話題の「中医ダイエット」を分析する:最終回・大野綾子さん×邱紅梅さん

2001.04.10 68号 7面

‐四回の連載を通じて、「中医ダイエット」の基本が見えてきました。「中医ダイエット」のこれから、なぜ漢方にアメリカのホリスティック栄養学の方法も組み合わせているのか、そのあたりを教えて下さい。

邱 漢方の考え方として、「単に食生活が悪いから肥満になったのではない。食生活が悪いから身体のバランスが悪くなり、その結果太ってしまった」ということがあることはお分かりいただけたかと思います。だから食生活を立て直すだけではなくて、ゆがんだ身体のバランスを戻さないと、問題は解決しないわけです。そうして筋肉・脂肪・水分、漢方的にいうと気血水のバランスを整えていくと、新陳代謝も高まり入ってきた栄養素を十分に活用できる身体になります。

しかし、こうした体質を改善するという漢方的処方の問題点は、結果が出るのに時間がかかることでした。いわゆる「のろまなカメさん」です。一般的なダイエットの方法には「早足のウサギさん」的に短期間に効果が出るものも多いですが、こういう方法は身体自体が本質的に変わっていないから、その状態を長く維持することができません。そこでその真ん中を両足で歩くようなダイエット方法を見つけたいと考えました。それがホリスティック栄養学の大野先生たちと模索している「中医ダイエット」です。体質改善と食事を中心としたライフスタイルの見直しを、車の両輪のように同時に行うわけです。

大野 従来の栄養学がまず食品ありきの「食品栄養学」だったのに対し、ホリスティック栄養学は、まずその人の身体があって、その身体が食品をうまく消化・吸収できて、生かせるように、と考えます。この基本は漢方の「個の体質ありき」の考え方にとても似ていると思います。ただ単に「栄養のある食べ物をとりましょう」ではなくて、身体の中で消化・吸収しやすく、活用できるような形で食べ物をとることを重要視するので、食品の選び方、調理方法、食品の食べ合わせといったことがポイントになってきます。

また、これまでのダイエット法はカロリーを制限する、減食するということが主体でしたが、「身体にとって必要な栄養がとれているか、どうか」ということをまず分析するホリスティック栄養学においては、栄養失調を解消し、必要な栄養をしっかりとることが第一のテーマ。そうすれば食欲のコントロールも代謝も正常になり、必然的に過剰なカロリーは減ってきます。カロリーを減らすことばかり考えて「ケーキはいけない」「揚げ物はいけない」などと考えていると、ストレスがたまる。ストレスというのはどこまでも我慢できるものではなくて、いつかは爆発するもの、結局過食に走ってしまったりすることになります。

邱 ストレスの問題は本当に大きいです。「太っている人は自制心がなくて、人の話をよく聞かない」という先生もおられますが、そうではないんです。こういう人は身体が聞くことができないんです。気虚の人は「たくさん食べろ」と言われても、きちんと食べられない。湿熱の人は「ゆっくり食べなさい」と言われても目の前に食べ物があったら、パーッと食べてしまう。「箸を置いて」など言われたら、それ自体がストレスになる。身体と心のギャップを整え、聞く耳と身体を作っていく、中医ダイエットにはその力があります。

大野 ホリスティック栄養学はアメリカを中心に研究されてきたものですが、アメリカ人は日本人とは当然体質が違います。だから日本で行う場合は考え方はそのままに、日本人に合った内容を提案していかなくてはならないと思います。現状を考えると、全般的には日本人が最も生かしやすいご飯食が不足しているパターンが多いようですね。

邱 ビタミンやミネラルがしっかり足りているかという確認は漢方にはありませんので、こういった部分はホリスティック栄養学の素晴らしい方法に学びたいと思います。逆に、漢方には身体を冷やすもの、温めるものなどの「寒熱」の概念があり、これを利用すれば体質を変化させていくことができます。お互いの良い部分を総動員して、美しく健康になれる新ダイエット法を、世の中に提案していきたいですね。

(おわり)

◇中医ダイエットシステムの流れ・モデルプラン(管理栄養士 大野綾子案)

◆カウンセリング

(1)1週間後の三爽茶飲用結果(効果)

(2)1週間の食事記録による栄養チェック(栄養バランスチェックシート)

(3)本人のライフスタイルチェック(太る生活チェック表)

(4)体質・体調のチェック(「体質チェック表」)

(5)ボディチェック(体脂肪計・血流計等)

◆ダイエットプラン作成

(1)ダイエットの目的に合わせたメニュープランの作成

(2)体質調整(改善)に必要な中成薬・保健食品・サプリメント類

(3)栄養チェックによるライフスタイル別食事メニュー(栄養バランスチェックシート)

(4)必要に応じて運動メニューを追加

(5)予算・ダイエット期間

【ダイエットスタート】

「中医ダイエットシステムブック」(作成予定)をダイエッターに配布。中医ダイエットの主旨を理解してもらうと同時に自己チェックができるようにする

◆改善プランの提案

(1)効果のレベルをチェック

(2)体質・体調の変化をチェック

(3)栄養チェック

(4)プランにおける不都合面をチェック

◆目標達成

(1)目標体重・体脂肪率等のチェック

(2)体質・体調のチェック

(3)目標達成後のライフスタイル全般のアドバイス

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