クチーナ通信 とろけるポルチーニ茸

1998.10.10 37号 11面

この前までは息をするのもしんどいほどの暑さで、「あと、もう一回海へ行けるね」などと話していたのに、いまはもう長袖が必要。余韻もへったくれもなく、秋は突然やって来てしまう。

秋は実りの季節だし、暑い日にはカラータイマーが点滅してしまう私には嬉しいシーズンのはずなのだが、心情的にはイタリアの秋はちと、さみしい。

日本なら栗拾い、紅葉狩りなど秋は季節自体を楽しむ風習があるが、こちらでは夏のバカンスが終わったら後はクリスマスに向けてまっしぐら、秋になんて気を取られている暇はないのよとでもいうように、皆働き始めてしまう。早い人は10月の声を聞く頃にはもうクリスマスプレゼントの準備も完璧に済ませてしまってたりするのだ。

いくら宗教イベント何でもありの日本人でもクリスマスはまだ早い気がするので、それよりもまずは秋の訪れを楽しみたい。

日本でもイタリアンレストランの普及によって大分知られるようになったポルチーニ茸などは、秋を食卓で満喫できる食材の一つだ。

椎茸同様、良いものはカサがこんもりしていて締まっており、メルヘンチックな形をしている。その方が値は張るが、何も松茸のように貴重品というわけではなくごく庶民的な茸なので、この季節はレストランのメニューにもかなりのバリエーションを与えることになる。

薄切りにし、良いものなら生でサラダにしてもよい。また、ニンニク、オリーブ油、パセリで炒めたものは基本的な一品。火を通すと歯ごたえを残しながらもとろけるような舌触りとなり、パスタ、リゾット、フライ、肉料理と幅広く使える。

一つだけ気をつけたいのは、ポルチーニは人間だけでなく虫さんも大好物なので、包丁を入れるときにバッタリ出会う確率がとても高い。(これをイタリア人は「肉入り・肉なし」と呼んで区別する)

もし虫さんに出会ってしまったら…仕方ない、サラダにするのは締めるとしても捨てたりしちゃあいけません。薄切りにして、何事もなかったようにスープやリゾットに使いましょう。

お互いにおいしい物好き同士、料理の味に色を添えてくれるかもしれない。虫にびびっていては、秋の味覚は味わえないのである。

●ポルチーニ茸のフライ

☆材料

ポルチーニ茸(肉質が締まったもの)、小麦粉、溶け卵、パン粉、おろしたパルミジャーノチーズ、パセリみじん切り、塩各適宜

☆作り方

(1)ポルチーニは汚れを落とし、大きいものは食べやすい大きさに縦に等分する。

(2)パン粉に、パセリみじん切り、チーズ、塩を加えて調味する。

(3)(1)を小麦粉、溶け卵、(2)のパン粉の順にまんべんなくくぐらせ、180度に熱した油で火を通し、表面がカリッと色づくまで揚げる。

メモ 他の茸でも同様においしく出来るが、加熱した時とろけるような肉質のものが理想的。料理の付け合わせにしたり、またこれだけをメインにしてもよい。パン粉は田舎パンなどの細かい物がベターだが、ない場合はクラッカーをごく細かく砕いて使ってもよい。

●牛薄切り肉のキノコ添え

☆材料(4人分)

牛赤身肉薄切り8枚(1人分2切れとして、1枚30~40g見当)、茸(ポルチーニ、マッシュルーム、椎茸など何でも)適宜、白ワイン100cc、小麦粉、バター、塩、コショウ適宜

☆作り方

(1)肉は、ラップを被せて肉たたきなどで伸ばし、3~4ミリメートル程度の厚さにする。

(2)茸は薄切りにしオリーブ油でさっと炒め塩で下味をつけておく。

(3)フライパンにオリーブ油を熱し、肉に小麦粉を薄くはたき両面サッと焼く。

(4)(3)に(2)を加え、バターを数片落とし、白ワインを回しかける。アルコールが飛び、とろみがついたら塩、コショウで整え皿に盛る(茸が肉の上にかかるように)。好みで刻みパセリなどを振る。

メモ 本来は子牛の腿肉を用いる料理だが、牛の赤身の部分ならどこでもかまわない。

(イタリア・トリノで料理修業中 合田達子)

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