抗酸化(アンチエイジング)のポイントは肝臓
◆肝臓パワーが引き起こす主な病気とは?
年をとると、多くの人がかかりやすくなる心筋梗塞や動脈硬化などは、肝臓の働きが低下することが原因の一つといわれている。たとえば、肝機能の衰えにより分解・処理しきれなかった脂肪のカス(=過酸化脂質)が、血管にコレステロールとしてこびりついて起こるのが動脈硬化。心臓に直結する血管にコレステロールがたまれば心筋梗塞の原因に、脳の血管が詰まったり、切れたりすれば脳血管障害となる。もちろん、肝臓自体に脂肪が必要以上にたまる脂肪肝や、肝臓周辺の毛細血管が詰まって固まる肝硬変、さらに毒素を分解する能力の衰えはアレルギーなどの疾患も引き起こすといわれている。
◆年齢とともに衰える活性酸素への抵抗力
そもそも活性酸素とは、異物や刺激から身体を防御するものなのだが、過剰に発生すると自分の細胞や内臓そのものを傷つけ老化や病気のモトとなる。いわば年齢とともに体内にたまるサビのようなもの。
人間には本来、このサビに対抗する力(抗酸化力=活性酸素に抵抗する力)が備わっているが、その力は加齢とともに低下する。一般に、二〇歳の抗酸化力を一〇〇とすると、三〇~四〇代からその力は急激に下降し始め、五〇代で六割程度、六〇代では半分程度にまで落ちる。肝臓にも活性酸素が非常にたまりやすくなり、結果、肝機能も衰えやすい。さらに暴飲暴食・喫煙・運動不足・肥満・過度のストレスなども活性酸素の増加要因。
現代社会に生きる私たちの肝臓は、常に危険にさらされているといえる。
◆肝臓は酸化ダメージが大きい臓器
肝臓は内臓の中で一番大きく、成人男性で一四〇〇グラム、成人女性で一二〇〇グラム程度。
おもな役割は(1)エネルギーとなるグリコーゲンの供給(2)体内の各器官への栄養となるたんぱく質などの合成と補給(3)アルコールや有害物質の分解・処理という三つを担っており、人体にとってまさに「要」の存在だ。
体内で果たす役割が大きい分、呼吸で取り込む酸素の実に三〇~五〇%もが肝臓で消費される。つまり、大量の酸素を必要とする分、酸化リスクも大きいわけ。
活性酸素がたまりすぎると、肝機能に大きな負担を与え、全身へのエネルギー供給がうまくいかなくなり、だるさや疲れやすさの原因に。放っておくと肝臓の機能はますます低下し、気づかないうちに脂肪肝や肝硬変へと進行する。
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、他の臓器と比べ故障に強く、自覚症状が現れた時には機能障害がかなり進行している場合が多い。「最近疲れやすくなった」「お酒が弱くなった」という日常の変化を肝臓からのサインと意識し、見落とさないようにすることが大切。エネルギーの供給源である肝臓が弱っている時に、「頑張りがきかないのは気合いが足りないから」と無理するのは、症状の進行に拍車をかけるようなもの。疲れた時は思い切って休むことも「肝心」だ。
◆活性酸素から身体を守るこんな食品に注目
食品中の抗酸化成分としては、サバやイワシなどに含まれるビタミンE、キウイやイチゴなどに含まれるビタミンC、お茶に含まれるカテキン、赤ワインに含まれるポリフェノールなどがよく知られている。とくにゴマに含まれるセサミンという成分は、侵されやすい肝臓の活性酸素を取り除く力が圧倒的に強いことで注目されている。
京都大学大学院人間・環境学研究科の森谷敏夫教授によると「昔から不老長寿の秘薬として世界中で珍重されてきたゴマには、肌の老化を防ぐビタミンEや骨や歯を丈夫にするカルシウム、肝機能を高めるメチオニン、貧血を防ぐ鉄など様々な栄養素が含まれています。そして近年、新たに発見されたのが『セサミン』です。
セサミンという成分は、肝臓までほとんど傷つかずに到達し、体内で最も活性酸素がたまりやすい肝臓内の活性酸素を強力に取り除いてくれるという特徴があります。動物実験では、皮膚の荒れや脱毛などの老化抑制・肝機能の改善・乳がんの抑制への効果が発表されています。またヒトの実験では、二日酔いの防止・コレステロール値の低下作用への効果が報告されています」という。
ラットを使った実験で、セサミンの肝臓内の活性酸素を除去する効果や、GOT・GPTなど肝機能数値改善効果、肝臓がん抑制効果が明らかになっている。また、セサミンを摂取してからアルコールを飲んだ場合と、そうでない場合との比較実験では、セサミンを摂取した場合だけ、体内アルコール濃度の上昇が低く酔いにくく、上昇したアルコール濃度が下がるスピードも早いという結果が得られた。
“若返りビタミン”と呼ばれるビタミンEも、セサミンと同じくゴマに含まれる抗酸化物質。しかし非常にデリケートで、肝臓に達した途端、活性酸素に壊されてしまう。そこでセサミンと一緒に取ることで相乗効果を発揮するという。
「セサミンは非常に安定していて壊れにくく、いち早く無傷で肝臓まで到達し、肝臓内の活性酸素を強力に除去して、ビタミンEを守ります。結果、セサミンに守られたビタミンEは、血流に乗って全身をまわり、身体中の活性酸素を取り除き、老化や生活習慣病・がんなどを予防します。
このようにセサミンの優れた抗酸化作用は、他の栄養素を守り、単独で取るより効率よく働かせることができるのです。他にもゴマに含まれるリノール酸やオレイン酸など不飽和脂肪酸を効率よく働かせコレステロール値を下げたり、なかなか燃焼しにくい脂肪を燃えやすいように溶かし出すという効果も認められています。
セサミンによって肝臓をケアすることは、健康維持や病気の予防につながります。毎日の食事にゴマを多く取り入れたり、ゴマの成分を凝縮した錠剤の健康食品を上手に利用して、セサミンを補うのもよいでしょう」(森谷教授)。