ヘルシートーク:栄養コンサルタント エリカ アンギャルさん
●幸福感ももたらすフィトケミカル
最近の栄養界では、野菜・果物のフィトケミカル(植物からの栄養)が研究の中心になっています。20年前はβ-カロテンしか知られていなかったのですが、この間で2万以上のフィトケミカルが発見され、いまも毎日新顔が発表されています。先ほどお話ししたカロテノイドも、フィトケミカルの1グループです。フィトケミカルの効能は、抗酸化や抗炎症などさまざま。DNAにも影響を及ぼす力があることも分かってきています。
新しい研究では、幸福感やメンタルヘルスにも影響を与えていることも分かってきました。イギリスのワーイック大学の経済学者と公衆衛生の専門家が国内8万人の食習慣を調査したところ、1日に7ポーション(ここでは1ポーションは80g)の野菜・果物を食べている人は、幸福感がピークに達するという結果が出ました《※2》。フィトケミカルは脳内ホルモンをはじめ体中の細胞に影響を及ぼすだけでなく、幸福感や希望といった心の豊かさももたらすわけです。
また、イギリスのブリストル大学の研究者によると、健康的に育った野菜・果物はカロテノイドの比率が高い。そのカロテノイドをたくさん取ると、異性の目により魅力的に映ることが明らかになったそうです《※3》。野菜でつやつや肌になり身体も元気になると、健康シグナルが身体から発散され、異性をひきつける、つまりモテ体質になるということですね(笑)。
フィトケミカルと上手に付き合うポイントは、リアルフードを取ること。リアルフードは直訳すると「本物の食べ物」ですが、自然にある姿に近い、なるべく加工されていない素材丸ごとの食べ物のこと。自然の野菜・果物の中にあるフィトケミカルはお互いが作用しあって、相乗効果で思いもよらない効能を発揮するのです。だからβ-カロテンが足りないからといってサプリメントで補給しても野菜・果物が持つ力を超えることはできません。
もうひとつは、カラフルにたくさんの種類を取ること。違った色の野菜を食べると、当然いろいろなフィトケミカルが吸収できます。私は、虹の7色をめざして多くの食材で彩る「レインボーカラーのテーブル」をおすすめしています。病気や寿命は遺伝という考え方がありますが、実は違うことも分かってきました。食生活などの生活習慣が70%、遺伝の要素は30%、つまり変えていけるのです。野菜はコスメであり、薬であり、将来の投資にもなります。野菜がないと生きていけないといってもいいほど大切なものです。
●いま食べたものが10年後のあなたを作る
私の食生活ですか? 朝はフルーツ中心です。ヨーグルトに旬のフルーツやナッツ、手作りのグラノーラを入れます。時間がある時はサラダにたんぱく質をプラスします。今朝は、桃とくるみを入れたグラノーラをヨーグルトと一緒に食べました。昼はカラフルサラダ。オクラ、パプリカ、おろしたにんじん、パクチー(香菜)、アボカドに缶のツナ。枝豆といりごまをトッピングしてオリーブオイルとバルサミコ酢でいただきました。
フレッシュジュースも毎日欠かしません。今日は、しょうがとにんじんとパイナップルのジュースでした。夜はレンズ豆と野菜のスープにしようかな。いまの時期はガスパチョもよく作ります。
冬は、鍋や10種類の野菜を入れたみそ汁をよく作ります。私のオリジナルみそ汁は、たまねぎとにんにくをオリーブオイルで炒めて、さらに根菜類を入れて炒め、水を入れてよく煮てから、最後に火が通りやすい野菜類を入れ、火を止めて合わせみそを加えます。卵を落としたり、ツナをいれてもおいしいですよ。
残念ながら日本人は、取るべき野菜・果物の摂取量を満たしていません。食事の中でもっと野菜を食べる比率を上げていきましょう。たとえば、サンドイッチのパンをロメインレタスに変えるとか。「レタスボート」というメニューになりますよ。フルーツも太るという誤解がありますが、そんなことはありません。スナックをボリボリ食べる方がよほど太ります。フルーツはパーフェクトなスナックと考えて、安心してたくさん召し上がれ。いま食べたものが、10年後のあなたを作るということを忘れないで。
●日本料理はオシャレでカッコイイ!
私がオーストラリアから初めて日本に来たのは約30年前、交換留学生として九州大分県の日田高校へ通いました。ホストファミリーで温かく迎えていただき、普通の食卓で伝統的な料理をたくさんいただきました。感動しましたよ。けれどクラスメートたちは、日本料理をカッコ悪いと思っていたみたいです。海外では逆。皆、日本料理がオシャレでカッコイイと思っています。そのイメージはさらにアップしています。
アメリカで2006年に出版された『JAPANESE WOMEN DON’T GET OLD OR FAT』(「日本女性は年を取らない、太らない」)という本では、食事を制限するのではなく、食べ物を祝福し、おおいに楽しむという日本の家庭料理と食事の仕方が紹介されました。日本食は血糖値が上がりにくい仕組みも書かれています。翌年に出された『The Okinawa Diet Plan』という本は、沖縄に100歳以上のお年寄りが多いのは、野菜や大豆、発酵食品のおかげと書かれていました。この2冊がブレイクして、一気に日本食が世界中で大ブームになったと思います。いまでは世界中にある日本食レストランで皆、枝豆をつまんでいます。和食は、いま流行のスーパーフードの代表選手として大人気です。
日本は四季がはっきりしているから、旬がありますよね。海外では四季はあっても、実は旬という考え方があまりないのです。野菜・果物は冷凍されている物が多く、1年前のものだったりします。旬は日本ならではのもの、大切にしていきましょう。
若い人たちは海外に憧れていますが、私は日本人をずっと見てきました。長生きで美しく、肌がきれい。これも野菜を中心に旬を大切にする和食の素晴らしさのおかげです。無形文化遺産に登録されたのも当然のこと。これからもずっと守り続けてほしいですね。
○出典
《※2》スチュワート ブラウン他、「幸福感と果物・野菜の消費量に関連はあるか」Social Indicators Research(2012年10月)
《※3》ステファン・I・Dら「カロテノイドとメラニン色素の健康への影響」「進化と人間行動」The Journal of Evolution and Human Behavior(2011年)
●プロフィール
Erica Angyal オーストラリア・シドニー生まれ。シドニー工科大学卒業、健康科学学士。オーストラリアで医師とともに、アレルギーや自己免疫疾患、生活習慣病や肌コンディションに悩む患者の治療に従事する。日本では、2004年から8年間、ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントとして活躍。一気に栄養のカリスマに。『世界一の美女になるダイエット』『30日で生まれ変わる美女ダイエット』など著書多数。
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