百歳への招待「長寿の源」食材を追う:昆布

2003.02.10 90号 11面

日本は四周を海に囲まれた海洋国。古い時代から海産物に恵まれてきた。その代表が昆布と海苔(のり)で、日本人のスタミナづくりに欠かせない食品とされてきた。いずれも優れた成分に恵まれ、日本人の健康と長寿に役立っている。海藻類の利用法は世界一であり、他国ではみられないものがある。さらに健康と長寿を期待するため一層の昆布や海苔の愛用をおすすめする。

(食品評論家・太木光一)

昆布は和名でエビスメ・ヒロメ・海帯などと呼ばれ、古くから日本人に親しまれてきた。奈良時代には、すでに昆布採取の記録もある。

昆布は褐藻類コンブ科の総称。寒流系の水産植物として、寒地の荒海に育ち、干潮線以下の岩上に盤状または分岐する根で密着。根から一本の円柱状の茎を出しその上に帯状、御幣状(ゴヘイコンブ)、破水傘状(キクイシコンブ)の葉をつける。葉は褐色、革質。表面に無性生殖器官として遊走子のうをつくり、長短二本の毛を持った遊走子を生ずる。有性世代は顕微鏡的な小さな体である。

昆布類は二~三年生の多年草。初冬に笹の葉状の若葉が現れ、春から夏にかけて生育する。夏を過ぎると葉先から枯れてくる。日本でとれる昆布は六属二七品種。マコンブ・リシリコンブ・ミツイシコンブ・ナガコンブ・ホソメコンブが代表的。北半球の北部に多く、波の荒い外洋では二~六メートルの深さのところに多く発生。採取は7~8月が中心。

昆布は自然物を採取するため豊、凶作が激しかったが、最近では採菌から生育まで人工管理の繁殖法が開発されてきた。現在日本で生産される昆布の九九%までが北海道産。昆布の代表、マコンブは厚岸から根室が主産地。上品で甘く、かめばかむほどコクが出る。リシリコンブ・ホソメコンブは北海道西海岸から日本海にかけてとれる。汁が濁らず上品な味が出るのでだし用に利用。

昆布は原産地で採取され浜辺で広げて乾燥し、もと揃え昆布・長切り昆布・折り昆布・棒昆布ほかに分類される。長切り昆布は昆布製品の七~八割を占め最も重要。

昆布の成分分析値をみると、マコンブの場合で一〇〇グラム当たりで、エネルギーはゼロ、水分九・五%、タンパク質八・二%、脂質一・二%、糖質五八・二%、繊維三・三%、灰分一九・六%。無機質ではカルシウム七一〇、リン二〇〇、鉄三・九、ナトリウム二八〇〇(いずれもミリグラム)。ビタミンではA効力五六〇国際単位、B1〇・四八、B2〇・三七、ナイアシン一・四、C二五(同)。

カルシウムが非常に多く、ヨードや鉄分などのミネラルもたっぷり、カリウム・ビタミンB1・B2も多く生活習慣病予防や女性の美容・子供の成長にも欠かせない優れた食品であり、また強力なアルカリ性食品でもある。

昆布のうま味は主としてグルタミン酸。表面についている白い粉はマンニットで、うま味成分であるから洗い流さないように。

昆布だし汁は魚類ともよく調和し、単用ばかりでなく、併用される場合が多い。だしとりは時間をかけて、ゆっくりと温度を上げながらとるのがコツ。

昆布はおでん・つくだ煮・昆布巻き・酢昆布・とろろ昆布・昆布あめ・昆布茎など多くの食品に利用されている。特に最近は自然食品のブームによって見直され、各種の昆布製品の消費は増加傾向がみられ、日本人の長寿化にも役立っている。

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