百歳への招待「長寿の源」食材を追う:沙参(ツリガネニンジン)
桔梗(トラジ)と沙参(ツリガネニンジン)はともにキキョウ科であるが、美味な山菜としてファンは多い。また、いずれも薬効の高い漢方薬材として古来から良く知られている。(食品評論家・太木光一)
ツリガネニンジンはキキョウ科に属する多年草の山菜である。平地から山地まで、草原・丘陵・高原をはじめ、林縁・田畑の土手などに群がって生えている。日当たりのよい場所を好む。秋に入ると釣り鐘のような形をした淡紫色または白色の花をつけるが、根が朝鮮人参に似ているところからツリガネニンジンの名前が生まれた。別名は多いがトトキが一般的。分布は日本全域・韓国・中国で、食べられる部位は若芽・花・根。ある程度育った葉でも食べることができる。
調理法として、熱湯にくぐらせて、すぐ水に放ち、さましてよく水を切って食べる。
クセがなく、歯ざわりもよく、どのような料理にしてもおいしく貴重な山菜と呼べよう。おひたしにしてもよく、天ぷらにしても美味。若葉も花の天ぷらも捨てがたい。このほか、ゴマ和え・辛子和え・酢味噌和えによく、クルミやマヨネーズ和えもよく合う。また汁の実にもよい。油炒めの場合には細かく切ってからよく炒める。さっぱりとして歯ごたえもよい。韓国でもナムルをはじめ炒め物などに利用されている。
朝鮮人参に似た根は熱い油で手早く味をつけ、きんぴら風にしても美味である。この根を乾燥したものは沙参(シャジン)と呼ばれ漢方薬として貴重視されている。
なお、沙参は北沙参と南沙参に分けられ、ともに漢方薬材であるが、本文では南沙参について記述する。
ツリガネニンジンは中国では食用とはせず、すべて漢方薬材として利用する。この分科は極めて多く大別すると、(1)輪葉沙参(2)杏葉沙参(3)闊葉沙参ほかとなる。
輪葉沙参がこれらの代表で、多年生の草木。根は大きくニンジン形をしている。茎は直立して高さは〇・六‐一・五〇メートルほど。花期は7~8月にかけて。秋に採集され葉・茎を除去しよく洗浄し、根部の皮をむき晒干する。これが薬材となる。
薬理として第一には去痰作用が極めて大きい。第二に強心作用が挙げられる。第三には抗真菌作用がみられる‐‐など。そして効用主治として、養陰清肺、去痰止咳、治肺熱燥咳と久咳・喉痛などが挙げられる。用法として煎服が望まれるが、丸薬や散薬もみられる。沙参の味はそれほど苦くなく飲みやすい。
輪葉沙参は効用の高い薬材であるが薬膳としても利用されている。豚肉と沙参を軟らかくなるまで煮込んだスープは、食べやすく美味。鶏卵と一緒に煮る料理もある。いずれも一人前につき沙参の使用量は一五グラムほど。中国の人々にはよく利用される薬材といえよう。