百歳への招待「長寿の源」食材を追う:細辛

2003.11.10 100号 6面

細辛は日本ではウスバサイシンの根茎および根を乾燥したものを指す。中国ではウマノスズクサのケイリンサイシンの根をつけた全草を指す。レンコンは食材として煮物や天ぷらに利用されているが、中国では花・実・葉・根と部位別に利用。ともに根のもので、安価で極めて有用、庶民に親しまれている。

(食品評論家・太木光一)

細辛(サイシン)は、中国では「小辛」「独葉草」「山人参」ほかの別名を持つ。この代表は「寧細辛」で遼寧省産を指す。日本では熊本・新潟で産出されていたが、現在では長野・静岡・山形県産が多くなっている。

外観は葉が薄く光沢なく緑色、夏には茎の先に黒紫色の上端が三裂した肉質の鐘形花をつける。地下に長いカモジ状の根を生じ、掘り起こすのが細くて辛いので細辛と名付けられた。

細辛を大別すると遼細辛と葺細辛になる。遼細辛は「万病草」「細参」「東北細辛」の別名を持つ。この性状をみると、多年生草木で、高さは一二~二四センチほど。根茎は横延し、密生した髭根がある。葉身は心臓形で先は鈍形。

葺細辛は別名「北細辛」と呼ばれ、主産地は吉林・黒龍江省など中国東北部。特性は芳香が強く、味も辛棘。辛味の強いものほど良品だ。

この薬理作用は(1)局部麻酔作用(2)解熱・鎮痛作用(3)抑菌作用(4)対血圧降下作用があると『中薬大辞典』には記されている。そして効用主治として去風・散寒・頭痛脳動・歯痛・痰飲・咳逆などに良いとしている。

日本の漢方でも鎮咳・鎮痛・去痰・利尿薬とみている。特に新陳代謝機能を高める目的で広く応用がみられ、頭痛・胸満・脇痛の時に用いられている。

品選びは、新しく細くて辛味の強いものがよい。また「高麗細辛」とも呼ばれる、北朝鮮から中国東北部産のものが良品。

細辛は家庭の常備薬として特に鎮咳・鎮痛・頭痛・利尿などに広く愛用されている。また薬酒や薬茶にも利用され手軽だ。

薬酒の作り方として、歯ブラシで細辛の土をよく洗いとる。水分を切り天日で半干しにする。利用部位は地中の根茎と細根。

根茎の用量は容器に対して一〇分の二前後。砂糖は大さじ三杯程度。甘味不足は仕上がってから調整する。

ほぼ一カ月で用いることができるが、熟成するには三カ月以が必要。中身はそのままでよいが、引き上げる場合には五カ月ぐらいが目安。

細辛酒は美しく冴えたコハク色に仕上がる。爽やかな香気と重厚な辛味が楽しめる。強壮・精神安定、頭痛・去痰・止痛・利尿を始め、新陳代謝を促し美容効果も大きい。

また薬茶として利用される。芫辛椒艾茶は芫花(ユアンホウ=サツマフジの花・細辛・川根・艾・小麦・細茶を等分量。水二五〇~五〇〇ミリリットルを煎じ一五〇~三〇〇ミリリットルに煮詰め一日三回服用する。効用として去風・殺虫・止痛などに効く。風邪・歯痛にも良い。

有用な薬草と呼ぶことができよう。

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