指導業務、食品卸

◆「カルビ屋大福」(伊予三島店)/所在地=愛媛県伊予三島市中央一‐一六‐五、Tel0896・24・8929/開業=平成10年4月/坪数・席数=八五坪・一二二席/立地・店舗形式=郊外クライスター(店舗集合)立地・和風FR型/初期投資=一億二五〇〇万円/モデル年商=二億五〇〇〇万円/モデル経常利益=一三・六%(年間二七七一万円)、減価償却一〇年間、金利四%で算出/モデル月商=一八〇〇~二〇〇〇万円/客単価=二五〇〇円/集客数=月七〇〇〇~八〇〇〇人(平日一五〇~二〇〇人、土曜二〇〇~三〇〇人、日曜四〇〇人前後)/客層=ファミリー五〇%、カップル三〇%、グループ二〇%、男女比は五対五。

※モデルは全店共通。

◆信田幸和(のぶた・ゆきかず)代表取締役=昭和36年神奈川県横浜市生まれの三七歳。父親がドライブイン経営者で、中学生時代から同店のスタッフとして働く。近隣パーキングに出張し、カツサンドを一日二〇〇個売り歩くのがノルマだったという。手に職をとの考えから高卒後、歯科技工士専門学校に入学、そして歯科技工士として就職。ニューヨーク勤務二年間などを経て、二四歳で結婚。結婚を機に、父親のすすめで五坪の焼き肉店をオープン。以後、(株)信田商事を設立、現在神奈川県内に焼き肉店「とんちゃん亭」を五店舗展開。(株)ヤクニック設立にあたり、代表取締役に就任。

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