ヘルシートーク:野菜ソムリエ・さやさん
◇手軽にできる冷凍貯金や重ね煮で旬の野菜をラクしておいしく味わって
「野菜をラクしておいしく」をモットーに、インスタグラムや料理メディア「Nadia」で発信している、野菜ソムリエ・さやさん。つくりやすくておいしいレシピが人気です。野菜の冷凍ストック術や傷ませない保存方法、夏野菜をおいしく食べるコツを教えていただきました。
●野菜の魅力に気づいたのは長女の離乳食がきっかけ
料理を好きになったのは、大学生の頃。専業主婦だった母が働き始め、私が家族のごはんをつくるようになって、野菜料理にも目覚めました。でも、結婚・出産で育児と家事に追われるようになると料理が思うようにできず、家族の野菜不足を感じて自己嫌悪になることも。また、長女が野菜嫌いで食べてくれないことも悩みでした。
そんな日々の中、離乳食作りを通して気づいたのが、野菜そのもののおいしさです。「蒸すだけ」「重ねて煮るだけ」「じっくり加熱するだけ」などのシンプルな調理法でも驚くほど味が変わることを知り、感動しました。素材を活かした野菜料理をつくるうちに、長女も少しずつ食べてくれるようになったんです。また、それまで抱えていた自己嫌悪も「家族が野菜をおいしく食べてくれる」という達成感に変わっていきました。
長女が最初に「おいしい!」と夢中で食べてくれたのは、重ね煮でつくった豚汁。スープをひと口飲んだ瞬間に目の色が変わり、苦手な野菜もパクパク食べてくれたのは、忘れられない出来事です。
私流の重ね煮は、フタ付きの鍋に塩少々を入れ、水分の多い野菜を下に、根菜類は上に重ねて、最低限の水を加えて煮るだけ。野菜からうま味や甘みがたっぷり出るので調味料は最小限で済み、根菜類もやわらかくなるんです。
歴史ある調理法の重ね煮には細かなルールがあるものの、それにこだわり過ぎず、素材の味と味つけの組み合わせを工夫して、子どもも大人も食べやすくなるようにアレンジしています。フタがぴったり閉まる鍋を使えば失敗なく、おいしくつくれます。
●時短&節約になる野菜の冷凍ストック術とは?
「野菜を買い過ぎたけど、使い切れるかな…」という時、ありませんか? そう思ったら「冷凍貯金」がおすすめです。
冷凍貯金とは、手間をかけ過ぎず、用途に合わせて野菜を冷凍保存しておくこと。そうすれば、未来の自分をちょっとラクにすることができるんです。
例えば、使いやすい野菜を組み合わせてつくる自家製冷凍野菜ミックス。さつまいも、にんじん、ブロッコリーなど生野菜を切ってオーブン用シートに包み、冷凍用保存袋に入れたら冷凍庫へ。レンチンして食べられる状態にセットしておけば、すぐに使えて、時短にもなります。
また、使い切れず傷ませてしまいがちなハーブや香味野菜は、乾燥させて冷凍保存を。電子レンジで加熱すれば、あっという間に乾燥でき、1カ月保存できるので、日々の料理の風味つけや彩りに重宝します。
きのこは、冷凍する前にひと手間加えるのがコツ。晴れている時に2~3時間干すだけで、うま味や栄養価がアップします。きのこを買ったら、“ちょい干し”を習慣にするといいでしょう。
SNSで反響が大きかったのが、きゅうりやズッキーニの丸ごと冷凍保存です。使う時に薄切りにして解凍し、水気をしっかり絞れば、塩もみしたような食感に。ズッキーニは縦切りにすると、とろっとやわらかくなるので、焼くだけでもすごくおいしくなりますよ。
これからの季節は、ミニトマトを冷凍しておくと、何かと便利です。水をかけるとすぐに解凍できるので、ひんやりおいしく食べられます。めんつゆに加えたり、そうめんの具材にもぴったりです。
●なすを育てた体験と母のおいしい料理が原点に
旬のとうもろこしを簡単においしく食べるには、皮を1周分残して、レンジで蒸すのがコツです。皮を残すことで、素材の甘みと香りがギュっと凝縮するんですよね。枝豆はフライパンで蒸すと甘くてふっくらした仕上がりに。塩もみしてからさっと炒めてあらびきこしょうをかければ、おつまみにもよく合います。
夏野菜は水分が多いので、どうしてもすぐに傷みがち。中でも、なすは低温に弱いので、5℃以下の環境で保存すると低温障害を起こしやすく、皮がしわしわになったり、種が黒く変色してしまうことも。保存する際は、新聞紙やキッチンペーパーで包んでから冷蔵室より温度が少し高い野菜室に入れるのがポイントです。
なすは水にさらしてアク抜きをするのが一般的。でも、切ってすぐに調理する場合は、アク抜きの必要はないと思っています。アクの主成分はポリフェノールの一種で身体に害はなく、抗酸化作用のあるうれしい成分でもあるからです。
私自身、なすは大好きな夏野菜の一つ。小学生の頃、授業で育てたなすを持ち帰ると、母が「なすと鶏肉の甘辛煮」をつくってくれました。育てた体験と本当においしく料理してくれたことが、なす好きになった原点のような気がします。
長女が通う保育園の給食メニューをヒントに考案したのが「家族で(ハート)辛くない麻婆なす豆腐」。野菜を小さく切ってうま味がたっぷり出ているので、なす料理の中でも家族に大人気です。
いま、保育園でも夏野菜を育てていて、登園するたびに「今日は大きくなってるかな?」と観察するのが日課に。娘たちも野菜を身近に感じ、興味を持ってくれたらうれしいなと思っています。
◇プロフィール
野菜ソムリエの資格を持つ、2歳・4歳の2人の娘の母。「野菜をラクしておいしく」をモットーに、簡単につくれて心と身体が健康になる野菜レシピが人気。Instagramや料理メディア「Nadia」でのレシピ発信のほか、食品メーカーや企業のレシピ開発でも活躍中。野菜の保存法などのお助け情報も発信し、好評を博している。Instagramのフォロワー数は35万人超(2025年5月現在)。
●NEW BOOK
『365日旬の野菜をとびきりおいしく食べる!さやのレシピ』
野菜ソムリエ・さや著/宝島社 定価:1,595円(税込)