自由時間術:シンセサイザー奏者・姫神さん 台風にお会いした日

1997.09.10 24号 5面

自由時間ってどんな時間なのか、改めて考えさせられる人に出会った。シンセサイザー奏者の星吉昭さん。故郷の山の名にちなんで「姫神」という名も持つ。’97スターキャンプグラウンズで初めて観た姫神さんのコンサートは台風さえも「盛り上げるための演出」と思わせるほど自然と一体化したものだった。十二分に楽しんだ記者はぜひとも本人に会ってみたく取材を受けてもらった。

「昨日の雨はすごかったね。私は、ホールでコンサートをやるのを好まないから夏場の屋外で、というとまぁ、いつかは台風とお会いする日が来ると思っていましたけど。待っていた友だちがついに来たか、という感じです。でも本音はね、ここまででやめようかな、少しおさまるともうちょっとやらせてもらうか……その繰り返しでした。曲に込めた思いを伝えるために星や風や雨といった自然のものと、照明や私のシンセサイザーなど自然以外のもの、すべてが演出として利用できます。でも昨日はスゴかった。楽しめましたか? そりゃ、よかった」。

--普段は山の中にあるスタジオで仕事をなさっているとか。

「音楽は音がうるさいのが難点でしょ。山の中なら遠慮なくできるし、何より緑を見ながら、風を感じながら、小鳥の声を聞きながら創作したい。だから自宅から車で二○分くらいですが通勤するんです。一人でさびしくはないか、と聞かれますが、大勢でいたって結局一人で考えながらやっていく仕事ですから。でも考えてみると一日に三○○歩ぐらいしか歩かない日もあると分かって危機感を感じまして、スタジオの近くを散歩するようにしているんです」。

--姫神流、自由時間活用術とは?

「音楽を楽しむでもいいんだけれど、僕の場合は小鳥の声を聞くのが楽しみなんです。都会でも注意していれば小鳥の声ぐらい聞けるでしょ。それと緑の叢いも感じたいね。五感で感じるというのがあるでしょう。僕のコンサートも五感で感じてほしいから自然の懐を借りる。同じように公園で少しゆっくり座って音に耳を傾けたり、部屋にいても窓を開けて風を感じたり、それで好きな音楽を聞いてみるといつもと違った気持ちになれるかもしれないですね」。

▽姫神 星吉昭=NHK総合TV「ぐるっと海道3万キロ」、同「炎立つ」の炎紀行、フジTV「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」のテーマ曲ほか、音楽担当多数。8月にニューアルバムをリリース。

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