百歳への招待「長寿の源」食材を追う:杏(アンズ)

2004.01.10 102号 7面

人気の高い果物の世界も大きく変化している。芳潤な味と香り、ソフトでハイフレーバーだけでは満足されなくなってきた。プラス健康面が何より重視される。ブルーベリーは視覚機能の改善と食物繊維による整腸力、杏は潤肺・整腸・抗がん性が認められて人気が高まってきた。新時代は味と健康の訴求が大切なのだ。

(食品評論家・太木光一)

杏の原産地は中国東部で栽培の歴史は四〇〇〇~五〇〇〇年前と古い。紀元前一〇〇年頃にシルクロードをへてペルシャに伝えられた。日本には平安時代に渡来し、「唐桃(カラモモ)」と呼ばれていた。

イバラ科サクラ属で木の高さは七~一〇メートルに達し、早春、梅よりも遅く、桜よりも早く咲き、白色か淡紅色の花をつける。果実は梅よりも大きく円形で黄色ないしやや赤味をもつ。果肉は柔らかで甘酸っぱく特有の芳香がみられる。適地は雨量が少ない冷涼地。

当初、中国では種子をとる目的で栽培され、杏仁は咳止めの良薬とされていた。食用となったのは一八世紀に入ってから。杏には次の三品種がある。

(1)モウコアンズ……純然たる野生種で中国東北部からシベリアまで分布。果実は小さく食用不適で、果肉を腐らせ杏仁を薬用とする

(2)マンシュウアンズ……中国東北部から南部山岳地帯に分布。食用とはならず薬用に

(3)ホンアンズ……現在、日本・中国・世界各地で栽培されている杏の原種。日本もこれから実生繁殖した。

中国産杏の成分は糖分一五~二三%、うちショ糖は三・七~一五・八%、ブドウ糖一・二~七・二%。ビタミンではB1〇・〇二グラム、C七ミリグラム、カルシウム二・六ミリグラムほか。そして効能として潤肺定喘、腸燥便秘、清熱去毒など他の果物にない効能がみられるとしている。しかも抗がん効果が大とたたえている。また『中薬大辞典』によると、去痰止咳・平喘・潤腸といった効能をあげている。

日本の場合は、杏の生産量は非常に少なく、出回りシーズンに入っても果物店の店頭に姿をみせるのはまれ。また熟度の高い杏は日持ちが悪く、生産地以外ではあまり生食されない。

7~8月が食べ頃だが、加工用が主力で果肉が柔らかくならないうちに採取する。利用法は菓子原料としてドライフルーツに。あめ色で美しく、ほどよい酸味が菓子材料に適している。杏あめ・杏ゼリーも人気が高い。また杏ジャムはイチゴにない酸味があり、固定ファンがみられる。

アメリカでは、気候が適したため全米で大規模生産されている。ドライフルーツや缶詰にされ、ヨーロッパや日本に輸出している。アメリカ杏は一八八四年に日本から種子が贈られたもので、これが今日の大産業となった。杏の生産地はさらに拡大し、米国をはじめフランス・中近東・オーストラリアに移り、杏酒・杏ジュースなどに、今後も成長が期待されよう。

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