百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ゆず

2003.01.10 89号 11面

レモンとゆずはともにミカン科の果実。100グラム当たりのビタミンCはレモン90、ゆず150(いずれもミリグラム)。レモンは飲料・調理用に大活躍、さらに美容やヘルシードリンクに、周年流通し極めてポピュラー。ゆずは風味豊かであるが限定されて日本料理に独特の味をつくり出す。主役ではないが欠かせない働きをする。

(食品評論家・太木光一)

ゆずは寒さに強い中国原産のミカン科の常緑樹。長江上流が原産地で日本には一〇〇〇年以上も前に伝来した。木の高さは三メートルぐらい。だいだいに似た樹勢だ。枝にはトゲがみられ、花は紫色を帯びた白色で、芳香があり、5月ごろ枝の先や葉腋に咲く。

古代には「ゆ(柚)」と一字だけで読んでいたが、酢っぱいので、ゆの酢が「ゆず(柚子)」となったものと思われる。桃、栗三年、柿八年、梨の馬鹿野郎一六年、ゆずの大馬鹿三〇年といわれるように、実ゆずは三〇年ぐらいしないと実をつけない。花ゆずは若木でも花が咲いて実を結ぶ。実ゆずより花ゆずの方が味がよい。

ゆずはビタミンCが一〇〇グラム当たり一五〇ミリグラムもあり、イチゴの約二倍。糖度もみかんより高いが酸度が強いため多いようには感じない。品選びのポイントは傷がなく、張りがあり、色つやの良いことがポイント。持って重みがあり、みずみずしいものがよい。

果皮や果汁は実の堅いうちから利用される。青い状態で、そうめんやひやむぎに使えば夏の香りとして味を引き立てる。秋ともなれば松茸の土瓶蒸しや、サンマの塩焼きをはじめ煮物・吸い物・和え物などに日本の味を一層深くする作用をする。冬には鍋物料理に利用される。冬至にはゆず湯に入る習慣もみられる。

風味豊かで利用法も広く、砂糖と煮て柚香煮にすると香りも高く優れたマーマレードになり、高級洋菓子の材料とされる。ゆずびしおは、ゆずの皮をおろし金ですりおろし砂糖を加えてよく煮詰めたもので、なめ物に向く。和菓子としては、ゆべし・ゆずようかん・ゆず練りなど。ゆべしは白米の粉に白みそと砂糖を加え、ゆずの搾り汁を入れて練り込み竹の皮で包んで蒸し固めたものが元祖で、日本各地にみられる。ゆ釜はゆずのヘタを切りとって中身をくりぬいたものの中に、調理した料理を入れヘタでふたをしたもの。移り香を楽しむのは日本ならではのものだ。

ゆずは根が深く入る性質を利用して、みかんの台木としたり、からたちの台木としたり、柑橘類の樹勢が衰えたとき、根ぎわにゆずの根をついで回復を図ったりと、用いられている。

ゆずの主産地は高知・徳島など四国から西日本一帯にかけて。わずかであるが福島県でも産出されている。最近ではみかんからの転作が進み栽培面積は増加傾向にある。

使用上のコツとして、香りが生命なので、使用直前に切ったり、おろしたりすること、汁に入れる吸い口には熱い汁を注いだあと、ふたをする直前に入れること。和え物、すし飯でも最後のあえるときにゆずを加えること。

ゆずの搾り汁は香りの高いポン酢や酢の物に欠かせない。ゆずの独特の香りは日本料理の演出として人気が高い。

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