長寿県長野の食を探究 みやげ選びに是非

1998.02.10 29号 6面

日本で二番目に高い北岳(三一九二メートル)を有する長野県が、これまた日本で二番目を誇るのが平均寿命。寒冷地で戦前戦後とも長寿県なのは長野県だけであり、高齢者一人当たりの医療費・入院日数も全国一少ない。その原因について長野県の衛生部や栄養士会は、農村の集団検診が徹底しているため早期発見・治療に結び付きやすいこと、信州人に多かった塩分摂取量を減らす運動で脳卒中死亡率が低下したこと、山坂歩きで足腰や心肺が鍛えられること、それに何といっても栄養バランスの良さをあげている。ソバ・ムギ・豆類・野菜・果物・山菜・キノコなど多種の食品を自給し、タンパク質としては、鳥獣肉以外に昆虫類までも食べる。そんな信州人の食を探った。

信州人の“ゲテモノ喰い”はつとに有名。サワガニ、ゲンゴロウ、イモリの黒焼、コオロギの丸煮…上伊那地方では水棲のザザムシも食べられている。

イナゴは信州ばかりでなく日本各地で食べるが、伊那地方では生きたイナゴを売っていて調理法も教えてくれる。砂糖醤油で煮つけた佃煮が最も普及した調理法で、ほか天ぷらやふりかけ粉にもする。

カイコのサナギは第二次大戦前後の食糧難時代には日本各地で食べられていた。信州ではいまも、佃煮は「絹の雫」空揚げは「絹の花」という名前で市販されている。またサナギからかえったばかりの雄の蛾や産卵後の雌の蛾を佃煮にしたものは「まゆこ」といい珍重される。

ハチの子は、クロスズメバチの幼虫である。伊那谷ではこのハチの巣を見つけることをすがれ釣りと呼ぶ。伊那地方ではハチ取り名人が多過ぎて、いまではあまり取れず、那須高原産のものが長野で加工されている。ハチの子缶詰はアメリカにも愛好者が多く輸出もされている。

昆虫食は世界的にみれば珍しくもない。タイ王国では日本のタガメより大きいタイワンタガメを食べるし、中国各地でもコオロギやセミなどを食用とする。昆虫はタンパク質、脂肪、ビタミンA、鉄分やカルシウムなどのミネラルに富む栄養価の高い食品なのだ。レッツあなたもゲテモノ喰い!(取材協力=信州大学農学部唐沢豊教授)

西洋には「一日一個のリンゴは医者を遠ざける」という諺がある。事実、赤ちゃん用のミルクに五パーセントくらいのリンゴ果汁を加えると、消化や血行が良くなり食欲も旺盛になるという。

リンゴに多い食物繊維のペクチンは、整腸作用があり便秘や下痢・大腸ガンの予防、コレステロールの増加を抑える効果もある。高血圧を下げる働きのあるカリウムも豊富で、風邪や鼻・喉などの病気にかかりにくくする抗ウィルス作用もある。

栄養分は皮のすぐ内側に多いので、皮ごと食べるのが望ましい。とはいえ気になるのがリンゴの皮表面のベタベタ。しかしあれはワックスや農薬ではなく、リンゴ自身が作りだした“ロウ物質”で人体には全く無害。国産リンゴはワックス処理がなく、汚れを落とす程度に水洗いすればOKだ。

おいしいリンゴの見分け方は、持つと見かけより重量感があり、指で叩くとカンカンと澄んだ音がするものは身がしまっていて新鮮。大玉より中玉の方が味に当りはずれがなく、日持ちもする。また品種により糖度・酸味・肉質は違う。「つがる」は、お尻の部分が緑色のほうがしゃきっとして美味。「ふじ」は、お尻が飴色のものを選ぶと蜜がたっぷり入っている。「王林」は黄色く完熟し、お尻の部分に緑が残っていると香りが強い。「サンふじ」など無袋栽培種は肌は悪いが日光をよく浴びた証拠で、味は一段と濃厚だ。さて、あなたのお好みは?(取材協力=JA長野経済連)

長野県はエノキダケ生産量、全国第一位! 特に生産の盛んな中野市ではラーメン屋さんが具として使うほかにも、エノキダケの粉末をスープの隠し味にも使っているという。

エノキダケの栽培が日本で始まったのは元禄時代と古く、現在のようにオガクズで栽培されるようになったのは大正に入ってからのこと。栽培法は、オガクズに米ぬかを混ぜてエノキダケ菌に植えつける。一○○gずつ容器に入れ、栽培室で約二カ月かけて成長させる。

食物繊維たっぷりのエノキダケはダイエットをする人には欠かせぬ食材。鍋物、汁の実、酒の肴のほか、あの白い姿を麺に見立てた低カロリーメニュー“スパゲティもどき”や“ウドンもどき”といった料理も登場している。

そしてこのエノキダケを佃煮風に加工して茶漬けの友として不動の人気を集めているのがなめ茸。昨今ヘルシーさが受けて需要は堅調で、定番のなめ茸茶漬けのほか、ピリカラ味ものや、山菜と混ぜたもの、明太子入り製品も出ている。何かあともう一品という時、大根おろしに和えたり、ステーキにそえたり、スープやパスタソースにと、大変便利。冷蔵庫に常備したい一びんだ。(「新・一般食品入門」より)

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