うまいぞ!地の野菜(14)三重県現地ルポおもしろ野菜発見

1999.03.01 173号 15面

三重県と愛知県の狭間にあり、伊勢湾に向け流れ下る木曽川、揖斐川下流域は海抜ゼロメートルの輪中地帯として知られる。

「春になるとこの一帯は、一面黄色いナタネの花で被われたようですよ」と目を細める加藤節子さん。8月のうね起こし、種まき、9月の定植、10月・11月から3月までの収穫まで母親のもと子さんと二人で取り仕切る。「九一歳の祖母も、去年の暮れに亡くなるまでなばな作りをしていました」とさみしそう。

コメの裏作として栽培される「なばな」は、主婦の手により支えられているといっても過言ではない。

呼び名優しく

昭和30年代まで長島地区を中心とした一帯はナタネの集約産地として、また良質の油の種実を生産することで知られていた。

栽培農家では枝を多くしてナタネ増産を図っていたが、この時摘み取った芯を持ち帰り冬場の野菜にしていた。だんだん増える収穫量から近くの青果市場に出荷したところ、意外に好評。手で摘むことから「ツミナ」と呼ばれ、口コミで評判は次第に広まっていった。

ところがこのころ、伊勢湾台風の直撃に遭い、産地はほとんど壊滅状態。ここで着目されたのがツミナ。個々の農家がバラバラで市場へ出荷していたものを、市場の要請もあり地元長島農協が中心となり共同出荷することになる。

ネーミングも従来のツミナから消費者にアピールしようと、なじみやすく春を思い、花を連想させる「なばな」と命名。また、ばら売りから大量販売への商品化として、通気性の良いネット袋を採用するなどの工夫を図る。

「大量出荷は地元中京市場や大阪市場では限界があり、不安ながらも東京へ進出を図りました」と三重なばなブランド化推進協議会会長の岡村光一さん。

「馬も食わないものをどうしてもってきたのか」などと目にも止められなかったが、日本で初めて軟弱葉物野菜に防曇フィルムを採用、二〇〇g入り小袋二〇袋詰め段ボール出荷したところ、市場での受けは良く、急激に販売量をのばすことになる。

長島地区では、一戸当たりなばな栽培面積が県南部産地の平均三ヘクタールに比較し三〇ヘクタールと広く、収穫ローテーションが効率よく組める。また、海抜ゼロメートルという輪中地帯のため、配水設備が完備しており、冬場の乾燥期でもしっかり水を与えることができ、県全体の生産量の四割を出荷する。

農薬とは無縁

「元肥をしっかりやり、土作りをキチンとやれば農薬は不要。葉っぱを食べに来る鳥がいちばんよく知ってるよ」と笑う節子さん。膝丈ぐらいはある高畝から規格化された約二〇センチメートル以下になばなを切りそろえながらハサミを入れる。

三重なばなブランド化推進協議会は一八〇戸。3月のピーク時には、一日四キログラム入り箱四〇〇〇ケースが出荷されるが、今年は昨年の台風の影響で一八〇〇ケースという。

■生産者名=三重なばなブランド化推進協議会(三重長島農業協同組合内)、三重県桑名郡長島町大字又木五一‐三、Tel0594・42・5181、FAX0594・42・2214

■販売方法=主に京浜市場に共同出荷。地元中京市場や空輸で北海道へも。また新潟地区では地場野菜トウナのつなぎとして流通する。

■価格=出荷時期は10月末・11月上旬~3月末ごろまで。市場価格により上下はあるが、平均一キログラム五〇〇円。目標は五〇〇円におく。

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