飽食の裏側=食の再点検:ナチュラルチーズと進駐軍

1999.02.10 41号 6面

近年、人気急上昇の食べ物「チーズ」。一昔前、チーズといえば、プロセスチーズばかりだったが、現在では多くのナチュラルチーズが販売されている。赤ワインブームの追い風もあり、チーズ専門店が次々に開店、量販店でもチーズ売り場が設置され、手軽に買い求めることができるようになった。プロセスチーズとの違いを検証してみる。

プロセスチーズは数種類のナチュラルチーズを加熱して作られるのでナチュラルチーズ特有の微生物や酵素の働きがない。長期間の保存が可能で品質も一定しており扱いやすい。長い間、日本ではチーズといえば「プロセスチーズ」だった。

一方、ナチュラルチーズが日本に輸入されたのは約四〇年前。横浜の進駐軍向けのデンマーク産ブルーチーズがキャンセルされ、行き場を失ったことから一般に広まったといわれる。バターやコンデンスミルクをはじめ、乳製品が何一つ輸入できない厳しい制限時代だったが、ナチュラルチーズだけは自動輸入承認制だから三五%の関税を払うことで引き取れたのだそうだ。初めて輸入したブルーチーズは外国人向け食糧雑貨店で喜ばれ完売。その後、要望に応えフランス、スイスなどの有名チーズの輸入が始まる。しかし日本人にはなかなか受け入れられなかった。

そして現在、若い世代を中心に家庭の食卓にナチュラルチーズが上がるようになってきた。しかしプロセスチーズで育ってきた世代は、ナチュラルチーズの扱いに慣れておらず腐らせてしまったり、冷蔵庫で忘れられていたり、ということが多いようだ。正しい扱い方が浸透するまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

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