自由時間の心得 バリトンドクターの“カラオケ指南”
「ノッテルかぁ~い?」全国六〇〇〇万人のカラオケファンの皆様、もう歌い初(ぞ)めはお済みですか? 今年は新しい歌をたくさん覚えるぞ、など気合い満々なところで、基本にかえろう。もっと上手に歌うコツ、それはきちんと声を出すこと。歌うときだけでなく、話すときにも大切だ。ボソボソの小声より、ハキハキ通る声の方が、周りの印象も違うし、自分自身の気持ちも明るくポジティブになる。こう寒いときにおすすめなのがあの名曲。♪押しくらまんじゅう押されて泣くな…、大きな声で唱えると、カラダぽかぽか、ココロわくわくするから不思議。みんなとカラオケボックスで、あるいは車の中でただ一人、お腹の底から声を出し、すべてを忘れるひとときを過ごしてみよう。
まず、無駄遣いをやめましょう
まったく、拍手ぐらいしたらどう? 人の歌も聞かず、曲選びに必死なみんなが、オヤッと注目するほど、すてきな声で歌えるようになりたい。かくして彼を訪ねた。
人呼んで“バリトンドクター”萩野昭三氏は、耳鼻咽喉科の院長であると同時に、現役のバリトン歌手でもある。
「あなたは、まず無駄遣いをやめなさい」という。あらら、ここでもお説教ですか…と思いきや「歌で大切なのは、息を無駄なく使って十分に声を出すこと。一回に吸い込める息の量は限られているから、それをいかに効率的に使うかが大切。なるべく息をもらさない無駄のないよう発声をすると、はっきり聞きやすい質のよい声が出せますよ」
そして余裕がでると、高音も低音も出やすく、音の上げ下げがスムーズになって、耳から入る音に自然に合わせられるようになる。
「また吸い込む息の量をなるべく多くするため、腹式呼吸を。腹式呼吸を心がけると、血のめぐりもよくなるし、ついでにお通じもよくなりますよ」。
上手に歌うには『カッコつけ』も必要。つまり、よい姿勢。マイクの持ち方一つで、上手に歌えるかどうか決まるという。
「マイクはあまり口に近づけすぎないこと。マイクがノイズを拾って音質を悪くする原因になる。マイクはカラオケに欠かせない存在ですが、使い方を誤ると、逆効果になってしまいます」。
あと大切なのは自分の声の高さに合ったキーで歌うこと。合わない高さで無理に歌えば、自然と声をしぼらざるを得ず、声帯に負担がかかるし、音をはずす原因にも。
自分に合うキーがわからないという人は、好きな歌をとことん歌いぬいてみよう。一曲マスターすれば自信にもつながる。
「好きこそものの上手なれ。自信をもって『声』という自分だけの楽器を楽しみましょう」。
最近、度が過ぎて一晩でポリープを作ってしまう人も多いとか。カラオケは、たばこ・酒・高い声…、と悪条件が重なりやすいので、長時間歌うのは避け、途中水分を補給して、ノドを湿らせることを忘れずに。
風邪などで声帯が充血している場合には、せきやくしゃみによる影響も大。また歌う前のせき払いも声帯のためにはよくない。
「声帯は生涯取り替えることのできない、一センチメートルそこそこの楽器です。歌を楽しむなら、のどの健康にも十分注意してください」と萩野先生のアドバイス。
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▽萩野耳鼻咽喉科(03・3999・8755)